運命の中で抗う若者たちの旅、堂々完結。TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』の木村泰大監督と髙橋秀弥監督が制作の思い出を振り返る【インタビュー】 | 超!アニメディア

運命の中で抗う若者たちの旅、堂々完結。TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』の木村泰大監督と髙橋秀弥監督が制作の思い出を振り返る【インタビュー】

ギャングスターになるという夢を抱くジョルノは、仲間と共に数々の苦難を乗り越え、ついにその願いをかなえました。彼らの旅を描き続け、ついに最終回を迎えたTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』。アニメディア9月号では、 …

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  • 運命の中で抗う若者たちの旅、堂々完結。TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』の木村泰大監督と髙橋秀弥監督が制作の思い出を振り返る【インタビュー】

 ギャングスターになるという夢を抱くジョルノは、仲間と共に数々の苦難を乗り越え、ついにその願いをかなえました。彼らの旅を描き続け、ついに最終回を迎えたTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』。アニメディア9月号では、木村泰大&髙橋秀弥両監督の対談を掲載中。「超!アニメディア」では、本誌に入らなかった部分を含めたロング版をお届けする。


――物語を通して、ジョルノたちはどのように成長・変化したと感じますか?

髙橋 じつはジョルノ自身はほとんど成長していないんです。15歳にして、その人格はほぼ完成されていますからね。むしろ、変化したのはブチャラティをはじめとする仲間たちです。ブチャラティは街に麻薬が蔓延していることに嫌悪感を抱いていましたし、アバッキオももとは正義感あふれる警官でした。ただ、紆余曲折あって正義に対する思いは胸の奥底に沈んでいたんです。でも、ジョルノの夢に引っ張られて、それまで内に秘めていた「黄金の精神」が、少しずつ表に出ていったという感じでしょうか。大きく変化したのはトリッシュですね。

木村 トリッシュは、もとはごく普通の女の子でした。それが「あなたの父親はギャング組織のボス。敵対者からあなたを護衛する」と、ある日突然、ギャング同士の争いに巻き込まれました。彼女にしてみれば、妙な男たちに拉致も同然に連れさらわれ、会ったこともない父親のところへ連れていかれるわけですから、警戒心を露にするのも当然です。それが、数々の修羅場を通して少しずつ心を開いていき、最終的には「自分がみんなを守る」というところまで、強く成長を果たしました。その変化を、違和感なく自然に描いていくところにはけっこう気を使いました。


――本作を制作するなかで、おふたりは各話を手分けして担当されたそうですね。お互いの演出で、とくに印象に残っているのはどの話数でしょうか?

木村 髙橋さんが担当した第28話は、絵と音楽が絶妙にシンクロしていたのが印象的でした。絵のクオリティーも高かったんですが、とくに音楽が最高で。ナランチャの背後から光が差すシーンとか、アバッキオの遺体の手に何かが握られていることにジョルノが気づくシーンなど、音楽の入り方が緻密に計算されていると感じました。

髙橋 あの話数は音楽よりも先に絵コンテを作っていて。フィルムスコアリング方式(※出来上がった映像に合わせて音楽を作ること)でやっているからこそ、映像と音楽をうまくリンクさせられたんです。木村さん担当で印象に残ったパートというと、やっぱり第22話からの後期OP映像ですね。木村さんは『ジョジョ』のビジュアル担当でもあるので、映像的に非常にかっこいいものに仕上がっていて。特に後期OP 映像は、これまでの物語をダイジェストで見せるような構成になっていたのがよかったなと。

木村 映像的なかっこよさのアイディアは、前期OP映像で自分のなかの「引き出し」にあるものを使い切っちゃって。後期OP映像では別のシチュエーションで構成しなければならず、物語のダイジェストしか選択肢がなかったんです(笑)。

――これまでのシリーズも、最終話付近でのOP映像にはサプライズ演出が仕かけられていました。そのため、多くのファンが「本作でもきっと何かある」と予想していましたね。

木村 今回も「ディアボロがキング・クリムゾンを発動する」とか「ジョルノがゴールド・エクスペリエンス・レクイエムを発動する」という仕掛けを用意しましたが、さすがは『ジョジョ』ファン、おおむね予想されていましたね。これまでのシリーズで欠かさずサプライズを入れていたので、みなさんの期待のハードルがどんどん高くなっているのがつらいところです。こちらとしては、その期待値を超えなければならないのですから。

――ファンの期待に応えるのも一苦労ですね。それでは、とくに制作に苦労したのはどの話数でしょうか?

