アニメ『FAIRY TAIL』がついに最終回。 柿原徹也と石平信司監督がこの10年を振り返る、熱すぎる対談「ナツに今、これだけの仲間がいるのが、まるで自分を見ているようです。」【インタビュー】 | 超!アニメディア

アニメ『FAIRY TAIL』がついに最終回。 柿原徹也と石平信司監督がこの10年を振り返る、熱すぎる対談「ナツに今、これだけの仲間がいるのが、まるで自分を見ているようです。」【インタビュー】

9月29日、今シリーズで10年間続いたTVアニメ『FAIRY TAIL』が最終回を迎えた。現在発売中のアニメディア10月号では、本作の主人公である“ナツ”を演じる柿原徹也と、石平信司監督にシリーズの振り返りと見どころを …

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 9月29日、今シリーズで10年間続いたTVアニメ『FAIRY TAIL』が最終回を迎えた。現在発売中のアニメディア10月号では、本作の主人公である“ナツ”を演じる柿原徹也と、石平信司監督にシリーズの振り返りと見どころを聞いたスペシャル対談を掲載中。「超!アニメディア」では、本誌記事内ではお届けしきれなかった部分も含めたロング版をお届けする。


――ファイナルシリーズの最終話が無事完成しました。現在の心境はいかがでしょうか?

石平 いろいろなところでお話ししていますが、終わった気がまったくしてないんです。277話が2期の最終話で、そのときは原作はまだ続いていたものの、なんとなくまとめ上げたかなと感じていたんですが。第2期は、旅に出ていたナツとハッピーが「大魔闘演武」で戻ってきて戦い、その結果別れることになったギルドの仲間を探しに再び旅に出たところで終わり。そこで「終わった!」という感覚が強かった。ファイナルに関しては、全部片付けて兄・ゼレフとのこととかアクノロギアとのことも全部片付け終わって、それからの「100年クエストに行くぞ!」という終わり方で、敵を残さず終わっているので、むしろさっぱり感が「終わった!」という感じにさせないのかも。10年やってきた感覚と終わった感覚はあるんですが、作品として終わった感じがしないんですね、今回は。『100年クエスト』も『FAIRY TAIL』の続きと捉えると、機会がいただけるならこの作品も作りたいと思っていることもあって、終わったとも感じないんです。

柿原 僕は20代からこの作品に携わってきて一番長く続いている……10年続いている作品はおそらくこの『FAIRY TAIL』だけなんですよね。僕らの世代で『FAIRY TAIL』のような長い作品に関わった人って少ないんじゃないかな。それこそ『ドラえもん』だったり『サザエさん』だったり日本を代表する作品だと、続いていても世代が変わっていることが多いですし。なので、僕のなかでは『FAIRY TAIL』はナツとして続いていて、終わりとは思ってないですね。悲しいって気持ちもないし。元々僕自身が原作をあえて読まないようにして収録に臨むタイプなので、どこで話が終わるのかもわからないですし。一度227話で第2期が終わると聞いたときも「あ、そうなんだ。原作これで終わったのかな」と思ったぐらい。

石平 まだアプリなどの収録もありますし、番組の放送枠として一旦終了しますけど、それで作品としての『FAIRY TAIL』が終わったわけではないんですよね。

柿原 それにしても10年かけて随分仲間が増えましたね。今回のラストは「いよいよスタートだね」と歩み出したところなので、最終回という言葉がふさわしくないんですよね。「いよいよ最強になったね」「最強になって今度は誰を助けてあげられるかな」と、また大人になった『FAIRY TAIL』の仲間が描かれていくといいな。

石平『100年クエスト』は、『FAIRY TAIL』のまんま続き……という感じです。


柿原 じゃあ、変わってないですね。変わってないというところも『FAIRY TAIL』のよさだし。思った通り続いてた。これは永遠に生きている限り続いていく。

石平 そういえば、ほかの作品の打ち合わせに行った時に「『FAIRY TAIL』、超有名作品じゃないですか!?」と言われて、嬉しかった(笑)。ファンの方からの言葉ももちろん嬉しいですが、仲間から言われるものまた嬉しいものだなと感じました。最初に3年半、しばらく開いて2年やって、1年開いて最後に1年。放送が始まってからちょうど10年経ったんですよね。

