丸井グループと東宝がタッグを組み制作したオリジナルショートアニメーション『そばへ』。YouTubeのマルイノアニメ公式チャンネルにて3月7日に公開されてから1カ月で10万再生を超える本作の監督を務めるのは『未来のミライ』で助監督を務めた石井俊匡、声を担当したのは声優としても実写作品の役者としても活躍する福原遥である。超!アニメディアではふたりにインタビューを敢行。作品についての印象、また雨に関するエピソードなどについておうかがいした。
(左から)福原遥、石井俊匡
――まず、本作で監督が作品に込めた想いについて教えてください。
石井 本作は丸井グループの「インクルージョン」という考え方をテーマにしていましたので、相互理解や距離感を意識しながら制作しました。実際、テーマを元にどんな映像にしようか色々と考えてはいたのですが、結果的にはシンプルな映像に仕上がったと思います。
――石井監督は『未来のミライ』では助監督を務められていました。今回、監督を担当してみていかがでしたか?
石井 自分が描いた絵コンテがそのままの形で進むので、怖いと思う一方で冒険もできるなと思いました。最終的にはやめてしまったこともありますが、「このカット割りで大丈夫だろうか」と思うところも通せたのは監督だからこそ挑戦できたことだと思います。
――では、どんなインスピレーションを受けて「雨」というシチュエーションにしたのでしょうか。
石井 プロデューサーの方と本作についての話をしているとき、ちょうど雨が降っていたんです。そのとき、ビニール傘越しに外を見たら微妙に世界が違って見えたんですよ。それなら、ガラッと世界が変わって見えるなら、もっと面白いんじゃないかと思ったのが本作のスタートですね。あとは長砂賀洋さんのイメージボードから受けたインスピレーションも大きかったです。世界観や色使いを強くイメージできました。
――映像のなかで特にこだわった点は?
石井 120秒という短い尺なので、このシーンは何を伝えたいかを分かりやすくすることにこだわりました。例えば、妖精の色は派手にして存在感が色濃く出るようにしたり、目立たせたいものは動きを大きく付けたりしています。また、本作には「雨の日に外に出てみよう」というメッセージも込めています。傘をプレゼントしているのもそういった意図がありました。彼氏と猫は雨が苦手、彼女と妖精は雨が好き。そういう対比も楽しめる作品になっています。
――福原さんは映像を見てみていかがでしたか?
福原 個人的にとても好きな空気感や絵のタッチなんです。長砂さんの絵を額縁に入れてお家に飾りたいくらいです(笑)。この作品に関われて光栄ですね!
――声優のお仕事のほかTVドラマなどにも出演される福原さん。今回、声を担当するにあたって、監督から何かリクエストなどはございましたか?
福原 自然体でいいと言っていただけたので、最初は自由に演じさせていただきました。実際にやっていくなかでは「もうちょっとこういう雰囲気にしていこうか」と、細かく、明確にディレクションしていただけたのでやりやすかったですね。映像も音楽も素晴らしいので、自分も精一杯の力を出してお芝居をしました。
――監督は福原さんのナレーションを聞いてみてどう感じましたか?
石井 まずは、声が可愛いです(笑)。あと、最初の息遣いの部分は特にそうなのですが、会話しているように聞こえるんですよね。福原さんの声は地に足が付いている感じというか、実態感が伴っている、という印象を受けます。私も大学生のときに『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』を観ていたので、まいんちゃんの声を知っています。そういうどこかで聞いたことがある声がアドバンテージになることもあるんだなと今回は思いました。聞いたことがあるからこそ、親近感が沸くというか。
――なるほど。実際に声をあててもらったらイメージ以上の仕上がりになった?
石井 そうですね。とてもよかったと思います。
福原 褒めてもらっちゃった。すごく嬉しいです!
――福原さんは他にも「雨」がタイトルに付いている作品のキャラクターの声を担当されたこともありましたが、雨の日はお好きですか?
福原 傘に当たる雨の音を聞いている瞬間は心地いいので好きなんですけど、撮影だったり、外に遊びに出かけたりするときに降っていると「がーん!」ってショックを受けちゃいます。
――撮影しづらいですもんね。
福原 そうなんですよ。私、雨女だった時期があって……。写真集を3回出しているのですが、そのうち2回の撮影は雨。沖縄もハワイの撮影の時も雨でした。雨が私についてきているのかもしれません(笑)。
――でも、それが仕事になったと考えたら!
