ゴジラ映画史上初の3DCGアニメーション映画となる『GODZILLA』(通称:アニゴジ)。「アニゴジ」は二万年もの間、地球に君臨し続けてきた<ゴジラ>と絶滅の縁に追い詰められながらもそれに抗う「人類」の物語で、全三部作で描かれる。2017年11月に第一章『GODZILLA 怪獣惑星』、2018年5月に第二章『決戦機動増殖都市』が公開され、2018年11月9日(金)より完結編となる最終章『GODZILLA 星を喰う者』が上映となる。
今回は地球で生き残り続けていた種族「フツア」の巫女であるマイナを演じる上田麗奈にインタビュー。作品の見どころに加えて、アフレコ時のお話などもうかがった。
マイナを演じる上田麗奈
――今回、上田さんが演じられているマイナがどういうキャラクターなのか教えてください。
マイナは人類の生き残りとされる種族「フツア」の民のひとりであり、モスラの卵を守るという使命を持つ巫女でもあります。ミアナという活発で好奇心旺盛な双子の妹がいますが、マイナはその性格とはほぼ真逆。冷静で慎重で警戒心が強い、見た目よりも達観している印象を受ける子ですね。
――二章から本格的に登場しましたが、最終章では立場や性格などの面で何か変化はありますか?
フツアの民はいかにして生き残るのかを大事にする「守る」種族ですが、ハルオたちのような危なかっしい種族にどんどん首を突っ込むようになっていきます。また、ハルオと触れ合うことでどんどん彼に特別な想いを抱くようになり、最終章ではそれが表立って分かるようになるんですよ。ミアナも同じようにハルオに特別な想いを抱いていますが、それとはちょっと違う形でハルオに心を開いているというのが三章では明らかになります。
――ハルオに出会った時期も同じくらいだけども、双子それぞれで感じ方が違う?
そうですね。性格が違うといえど、ハルオに対しては同じくらいの熱量で想いを寄せていてもおかしくないと思っていたので、想いの寄せ方が異なると知ったときは少し驚きました。ただマイナは責任感が非常に強くて、楽観的にはなれないタイプ。その分、ミアナよりもハルオみたいな危なっかしい人間に惹かれるのかもしれません。
――双子でモスラと関わるという点ではこれまでの「ゴジラ」シリーズで小美人というキャラクターがいました。上田さんはこれまでの「ゴジラ」作品をどれか観たことはありますか?
オーディションを受けてマイナ役に決まったという連絡がきてから、モスラが登場する作品と初代『ゴジラ』を観ました。
――芝居の面で参考にしたことは?
マイナ・ミアナとこれまでの小美人は名前も違えば性格も立場も違うので……。
――モスラの歌も歌わないですもんね。
そうなんですよ! マイナ役に決まったときは「もしかしたら、あの有名な歌を歌うのでは!?」と思っていたのですが、そんなことはなかったです(笑)。
――なるほど(笑)。ここまでキャラクターのことを中心におうかがいしてきましたが、続いてアフレコ現場のお話を聞かせてください。アフレコは皆さんご一緒にされましたか?
本作では先に声の収録を行い、その芝居に併せて絵作りをするというプレスコ形式を採用しているのですが、最初に通しで収録するときは色々なキャストさんと一緒に演じました。そのあとに追加で収録が必要になったときは一人で演じることがほとんどでしたね。追録する度にシナリオが少しずつ変わっていった記憶があります。
――そうだったんですね!
もちろん骨組みは変わっていないんですけども肉付けをしていく作業の段階で色々と変わっていったんだと思います。だから、最初にみんなで収録したときと最終的に映像になったものが大きく変わっている部分もありますね。それだけにこだわりを感じました。
――以前に監督お二人にインタビューした際、役者さんの演技によってキャラクターの方向性も変えている部分があるとおっしゃられていました。
私も先ほどそのお話をうかがいました! マイナも色々と変えたと瀬下監督がおっしゃられていて恐縮です……! ただ、収録時にキャストの方々のお芝居を聞いたとき、キャラクターがどのくらいの距離感と熱量で会話しているのかが想像できたんですよね。だから、芝居に影響されて、当初想像されていたものを変えたというのは納得ができます。
――演者としてそれくらいの熱量を感じた?
そうですね。
――アフレコ現場で作品のお話をされることはありましたか?