柿原 続いたのは、欲がなかったというのもあったのかも。「やりたいやりたい」と思うと意外と早く終わってしまうこともあって。

石平 え、じゃあ、俺が『100年クエストやりたい』って言ったら実現しなくなるかな……。

柿原 それは、10年続いたんだから、言っていいんです。1年で「10年20年やる」って言っちゃうと意外に叶わなくなっちゃうことも多くて、口に出さず内に秘めた欲に収めておくと続いたりするし。またあぐらをかいてると続かない。

石平 それはすごく的を射ている。色々思い当たることがあるなぁ。

柿原 追い求めるとどんどん逃げていく。今与えられている現状で全力で芝居します。でもそれ以上のことは追いかけません。あまりにも作品にしがみつき過ぎるとその作品だけの役者になってしまうし、『FAIRY TAIL』だけのクリエイターになってしまう。そういうことがあるんですよ。いい作品だからこそフラットな感覚でやるのがいいんじゃないかな。それで10年続けてようやく自分の子供のように感じられる。

石平 本当、その通りだよ。

柿原 だから僕はナツのことを自分の弟だと思うし、息子、そして自分自身とも思う。10年経たないといろんな感情が芽生えてこないかな。

石平 ここまでくると、それぞれのキャラクターがいたら、勝手に会話が出てくる。今日の暑い日にどんな会話をするかなとすぐに想像できる。段取りもなしに湧いてくる感じ。

柿原 脳みそのなかに染み付いている感じですかね。毎週決まった曜日に必ず行っていたアフレコが無くなるので、その曜日になると「あ、収録ないのか」ってなりますね。

石平 ファイナルシリーズではむしろ今までのシリーズの流れを見直すことが多かった。そこは『FAILY TAIL』と自分もそうだし、改めての気づきも多かったです。それも長く続けてきたからで、10年やってきたのはすごく大きい。

柿原 そうそう、今回のシリーズが一番飲みに行ってましたね。毎週飲んでた。なんか1年目に戻った感じでした。

――毎回同じメンバーで行かれてたんですか?

柿原 「今週はこのメンバーで乾杯!」って感じです。新メンバーがいることもあります。人間10年といえばひと時代。10年経つと家庭環境が変わっていくので、あんなに飲みにきていた人たちも家庭を持って……バイオリズムが変わるんですよね。その自体の流れの変化も楽しみつつ、なおかつ新しい世代も加わって、新しい『FAIRY TAIL』が出来上がっていく。ファイナルから加わった(ゼレフが率いる「スプリガン12」のひとり、ワール・イヒト役の北沢)洋さんとか、出番がない日でも毎週のように飲みに来てくださって。

石平 出番終わったのにね。飲みに来れないときは連絡来るし、ないときはそのままいらっしゃる。話していた内容も10年前とは違っていて、それぞれ10年分のものがあるからね。

柿原 本当に変わってないのって、監督と(音響監督の)はたしょう二さんと俺。それぞれ仕事に対しての知識などは成長していますが、根本のところにある人間性だとか、作品にかける情熱とか、役者に対する思い、人に対する接し方が変わってないのがこの3人でしたね。役者・主役である俺と、監督そして音響監督、それぞれのセクションで中心となる三人が変わってない。もちろん、パワーアップしていますけどね。

石平 濃縮したというか、洗練? よりクリアになったかな。

――最終話の収録の様子もお聞きしたいのですが。

石平 すごかったよね。収録の進行表が。何時から何時までがAパートの奇数組とか。

柿原 せっかくだから、今まで出てきたキャラクターを全員だそうってなって、総勢何人でしたっけ?

石平 69キャラいて、キャストも60人だったはずです。

――スタジオに入りきらないですよね?

