映画『それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』公開 テレビアニメ30周年記念アンパンマン役・戸田恵子×ばいきんまん役・中尾隆聖スペシャル対談 | 超!アニメディア

映画『それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』公開 テレビアニメ30周年記念アンパンマン役・戸田恵子×ばいきんまん役・中尾隆聖スペシャル対談

今年、TVアニメ放送30周年を迎えた『それいけ!アンパンマン』。子どもたちのヒーローとして長く人々を魅了し続けるこの作品の30年について、そして劇場版最新作『かがやけ!クルンといのちの星』について、アンパンマン役・戸田 …

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 今年、TVアニメ放送30周年を迎えた『それいけ!アンパンマン』。子どもたちのヒーローとして長く人々を魅了し続けるこの作品の30年について、そして劇場版最新作『かがやけ!クルンといのちの星』について、アンパンマン役・戸田恵子とばいきんまん役・中尾隆聖にたっぷりと語ってもらったインタビューが、「アニメディア8月号」に掲載されている。超!アニメディアでは、誌面では紹介しきれなかったロング版インタビューをお届けする。



毎週の積み重ねで

いつの間にか30年

――『それいけ!アンパンマン』(以下『アンパンマン』)は今年で放送開始30周年を迎えます。これまでを振り返っていかがですか?

戸田 30年と言うとすごく長い印象ですが、私としては1週1週の収録を積み重ねてきて「あっという間だったなぁ」という感じですね。今日(劇場版『かがやけ!クルンといのちの星』の完成披露試写会)も30周年記念としてファンのみなさんに30年前の写真をお見せしたのですが、30年前というと子どものころというイメージだったのに、出てきた写真の私は30歳のいい大人で(笑)。いい大人になってからの私の人生の後半は『アンパンマン』とともに歩んできたということを、改めて知って感慨深かったです。

中尾 こんなに長くひとつの役を演じさせていただけるとは思っていなかったので、気がつけば30年という印象ですね。ここまで続くのだったら、ばいきんまんの声はもっと楽なものにしておくんだった(笑)。でもこの声でオーディションに受かったのだから、変えようがないのですが。

――TVシリーズが始まった30年前、収録初期の思い出を教えてください。

戸田 まず、役作りなどではとくに苦労した記憶がありません。最初、やなせたかし先生がスタジオにいらっしゃって、音響監督さんと一緒にお芝居をチェックされていました。しかし私を含め、誰ひとり大きな修正が入ることはなかったので、「力のあるプロフェッショナルがここに集結しているんだ」と実感しましたね。『アンパンマン』に必要な人が呼ばれるべくして呼ばれたんだなと、そして自分もそこにいるんだということを光栄に思いました。

――最初の収録で、とくに心掛けたことはありますか?

戸田 アンパンマンは自分の顔をちぎってみんなに分け与える、やさしさの塊みたいなヒーローです。そしてやなせ先生が「世界一弱いヒーロー」とおっしゃっていたので、スーパーマンみたいなカッコよさではなく、自分が弱くてもみんなを守りたいというメンタル面をとくに大事にしてきました。そうやってみなさんと作り上げた1話を、ひたすら30年間重ねてきた感じですね。

――『アンパンマン』の演技は最初から完成していたということですね。

戸田 そう思いたいです(笑)。それはきっと、絵の力が大きかったからでしょうね。

中尾 私のばいきんまんの最初の思い出は……とにかく辛かったです! あの声を出すことが(笑)。さすがに今は慣れていますが、当時は「何でこんな大変な声を作ってしまったんだろう」と毎回のように思っていました。


――あの声を出すために、何か特別なケアはされていましたか?

中尾 ノドを休ませることがケアですね。収録が終わったら、とにかく声を出さないようにしていました。

――そこまで苦労されてもあの声で臨まれたのは、ばいきんまんのイメージがすでに中尾さんのなかにあったからでしょうか?

中尾 そこまでではありませんが、ばいきんまんのあの絵が最初にあったから、普通の声で演じても面白くないと思ったんです。あと、当時演じさせていただいていた他の作品とも差別化しようと、あえて作りました。するとディレクターさんにも評判がよく「もっと(声を)潰した方が面白いですね」と言われてしまって(笑)。だからオーディションではもっと潰れたガラガラ声でした。さすがに自分でも「あんなガラガラ声は受からないだろうなぁ」と思っていたら……まさか30年続けることになるとは!

――ばいきんまんの役が始まってから、特に気を付けたことはありますか?

中尾 ばいきんまんは悪役なので「やっつけてやる!」とか、どうしても言葉がきつくなってしまうのですが、私は小さい子を言葉で威圧することはしたくないんです。でもばいきんまんが「この野郎!」とか言っても子どもは絶対に怖がらない、ばいきんまんはそれが可能なキャラクターなんです。悪役であっても憎まれないキャラクターになるといいなと思いました。


30年かけて培った
もうひとつの家族

――おふたりがこの30年間で、とくに印象に残っている出来事はありますか?