本作では、演じる役柄的にミアナ役の小澤亜李ちゃんと一緒に過ごす時間が多かったんです。なので、亜李ちゃんとはハルオに対してどのくらいの気持ちを持っていて、それはどういう類いの感情なのか、またこの種族は何を大事にしているのかなど何となく話しました。ただ、キャラクター的にはそれぞれが信じるものを貫いているので、演じる身としても各々で考えることのほうが多かった気がします。
――ここまでキャラクター・お芝居の面を中心にうかがってきましたが、改めて本作の物語を振り返ってみての率直な感想を教えてください。
身近な問題だなと思いました。最終章ではゴジラVSギドラという展開になりますが、その裏では人間ドラマが色濃く描かれています。この物語の結末やテーマは、人間として考えないといけない命題だと感じています。ただ何が正しいのかという答えを出すのは難しい……。ハルオの立場であればハルオの気持ちもわかるし、異星人エクシフの大司教で今回ハルオと対峙することになるメトフィエスの考え方も私は分かる。はたまた二章でさまざまな活躍をしたビルサルドの気持ちだって分かるんです。誰かが悪者という訳ではなく、それぞれが思い描く今や未来の理想があって、それを実現しようとしているだけ。それってなんだか自分たちと関係のない話ではない気がするんですよね。
――それは映画を観て感じてほしい部分?
そうですね。
――では、全編通じていちばん印象に残っているシーンは?
ネタバレ過ぎて言えないシーンなんですよね……(笑)。ただ少し触れるとすれば最終章でモスラが登場するシーンが印象に残っています。これは監督がおっしゃられていたのですが、ゴジラもギドラもモスラも人間それぞれの目的や想いの象徴として出てくるんです。モスラに関してもその想いを感じられたので、マイナ的にも演じる上田的にも嬉しかったです。
――個人としても嬉しかったんですね。
マイナに感情移入して贔屓目で見ちゃっている部分があるんです。マイナには幸せになってほしいし、彼女がやることすべてがうまくいけばいいなというくらいの愛着があります。
――実際に完成した映像を見たときはいかがでしたか?
収録したときと同じ熱量をキャラクターたちから感じました。あのときに生で感じた人間ドラマがそのままフィルムに表れていたのでとても嬉しかったですし、感動しました。想像を超えてきたなと感じたのはゴジラやギドラといった怪獣の圧倒的な迫力。想像以上の絵や音のクオリティでした。ギドラがあんなにも綺麗だなんて収録時には思っていなかったですし、ゴジラもかっこよかったです。
――別の作品でも怪獣にかかわるキャラクターを演じられていますが、怪獣はお好きですか?
別の作品では怪獣を作っているキャラクターを演じていて……(笑)。本作もそうですが怪獣にかかわる機会が増えて、好きになりましたね。いまはヒーロー側よりも怪獣側に興味が集中しているかも。怪獣酒場に一度だけ行ったことがあるのですが、もう一度行こうかな、と思っているくらい怪獣が気になっているし、愛着が湧いています。
――それほどまでに!
はい。怪獣にもそれぞれ作り手の感情やテーマがあるんですよね。今回で言えば人間の目的や想いの象徴として現れるゴジラやギドラやモスラ。作り手のテーマや感情が怪獣にもあるので、そういうのを知りたいんです。
――これまでと見る目が変わった?
変わりました。悪者だとあまり思えなくなったんですよね。共存する術はないのかなと思っています。それぞれに生きていく目的はあると思うので、折り合いがつけられればいいのに!
――作品のことから上田さんの怪獣に対する愛着までお話いただきありがとうございました。最後に完結までを演じきった上田さんが感じる本作の見どころを教えてください。
やっぱり人間ドラマがいちばんの魅力なのかなと思います。最終章までにハルオは色々な想いを受けつつも、人間としてのいまを守ることを選んできました。そんなハルオの人生や考え方がどういうところに行きつくのか、というのが見どころだと思っています。
――ラストは衝撃的ですよね……!
ハルオは最後までハルオだったなと思いました。マイナ目線としては思うところもありますが、綺麗な言葉で言うとすればこういうハルオだったから好きになったんだろうなと。皆さんにはハルオが行き着いた先をぜひ見届けていただきたいです。
プロフィール
上田麗奈【うえだ・れいな】1月17日生まれ。富山県出身。81プロデュース所属。主な出演は『SSSS.GRIDMAN』新条アカネ役、『INGRESS THE ANIMATION』サラ・コッポラ役、『アイドルマスター ミリオンライブ!』高坂海美役 ほか
≪作品概要≫
『GODZILLA 星を喰う者』
2018年11月9日(金)全国公開
■スタッフ
監督/静野孔文・瀬下寛之
ストーリー原案・脚本/虚淵玄(ニトロプラス)
製作/東宝
制作/ポリゴン・ピクチュアズ
配給/東宝映像事業部
映画公式サイト
godzilla-anime.com
映画公式twitter
@GODZILLA_ANIME
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