石平 なので、順番と時間と決めて分けて録りました。

柿原 マイクの本数が足りないので、ワンカットずつしゃべっている人たちで…パズルじゃないですけど。

石平 偶数カット数の方、奇数カット数の方と決めてですね。

柿原 本当は僕はそういう録り方、好きじゃないんです。みんな一緒に録りたいんですよね。

石平 ただ、流石に60人を一緒に録るのはできなかったですね。移動の音を拾っちゃいますし。

柿原 最終話は、お祭り回でしたね。「お久しぶり!」という人もいれば、「こんなキャラクターいたね!」ということもあったし。

石平 ファイナルシリーズは、画面にはいても声を出してないキャラクターが何人もいて、なかなか呼べなかった人たちも最後だしせっかくだからと出てもらいました。ただ、慌ただしかったですね。だからまったく終わった気がしてないのかも。ストーリー上でのクライマックスだと思っているのが、アクノロギアやゼレフとの決着のところ。そこで感情のピークがあって、芝居の緊張感があってすごくよかったです。最終話の収録には原作者である真島ヒロさんもいらっしゃってましたしね。そうそう、最終話のラスト、ゼーラのセリフの直前にどうしてもナツっぽいセリフを入れたくなって、柿原さんに振っちゃいましたね。

柿原 「最後がゼーラかよ!ナツじゃないの?」って思いました(笑)。僕のアドリブに、ハッピー役の釘宮さんも瞬時に反応してくださって。ただ、最後がゼーラじゃなくてもハッピーだったんですけどね。まあ、ハッピーならいいかなと。

石平 ゼーラは「またね」のセリフのためだけにお呼びするのもなぁと思っていたけど、このセリフを入れないと終わらなくなっちゃうと思って、どうしても入れました。だって、これ入れないと次の週も観ちゃうでしょ?

――いくらでも物語が続いて行ってしまいそうですよね。

柿原 この間、『FAIRY TAIL』のイベントで台湾に行ってたんだけど、そのイベントでも『100年クエスト」をアニメ化してほしいという声は多かったです。最終回、本当にお祭りだったし、なんか同窓会みたいな感じでしたね。役者は役を継承していくのではなく、その人がいないと成立しないですから、同窓会のように再び会えて嬉しかったです。ただ、最終回と言って特別何か変わったかということは、個人的にはなかったです。最終回だからと言ってそれだけ気合を入れるのが嫌なんです。いい芝居ができなくなっちゃうんです。

石平 そうそう。いつも通り変わらずだね。収録自体はいつも通り。ただ録り方がわちゃわちゃして違ってたけど。

柿原 いつも通りやる最終回が正しい最高の最終回だと思っています。

――328話シリーズ通してありますが、印象残っているエピソードは?

石平 初期で一番インパクトが残っているのは、「楽園の塔」。ナツが大変だったと思う。最後、ジェラールと戦うとき、水晶を食べて、とんでもないドーピングして。

柿原 そのあとは楽でしたよ、セリフがないから(笑)。

石平 エルザは水晶の中に囚われて、それをナツが助けて、お姫様抱っこをして戻ってくる。なんか色々「楽園の塔」は『FAIRY TAIL』らしいシーンがたくさんあって、また小山力也さんの梟とか変わったキャラクターが出てきて。

柿原 力也さんの無駄使いと言われたキャラクターですね。いい役者の方を変わったキャラクターで使うという、ミスマッチなところが逆にいいという。速水奨さんの一夜(=ヴァンダレイ=寿)とか。

石平 一夜はめちゃくちゃ好きなキャラクターなんですけど、あれは速水さんだから成立しているキャラクターだよね。見た目はアレだけど、声のイケメンっぷりがすごい。そりゃ若い子たちが「アニキだ、先輩だ」と慕うキャラになるよ。

柿原 最後の最後に本当にイケメンになるし。

石平 「あなた本当にイケメンね」って女性キャラに言わせるほど。

柿原 僕は、印象に残っているシーンてないんですよ。愛がないようにとられてしまうと思うんですが、違うんですよ。あのシーン、あのシリーズ、あれがよかったって、ナツは絶対言わないですから。

――たしかにその都度全力投球ですし。

柿原 あと、やったことすぐ忘れるし。戦った相手すら覚えてない。

石平 名前、覚えてないね。

柿原 そういうところ、(僕とナツは)すごく似てるんですよ。

石平 ただ、柿原さんは話していけば全部覚えているんですよね。

柿原 全部覚えているって言えば覚えてるし、全部忘れているって言えば忘れてる。僕のなかのナツは、もう『100年クエスト』に行ってしまっているし。記憶としては仕舞っていて、それが全部ナツのなかにあってもっと強くなっている。ただ、役者として一番印象に残っているのは1話目です。第1話ぜひ観直してほしいです。僕が「まだナツとのシンクロが何%なんだろ?」というスタートだったんで。僕のなかでの1話目は、早くナツになりたいっていう気持ちがあった回。唯一100%でなかったナツなんじゃないかな。

――少し“柿原徹也”が入っていた?

