アニメディア連載「シンカリオン制作日誌」第6回『新幹線変形ロボ シンカリオン』音響監督・三間雅文 | 超!アニメディア

アニメディア連載「シンカリオン制作日誌」第6回『新幹線変形ロボ シンカリオン』音響監督・三間雅文

先日最終回を迎え、映画化が発表されたTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』。最近知ったという人にも作品の魅力をわかりやすくお届けする「新幹線変形ロボ シンカリオン応援連載 全速前進!こちら鉄分給配所」が、「アニメデ …

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 先日最終回を迎え、映画化が発表されたTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』。最近知ったという人にも作品の魅力をわかりやすくお届けする「新幹線変形ロボ シンカリオン応援連載 全速前進!こちら鉄分給配所」が、「アニメディア」にて連載中。そのなかで、制作に携わる関係者に話を聞いた「シンカリオン制作日記」が掲載されている。第6回目は、音に関するすべてを統括する音響監督を務める三間雅文が登場。本誌では紹介しきれなかった部分を含んだ長文版を、超!アニメディアでもご紹介する。


――まず、音響監督の役割を教えてください。

 僕は、自分の仕事を「通訳」だと思っています。監督の「音」に関する希望を、キャストや作曲家など、それぞれの専門家にわかりやすく伝える仕事ですね。キャラクターの明るい声の芝居が必要ならば、なぜその場面では明るい感情なのかを監督と話し合い、それを役者に伝えてディレクションをします。逆に、役者のアイデアを監督に伝えて納得してもらうこともあります。音楽の場合は、監督の思いをくみ取り、どんなイメージの曲なのかを「メニュー」という形でまとめて作曲家に伝えます。メニューは漢字一文字だったり、逆に細かいリズムや使用イメージの楽器などの指定を入れたりなどして、作曲家によって伝え方を変えています。作曲家それぞれの個性に合わせたメニューを書くことで、作曲家がイマジネーションを膨らませてくれます。気をつけているのは、監督の通訳というポジションなので、僕自身の意向を入れないことです。音響監督は、役者や作曲家の個性をいち早く把握することが大切です。「この人は真面目な性格だからこういう対応をしよう。この人はしなやかな振る舞いが得意そうだからこうしよう」というように、それぞれ対応と言葉を変えます。そういう意味でも、僕は自分が通訳者だと思っています。ただ、これはあくまで僕の仕事のスタイルなので、もちろんすべての音響監督が僕と同じ考えを持っているわけではありません。

――『新幹線変形ロボ シンカリオン』という作品に対して、どのような印象をお持ちでしたか?

 僕は自動車が大好きで、『トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察』をやりたかった(笑)。切符の買い方も知らないくらい、鉄道に対して知識がなかったんです。ところが、そんな僕が今では『プラレール』にハマっています(笑)。新幹線のファーストクラスと呼ばれる『グランクラス』に乗るためだけに北陸新幹線で東京と金沢を往復したほどです。今まで鉄道に目を向けなかったのは、ただの食わず嫌いだったんです。『シンカリオン』に関わることで、新幹線の奥深さを知ることができました。


――『シンカリオン』では、池添(隆博)総監督からどのようなオーダーがあったのですか?

 「少年3人の熱血ロボットもの」で「3人の少年の個性を出したい」ということでした。青年が主人公として活躍するロボット作品は手がけたことはありますが、少年が主人公のロボット作品と聞いてワクワクしたのを覚えています。キャスティングについて、僕は当初、中堅のベテランの方を考えていたのですが、総監督の要望で結果として20代の役者をオーディションで選びました。

――アフレコで心がけたことはなんですか?