中尾 戸田さん、ありますか?

戸田 う~ん。長い作品なのでひと言では言えませんね。うれしいこともあれば辛いこともあり、そのたびに作品に関わるみんなでお祝いをしたり、なぐさめあったりしてきました。この30年で、やなせ先生をはじめたくさんの先輩方が亡くなりました。仲間を失ったことはとても辛かったですが、一方でジャムおじさんの増岡弘さんが80歳を過ぎてなお現役を続けられていることに、みんなで勇気をもらったりもしています。長いということは嬉しいことも悲しいこともすべてをひっくるめることでもあるのでしょうね。そうして一緒に歩んできたみなさんは、私にとってもうひとつの家族です。どんな時でも毎週1回スタジオで会って、それが30年間続いているという。「あそこに行けば誰かがいる」という居場所なんです。だから仕事でも私生活でも、何かわからないことがあったら「そうだ、(収録のある)月曜日に増岡さんに聞いてみよう!」となるんです(笑)。逆に私がみんなに聞かれることもあって、そうやって30年間やってきたんです。

中尾 本当、そんな感じですよね。毎週同じ曜日に、同じ場所に車を停めて、同じコーヒーを買って、同じ道を歩いて、同じ時間にスタジオに入って、同じ人たちと顔を合わせて仕事をする。それが当たり前のように続いてきたんです。でも、当たり前じゃないんですよね。改めて振り返ると本当にありがたいことです。さっきの戸田さんの話ですけれど、戸田さんも増岡さんに「今度あそこに行くんだけれど、どこかいい場所ない?」とよく聞かれていますね。戸田さんも「あそこならこことここを見て、これを食べるといいです」とか、まるで旅行代理店みたいで(笑)。戸田さんのガイドは評判で、遠出する人はみんな戸田さんのおススメを聞くようになっていますね。

――ちなみに中尾さんはみなさんから何を聞かれますか?

中尾 私は何もないです(笑)。

戸田 いえいえ、そんなことないでしょう! お芝居をやられる方にとっては大先輩だし、演出もされていますから、すごく頼りにされているんですよ! 私は教えたり語るほどの演技はしていませんが、みんなが楽しくなるようにいろいろお話をしていきたいですね。

中尾 『アンパンマン』に関わる人はみんな家族だから、黙っていてもお互いにわかるんですよね。収録スタジオではみんなに背中を向けてマイクに向かうのですが、背中を見るだけで「ああ、今日の戸田さんは疲れているんだなぁ……」とすぐわかるんです。そんな戸田さんが「ぼく、アンパンマンです!」とか元気いっぱいなお芝居をすると、私たちも「ああ、頑張ろう」となります(笑)。背中で語ってくださっています!



すべてを超越した
アンパンマンは、神!?

――おふたりにとって、アンパンマンとばいきんまんはどのような存在でしょうか?

戸田 アンパンマンは他の役と同じように、最初は普通の仕事として始まりました。でも、あっという間に子どもたちの人気者になってしまったんです! 街にはアンパンマンの絵やおもちゃがあふれて、子どもたちはアンパンマンの服やリュックを身に着けて、小児科の病院にはアンパンマンたちのぬいぐるみがあって……。「みんな観ているんだなぁ」と実感しました。幼児向け番組の経験がなかったから初めての衝撃で、「お子さんにとって大事な時期を担っているんだな」「彼らにやなせ先生の世界観やメッセージをちゃんと届けたいな」という気持ちが芽生えてきました。そしてアンパンマンが愛おしい大事な存在になって、「他の誰かに役を取られなくてよかった! 私がこの世で一番愛しているキャラクターなんだ!」と、強く思うようになりました。

――ちなみにアンパンマンを家族に例えるなら何になりますか?

戸田 家族というか、私にとっては神様みたいな存在です。アンパンマンは作品の中で唯一物を食べない設定のキャラクターで、「ごちそうさま」というセリフがありません。みんなが食事しているときに、いつも横でニコニコ見守っているという、どこか超越した存在です。あと、やなせ先生=アンパンマンという、唯一無二の存在でもありますね。

中尾 私にとってのばいきんまんは、私が声をあてていることは関係なく、ひとつのキャラクターとして確立した存在です。そして私に「声優」としての肩書を与えてくれたキャラクターでもあります。本当にありがたい存在です。

――逆に、中尾さんにとってのアンパンマン、戸田さんにとってのばいきんまんはいかがでしょうか。

中尾 「アンパンマンがいるからばいきんまんがいて、ばいきんまんがいるからアンパンマンがいる」とやなせ先生が語られた、陰と陽のような関係性そのままという感じですね。