柿原 うーん、逆かもしれない。ちょっと芝居しちゃっている。2話目以降“柿原徹也”なんですよ。柿原徹也を存分に出しているナツなんですけど、1話目はそのままの柿原徹也を出せばよかったのに、どれくらいの声がナツなのか、どの声を出すのか、自分の中で探ってしまった結果、ナツって声を作るんじゃないんだと気づいた。オーディションの時の、「おはようございまーすっ!」でスタジオに入ったあの瞬間の声で演じればいいだけだったのに、いざ1話目となると、このビックタイトルで、唯一1話目だけ考えてしまいました。残りの327話は何ひとつ考えてないです(笑)。

石平 ガルナ島へ行く最初の10話目ぐらいまではスタッフ側も結構手探りだったかな。放送の時間帯も月曜日のゴールデンタイムで、視聴対象をやや年齢層を低めに見ていて、探り探りだったと思います。途中からあまり気にしなくなりましたけど。放送始まった年に、小学校1年生だった子が5年経つと5年生になる。そうなると対象が5年生に上がる。じゃあ、中学生だった子が…と考え始めて、だんだん視聴者層がどうこうということを考え過ぎてしまうとブレてきてしまって、長く続く作品はそこを考えない方がいい、原作が向いている方へやっていけばいいと思えたんですよね。ちょうど「楽園の塔」の話があって、一番迷いが出ていた時期。最初、1年間の放送ということで話をいただいて、ラクサスと決着をつけてラクサスがギルドを離れて旅立っていくエピソードが最終回だった。結果、それ以降の方が長くなっちゃいましたけど。「楽園の塔」が最後の大きなバトルになるというのもあって、色々力が入っているんです。そういう経緯があって、思い入れがあるんですよ。その後「延長します」が続いたので、結果何も考えなくなったんですよね(笑)。より血肉になってきたんですかね。今じゃどこを切っても『FAIRY TAIL』が出てくるかな(笑)。

――では、ファイナルシリーズで印象深いエピソードはありますか?

柿原 最初から最後までナツはずっと一貫して同じことを言っているんですよ。「仲間、仲間、仲間」って。言い方が変わっていたり、言う相手が変わっていたりするだけなんです。なので、自分の中で特定のシーンに絞るのが難しいんですよね。

石平 今回はグレイとのやりとりに少し変わったことがあったよね。317話で「友達だろ」ってナツがグレイに具体的にセリフで言うシーンに結構びっくりした。今まで言わなくてもそうであるという関係だったけど。

柿原 そこは、言わせたグレイがバカヤロウなのか、こんな言葉を使わせないとグレイは気づかないのかと。

石平 「3回目だぞ、絶対氷結(アイスドシェル)使うの!」って、その話で盛り上がったよね。

柿原 そういえば今回のシリーズではずっと叫んでいた印象があります。ファイナルシリーズの1話目で「カッキーと(ルーシィ役の平野)綾ちゃんは声が変わったよね」と言われましたね。僕や綾は1年前だったら、もっとパッションだしてたりとか、喉をぎゅっとしめて叫んでいたりしたのが、昔よりも発声がよくなっていて、まったく同じ感覚で叫んでいるんだけど、よりスコーンと音が出ちゃうんですよ。僕だったら、ボイストレーニングなどをして声が伸びている。綾はミュージカルでずっと鍛え上げられているから、昔なら次の日仕事にならないこともしょっちゅうだったんですが、それが僕と綾はなくなって。

石平 ダビングの時にすごく感じた。音がすごく出ていた!