 速杉ハヤト、男鹿アキタ、大門山ツラヌキの3人の芝居ですね。たとえば、単身赴任する父親のホクトをハヤトが心配する芝居。10代の子どもと年齢や経験を重ねた20代の大人では、心配の気持ちが違います。だからハヤトを演じる佐倉綾音さんには「今の芝居の気持ちは、10代の子どものものではなく、20代の君のものではないのか」と指摘しました。すると佐倉さんは「そうでした」と、自分の心を振り返って修正してくれたんです。佐倉さんは真面目で努力を怠らない方なので、彼女自身が納得するまで繰り返し収録しました。ハヤトのキャラクターは、僕と佐倉さんがタッグを組んで作り上げたものだと思っています。

 アキタ役の沼倉愛美さんは、ほかの役者がディレクションされていることを聞いて、自分の芝居に活かすタイプ。なので、沼倉さんに芝居を変えてほしくないときは、あえて彼女に聞かせないように、ほかの役者のディレクションをしていたりもしました。

 ツラヌキ役の村川梨衣さんに対しては、僕は勝手に「梅干し」というあだ名を付けて呼んでいました。みんなを笑わせることでアフレコ現場をなごませようとしたのですが、なぜ「梅干し」というあだ名になったのか今でも思い出せないんですよ。

 印象に残っているのは、月山シノブ役の吉村那奈美さん。最初の収録で居残りをさせてしまったことがあります。吉村さんは、僕のことが怖くて、『シンカリオン』の現場に来るのがつらかったかもしれません。でも、この作品で一番成長したのは吉村さんですね。すでに収録は終わっていて、打ち上げ会を体調不良で休んだ僕は、吉村さんに「よく頑張ったね」というねぎらいの言葉がまだ言えていません。彼女には、鬼音響監督と思われたままになってしまっています……。

――キャストへのディレクションではどんなことを心がけているのですか?

 僕は、そのセリフにどんな目的があるのか、どんな気持ちから発せられるものかを紐解いて伝えるようにしています。役者がなぜその芝居が必要なのかといった疑問を抱いていたら「こう考えたらどうでしょう。このように考えたら、このキャラクターを演じられませんか?」というようにしています。また、ディレクションの間、キャストの方はスタジオの椅子に腰掛けるので、僕はキャストの前に膝を付き、相手の目を見ながら話すようにしています。

――演技指導というより、アドバイスのようですね。

 だから通訳なんです。僕は「こうしろ」なんて上からの立場で言うことはほぼないです。怒ることもほぼないんですよ。ただキャストの方からは「ごまかしたり、嘘をついているのがバレているんじゃないか、見透かされているようで怖い」と言われることはあります。なるべくギャグを言って現場を楽しくさせているのですが、佐倉さんには「寒いです」と言われます……(笑)。また、僕は、以前携わった作品の声優の方に「現場で育てていただきました」と言われることもあります。でも、僕は役者を育てている気持ちはこれっぽっちもありません。育てているのではなく、僕にはできないお芝居を役者にやってもらっているだけなんです。お互いにプロなので、キャストの方にはこちらが満足いくまで、時間内で何回もやってもらっています。でも、そうやって成長したキャストの方と次に一緒に仕事をするときが楽しいですね。


――『シンカリオン』ならではの音響作業で苦心されているのは、どんなことですか?

 シンカリオンの変形シーンの音楽は、玩具メーカーのタカラトミーさんがPV用に作った音楽データを流用しています。TVアニメでは変形シーンの映像の長さと音楽の長さが違うこともあるので、映像に合わせて音楽データを微調整しています。また、複数機のシンカリオンが次々に変形する場合は、音楽の合間に効果音を加えるなどしながら、ひとつの曲としてつなげる工夫をしています。アナログ録音の時代の音響制作は、録音テープを実際に切り貼りしていました。デジタルデータで作業する現在は、作業は格段に便利になりましたね。録音チャンネルごとに音データを調整できますからね。ただし、やれることが多すぎて、逆に大変になった部分もあります(笑)。でも、自分が作った音楽に手を加えられることに反対される作曲家の方もいます。なので、正直に言いますと、放送後に作曲家の方とお会いするのは怖いんです。幸いなことに『シンカリオン』の音楽を担当した渡辺俊幸さんは、怒っいらっしゃらないとお聞きしています(笑)。