戸田 私にとってばいきんまんは、アンパンマンと共存する相手です。そして、いつも収録でご苦労様なのもばいきんまんです(笑)。中尾さんがはっちゃけどころを全部やってくれて、私はそれをアンパンチ一発で仕留めるという。それを毎回やっているわけですから。ばいきんまんは吹っ飛ばされてキラーンと星になって……。

中尾 毎回除菌されちゃうんです(笑)。

戸田 そしてまた来週復活してくる元気のよさ。絶対誰も死なない、この安心感があるからこそのアンパンマンワールドです。だから毎回ふたりが戦っているのは、ある種の共存の形なのかもしれませんね。そしてアンパンマンから見ても、ばいきんまんは憎めない存在ですね。かわいく描かれているし、中尾さんのお芝居で言葉に温かみがあったり、実はやさしい人に弱いという性格だったり、とても人間っぽい。キャラクターが深いんですよ。

中尾 あと、女装癖もあるよね。

戸田 そうなんですよ(笑)。アンパンマンは真面目でブレなくて、人前で何かするのが苦手。お芝居として楽しいのは、ばいきんまんの方かもしれませんね。彼のにぎやかな言動がうらやましくなることもあります。

――アンパンマンやばいきんまんというキャラクターから、おふたりが受けた影響はありますか?

中尾 それはそのまま、やなせ先生からの影響になりますね。やなせ先生からいただいたものは本当に多すぎて……。例えば、私はやなせ先生の『チリンのすず』という絵本を家で読み聞かせをしたくて、先生に貸してくださいとお願いしたことがあったんです。その時、読み手は勉強も兼ねて若い役者さんにお願いしようと思っていたのですが、やなせ先生は「君が自分で読み聞かせなさい。それだったら貸します」とおっしゃったんです。しかも「子どもたちには本物を聞かせてあげなさい」と言われて、自分は驕っていたんだなぁ、と目から鱗でした。小さい子に対しても、きちんと正面から向き合いなさいということを教えられました。今でも子どもたちへの読み聞かせは自分で読むようにしています。

戸田 私もたくさんあり過ぎますが、東日本大震災のころの思い出が一番残っています。そのころ、やなせ先生は引退するつもりでいらっしゃいました。そこにあの大災害が起きて、先生は「僕は瓦礫は片付けられないけど、できることはある」と、引退を撤回されたんです。それからは私も先生とご一緒してあちこちに行ったり、声を収録して被災地に届けたりしました。そのときに先生がおっしゃった「戸田さん、とにかく人が喜ぶことをやりなさい」と、これに尽きると思います。「力がないのは仕方ない、いけないのはできるのにやらないこと」という先生の言葉を聴いて、仕事もボランティアも、力を惜しまずにやっていきたいと思いました。『アンパンマン』を続けることもそれに当たります。やなせ先生に教わったことは、いつの間にか『アンパンマン』に関わるみんなの中にも生まれていて……だから、本当に偉大な作品だなぁ。

――それでは最後に、今作『それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』の見どころを教えてください。

中尾 今回は原点回帰というか、自分でも演じていて1話に戻ったような感覚がありました。まさにやなせ先生がずっと培ってきたものの集大成で、ある意味新たな1話なのかもしれません。もちろん、ばいきんまんにも素敵なシーンがいっぱいあります! 終盤にはアンパンマンに対するばいきんまんの思い入れがよく分かる、胸が熱くなる場面もあります。こちらもお楽しみに!

戸田 この作品はテーマ曲「アンパンマンのマーチ」の「何をするために生まれてなにをして生きていくのか」という思いを描いた物語でもあります。お子さんはもちろん、お父さんお母さんにも刺さるものがあると思います。「自分は何をやっていけばいいのか」を、親子2世代で考えていただけるとうれしいです。ぜひご覧ください!



(プロフィール)
【とだ・けいこ】9月12日生まれ。愛知県出身。ルックアップ所属。主な出演作は『きかんしゃトーマス』トーマス役、『ゲゲゲの鬼太郎(第3期)』鬼太郎役など。
【なかお・りゅうせい】2月5日生まれ。東京都出身。81プロデュース所属。主な出演作は『ドラゴンボール』シリーズ・フリーザ役、『魔法少女サイト』サイト管理人 漆役など。

構成/中嶋竜

〈映画『それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』情報〉
大ヒット上映中!

声の出演/戸田恵子、中尾隆聖、杏、渡部建、児嶋一哉(アンジャッシュ)ほか
配給/東京テアトル

©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV ©やなせたかし/アンパンマン製作委員会 2018

《超!アニメディア編集部》
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