柿原 芝居以外でも感じることがあって、アーティスト活動もやっているのですが、難しい曲を歌えば歌うほど、どんどん自分のキーが上がっていくのも感じました。役者として、同じ体型、同じ体調のまま昔と同じことをできることが役者なのか、それとも、昔のことを力を抜いてできるようになる、体がどんどん鍛えられていく、プロフェッショナルとしてどちらが正しいのかふたりで話したりしました。共に10年も続いている作品であるから、僕らの体の成長と共にキャラクターも成長してないと。ということは僕らも10年間一緒に戦った仲間も成長しないと困る。だから役者は切磋琢磨しないといけない。演じているキャラクターが強いからではなく、役者も強くなっているからそのキャラクターも強くあり続ける、という感じでやっていくことしかないよねと。ファイナルシリーズの最初のセリフが「よぉ、ハッピー」だったと思いますが、昔の感じでやってしまうと音が強すぎてしまって、ほかのキャラクターとの強さのバランスが崩れてしまう。本当の声量で出すときは、戦いの攻撃のときにドッカーンと出してやろうと思っていたから温存してたんですが。ただ、僕原作を読んでないから、何回戦うのがわからなかったし、しかもラスボスが誰なのかもわからなくて。だから「次来る人がラスボス」といつも思いながらやっていました。「全然最後じゃないじゃん!」っていうのを上乗せ、上書きしてきたファイナルシリーズ。誰が来ても全力で戦う気持ちでいたファイナルシリーズでした。

石平 読んでないからこそできることだよね。だから無茶してやれる。

――たしかにナツはいつも全力投球ですよね。

柿原 昔はね、全力投球しないと勝てない役者の方ばかりが相手だったんですよ。だっていつもベテランの方ばかり来てたんですもん。もちろんファイナルシリーズでも全力で戦いましたけど僕より若い子がくると流石にラスボスではないとわかってしまう。本当のラスボスであった(アクノロギア役)鳥海(浩輔)さんが来たときは、「本当の実力全部をぶつけて、先輩を超えるくらいの気持ちでやってやる」という役者のエゴイズムからくる感情があって、そこはちょっと、仲間のために戦うナツとは違う怒りだけど、それでナツと同じぐらいの感情が芽生えてくる。そこはバランス的にはいいキャスティングでやらせてもらえました。

石平 鳥海さんもアクノロギアを演じる際におっしゃっていたことなんだけど、ある程度役者が出揃ったあとで鳥海さんが登場して、しかもラスボス。これまでいろんな人がいろんな敵役を演じられてて、どうしようかと思っていたと。鳥海さん自身は、「特徴的な声でもないし、特徴的なお芝居でもない。どうやったら人間には聞こえなく喋るかというところに全力をかけるしかないよね」とおっしゃってて。

――ちなみにお互い、今まで言いたかったけど言えなかった、または聞いてみたかったことはありますか?

柿原 監督はずっと僕のことを褒めてくださるから。

石平 328話、柿原さんには毎回収録のときに伝えたいことは言っているので、それはファンの皆さんには内緒(笑)。

柿原 教えないです(笑)。『FAIRY TAIL』ってめちゃくちゃ長くて熱い作品だった。そしてめちゃくちゃ明るい作品だったって思っていてほしい。楽しい、面白い、ギャクが多い、仲間の絆を象徴した作品であってほしい。当然作ってきた人たちにとっては楽しいことだけではなかった。役者も含めて。そういうことを乗り越えてきたメンバーたちでしたから、ファンの皆さんには言えないこともあります。『FAIRY TAIL』のような10年間続く作品をやる役者だって監督だってあまりいないんです。僕の代表作って未だに『FAIRY TAIL』『天元突破グレンラガン』。新人の若い役者が出てきてその子たちに僕は「ほら、見てみろ、『FAIRY TAIL』やってんだぜ、すごいんだぜ」じゃなくて、『FAIRY TAIL』って言うすごい作品があって、こういう作品により多くの若い子たちに巡り合ってほしい。目の前にある1クール2クールのお仕事を片付けることが上手になる。それが終わったら「次のクールのオーディションを勝ち取らないと!」いう欲ばかり芽生えて行って、目の前のものしか見えなくなってしまう。それももちろん大事なんだけど、同じ作品を長くやっていくと、周りがどう思っているのか、弱い子がどう感じているのか、助けてあげなきゃいけないのか、などといろんなことが見えてくるようになる。相手とのやりとりに押し引きとか、譲り合いをひとつずつわかってくるようになるんです。『FAIRY TAIL』みたいな作品をレジェンドと言われている先輩方はいっぱい経験してきているじゃないですか。でも経験できるのは、僕たちの世代がもしかしたら最後なんじゃないかと思うんです。だからこそ「すげーだろ」じゃなくて「すごんだよ、こういう作品は。だから君達にもやってほしいんだ」「だとしたら、どうやったらこういう作品ができるのか」ということを逆算してほしい。僕はこのスタッフの方々がいてくれたおかげで『FAIRY TAIL』の一員になれたわけで、選ばれなかったら、今ここでインタビューを受けてないし。もしかしたら10年続いてなかったかもしれない。それはあの時あのオーディションですべてが変わったということ。最高の出会いでした。