――音響監督の仕事は、本当に音に関するすべてのことに関わっているんですね。

 本当に膨大なんですよ。僕は、高校生のときビデオカメラにはまりました。自分の好きな車を撮影して編集し、音楽を乗せてテロップを入れる。それをコンテストに応募して大賞を受賞したこともあります。そんな僕にしてみれば、現在の仕事は趣味の延長といえるぐらい楽しんです。寝る時間が少なくて眠いことはあっても、作業で苦しいと思ったことはありません。本当にありがたいことです。だから、みなさんが思うほど苦労は感じていないんですよ。

――『シンカリオン』のエピソードのなかで、印象に残っているものはありますか?

 よく聞かれるのですが、全部です。でも、正直なところ、ひとつひとつのエピソードを覚えてはいません。今を100%でやっているのですが、佐倉さんには、よく「なにも覚えてないんですね」と怒られています(笑)。

――音といえば、発音ミクの音声加工についても教えてください。

 発音ミクは、キャストの藤田咲さんの音声の収録はこちらで行いましたが、音声の加工は『初音ミク』の原作会社のクリプトン・フューチャー・メディアさんにお任せでした。クリプトンさん側からは、ミクの芝居は「感情を抑えて」というオーダーがありました。でも、アニメで無感情は難しいものです。とくにミクは運転士が結集するようなドラマが盛り上がったときに登場するので、藤田さんはテンションや演技の高ぶりを抑えるのが大変だったでしょう。演技の高ぶりを抑えることで戦っていたと思います。最初は「ミクの感情の範囲で抑えてください」とディレクションしていましたが、無感情では違和感があるので、藤田さんには芝居に集中してもらい、ミクの芝居に少しずつ感情を盛り込んでもらうようにしました。また、ミクの音声はすべて加工されるので、藤田さんだけ専用の個室ブースに入ってもらって録音しました。会話を交わすキャラクター同士の「絡み」の場面をひとり分だけ別音声で録音する場合、普通は、ほかの役者の録音が終わってからひとり分を録音する「ヌキ」という作業をします。ただ、この専用ブースで収録することで、役者がスタンバイする場所は別れますが、ヘッドホンで互いの声は聞こえるので、「絡み」を一度に録音できます。録音チャンネルが増えるのでコチラの仕事は増えるんですけどね。また、本作では、運転士はシンカリオンに乗っているときは通信で会話をするので、ヘッドホンをしてのお芝居はけっこう臨場感が出るんですよ。

――それでは本作の「鉄分」とはなんでしょう?

 「マニアックさの追求」でしょうか。こだわりが鉄道に特化しているので、なかなか理解できないことも多くありました。僕は自動車に対するマニアック度は持っていたのですが、それを鉄道へ向けるのは大変でした。でも、新幹線の奥深い魅力がだんだん分かってくると、すごく好きになっていきました。これって『シンカリオン』というか、新幹線の魅力かな(笑)。


構成/草刈勤

〈劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』情報〉
12月 全国ロードショー
【スタッフ】監督/池添隆博 脚本/下山健人 キャラクターデザイン/あおのゆか メカニックデザイン/服部恵大 音楽/渡辺俊幸 音響監督/三間雅文 
【アニメーション制作】OLM
【アニメーション制作協力】SynergySP
【CGアニメーション制作】SMDE
【制作】小学館集英社プロダクション
【製作】超進化研究所
【配給】東宝映像事業部

<TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』情報> 
DVD & Blu-ray BOX4
11月27日発売
DVD 9,000円
Blu-ray 24,000円

公式サイト 
http://www.shinkalion.com/ 

公式Twitter 
@shinkalion 

シンカリオンTV 
http://www.shinkalion.com/movie/

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS
©Crypton Future Media, INC.

《超!アニメディア編集部》

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