福原 確かに! 雨、大好き(笑)。
――今の発言できっとこれからも雨に愛され続けることになったと思います(笑)。監督は雨の日はお好きですか?
石井 濡れるのがあまり好きではないので、実は苦手です(笑)。なぜか傘がうまくさせないので、靴がびしょびしょになったり背中が濡れちゃったりするんですよね……。でも、雨の日の街の音や光の反射が綺麗だということは今回、題材にしたことでよくわかりました。
――雨の日だから見える景色もある?
石井 そうですね。
――本作では彼氏が彼女から誕生日プレゼントとして「傘」を渡されたものの、それがなくなっていて、その傘が妖精となって街を巡りだす、という物語です。この「傘」は大切なものだったからこそ、少女となり、最終的にはプレゼントされた本人の手元に戻ってきたのかなと思いましたが、おふたりはそれくらい大切にされているものってありますか?
福原 卒業式にもらった寄せ書き、あとは誕生日にもらったメッセージ付きのアルバムなども大切にしています。アルバムや寄せ書きは作品が終わるときにいただくこともあるのですが、自分が大好きな人たちが作ってくれたものなので、宝物ですね。
石井 僕は単純ですけども、子供の写真です。
福原 素敵!
石井 とんでもなく大事なものです。あとは元々アニメ業界に制作として入ったときの会社で自分が担当していた作品の演出さんが作ったタイムシート(※)。とても好きな演出さんのタイムシートで、僕にとっては宝物です。タイムシートって勉強になるんですよ。この人はこういう意図でこういう演出にしたということが分かるので、今でも大切にしています。
(※) 芝居・セリフのタイミング、カメラワークや特殊効果の指定が書いてあるもの。
――素敵なお話をありがとうございました。ちなみに、本作は丸井グループの企業CMとして制作されたアニメですが、おふたりは普段どんなときにマルイさんを利用されていますか?
石井 帰り道にあるので、甘いものを買うときによく利用しています。色々なテナントが入っていて飽きないですね。子供が生まれてベビーカーを使うようになってからはバリアフリーがちゃんと考えられているなと感じました。いつも助かっています。
福原 私はコスメなどを買うほか、おじいちゃん・おばあちゃんの誕生日プレゼントを買うこともあります。女性向けのもの、男性向けのものとなんでも揃っているので何を買うか決めていなくても、いいものが見つかるから助かります。
――ここまで色々とお話いただきありがとうございました。最後に本作の見どころなど改めてメッセージをお願いします。
石井 「インクルージョン」というテーマのもと、シンプルに作りました。「絵が綺麗だな」という感想を持っていただけるだけでも嬉しいので、ぜひ一度ご覧ください。
福原 観るたびに発見がある作品なので、何度も観ていただきたいです。また、テーマと少しずれてしまうかもしれませんが、この作品を観て、傘を大切にしているところが素敵だなと思いました。自分が大切にしている、思い出深いものって皆さんにもあると思うんです。なので、本作を観て自分にとって大切なものはなんだろうって考えてみるのもいいと思います!
――素敵なメッセージありがとうございました。個人的にショートじゃないアニメも観てみたいです。
福原 観てみたいです! 声優としてまだまだ未熟な私ですが、もっと自分の世界を広げて立派な声優になれるよう頑張るので、また監督が手掛けられる作品に出たいです。その時はよろしくお願いします(笑)。
石井 ぜひ(笑)。
ショートアニメーション『そばへ』は、YouTubeのマルイノアニメ公式チャンネルにて公開中。
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ショートアニメーション『そばへ』概要
【声】福原遥
【監督】石井俊匡(『未来のミライ』助監督)
【音楽】牛尾憲輔(『聲の形』『DEVILMAN crybaby』『リズと青い鳥』『モリのいる場所』)
【キャラクターデザイン】秦綾子(『未来のミライ』作画監督)
【コンセプトアート】長砂賀洋(『ダム・キーパー』『ムーム』)
【制作】オレンジ(『宝石の国』)
【制作プロデューサー】和氣澄賢(『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』)
【プロデューサー】武井克弘
【製作】丸井グループ
ショートアニメーション『そばへ』
https://www.youtube.com/watch?v=mzks2-xkAaU
公式サイト
https://www.0101.co.jp/sobae/
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