石平 それは、収録終わりの飲み会からですね。10年かけて出来上がってきた我々の関係はいろんなお店でできたものです(笑)。令和になりましたが、昭和的な飲みニケーションとかも大事なんですよ。柿原さんぐらいなんです、本音をぶつけてきてくれたのは。そこからじゃないとわからないこともありますし。人間としての付き合いができたから、10年続いたのかな。

柿原 でもまだ短いですよ、10年。まだ僕ら死ぬわけではないので、ここから20年30年、死んだ時に「いや、長かったね」と言わないと。だからこそ死ぬ時でも一緒にいたい。

石平 だからまだ中学生ぐらいの感覚なんだよ。高校、大学、社会人とまだありますから。

柿原 まだ代表作ないなぁ、だってまだ中学生でしょ?(笑)

――ファイナルシリーズも最終回です。

石平 最終回。10年やってきた結果でもあり、10年やってようやくここから次にナツたちが行くところに立っています。そして、にぎやかな最後になっているので、楽しんでいただけていたら幸いです。

柿原 ドイツからトランク1個で日本に来て、ナツはハッピーを連れてでしたが、気づいたら7年の時も超えていろんな冒険をしてきました。今、これだけの仲間がいるのが、まるで自分を見ているようです。監督と一緒に『FAIRY TAIL』のインタビューを受けてるなんて、誰が想像したかですよ。10年ナツと一緒に歩いてきたと思っていますし、ナツと、『FAIRY TAIL』と出会ってなかったら、本当にどうなっていたのか、想像がつかないです。だから、この作品なしでは役者人生を語れない存在になりました。9年前に監督と台湾のイベントへ行って、その当時も『FAIRY TAIL』の人気がすごくて、ついこの間も台湾に行った時に、「9年前のイベントにも来た人いる?」って聞いたら、手がたくさん上がっていたんです。この作品を通して色々な国にいかせていただいたんで、世界に愛されている作品になったということがサブカルチャー業界で生きている身としては嬉しいですね。これからも『FAIRY TAIL』もやっていきたいと思っていますし、真島ヒロさんの作品の中でもダントツ一番のものにしたい。作品に携わる以上、その原作者の方の代表作にしないといけない。監督の代表作にしないといけない。僕が主人公ではなく、サブで入ったとしたら、その主人公・ヒロインの役者さんの代表作にしなければいけないと思っているので。僕らはみずからの手で代表作を作っていると思っているので、そのお力添えを皆さんからもいただけたらなと思っています。とりあえずは10年、よく頑張った、よく楽しいだねということで、これからも楽しんでいきましょう!

石平 まだ終わってないですからね。また『FAIRY TAIL』でお会いしましょう。

柿原 じゃあ、1話ルーシィに言ったセリフで……締めましょうか。「お前も来いよ!」

取材・文/鈴木文恵

<PROFILE>
【かきはら・てつや】12月24日生まれ。ドイツ出身。主な出演作は『あんさんぶるスターズ!』明星スバル役、『パズドラ』トラゴン役など。Zynchro所属。

【いしひら・しんじ】監督として手がけた主な作品は『ログ・ホライズン』、『SUPER LOVERS』シリーズ、『ヘボット!』など。

©真島ヒロ・講談社/フェアリーテイル製作委員会・テレビ東京

《超!アニメディア編集部》
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