髙橋 各話それぞれに苦労はありますが、とくに第5~6話でのズッケェロ戦は、どう描くべきか難航しました。あの話数は木村さんにも相談しながら進めましたよね。

木村 じつは「ブチャラティたちの船の上に、ズッケェロの能力で薄っぺらにした船をかぶせていた」というトリックを、いかにわかりやすく、そして面白く伝えるか。序盤の大きな課題でした。ブチャラティたちが乗った船の番号をあらかじめ見せておいて、あとで見えた番号が違っているなど、原作にはないヒントを散りばめたりもしましたね。図解しながら解説する、という案もありましたが、演出上かっこよくないのでやめました。

髙橋 基本的に『ジョジョ』って、理屈だけで成り立っているわけではないんです。理屈だけで語ろうとするとよくわからないところもあるけど、そこはあえて絵とテンポいいノリで突っ切るッ!みたいな(笑)。わかりやすさや整合性ではなく、エンタメを重視する。そこが『ジョジョ』の魅力でもあると思うんです。

――では、とくに印象に残った敵キャラは誰でしょうか?

髙橋 僕はホルマジオが一番思い入れがありますね。第10話ではホルマジオ目線で描いていたので、敵キャラを主人公のような感覚で描けたのも新鮮で楽しかったです。また、ホルマジオが炎に包まれながらも、最後の執念でナランチャに向かっていくシーンは、ホルマジオ役の福島潤さんの熱演がすさまじかったです。

木村 僕が描いていて一番面白かったのはペッシです。何よりも「あごと首の境目がない」という、独特の顔の形状が面白い。これで振り向いたときはどうしようかと考えたんですが、結局ゴムが伸びるような感じにしました(笑)。あとは、ポルポも楽しかったなぁ。少し人間離れしたフォルムのキャラクターを描くのは、新鮮な刺激がありますね。

――キャスト陣の芝居も印象的でしたが、お二方からはアフレコのときに何か指示を出されたのでしょうか?

髙橋 キャスト陣はみんなお上手な方ばかりで、アフレコの前に演技の方向性を固めてきているので、こちらから指示を出すことはあまりなかったです。それどころか、毎回の収録はかなりスピーディで、我々は楽をさせてもらっています。

木村 数あるアニメ作品の中でも、収録が終わるスピードはトップクラスじゃないですか? ほとんど録り直しなしで終わるので。

髙橋 みなさん『ジョジョ』愛が非常に強いから、役や物語への理解度がものすごく高いんですよ。

――アフレコでとくに印象に残っていることは?

髙橋 ドッピオがボスから指令を受ける際の「とぉるるるる」を初めて聞いたときは衝撃的でしたね。あれは面白すぎました(笑)。「(ドッピオ役の)斉藤壮馬さん、すごいな!」って、キャストの間でも話題になっていました。

木村 シルバー・チャリオッツ・レクイエムの能力で、みんなの身体と魂が入れ替わった回も面白かったですよね。

髙橋 ナランチャになってしまったジョルノが、またうまいんですよ。ジョルノ役の小野賢章さんとナランチャ役の山下大輝さんは、声の質が似ているからまったく違和感がなかった。

――ラストの第38、 39話のこだわりのポイントについて教えてください。

髙橋 ラストシーンをどう描くのかは、非常に悩みました。最後にアニメオリジナルの要素として、亀の横にアバッキオやナランチャが死んだときに咲かせた花と、ブチャラティのキーアイテムを添えて、まるで墓標のように並べてみました。

木村 フーゴは最後まで登場させるか否か、悩みましたね。最後に、麻薬が撲滅して浄化されたナポリの街をジョルノが歩いていく、という案もありました。

髙橋 そのシーンは絵コンテでは描いていたんですが、結局ボツにしましたね。ジョルノが組織のボスに就任してからどのくらい経っているかが不明瞭だったし、そんなにすぐに街が浄化されるか疑問だったので、あえて突っ込んで描くのは避けようと。余計な要素は省いて、原作の雰囲気を活かすことにしたんです。

――それでは、最後まで本作を応援してくれたファンに向けてメッセージを。

髙橋 全39話をご覧いただき、ありがとうございました。最後まで追いかけ続けるのは大変だったと思いますが、ご満足いただけたらうれしいです。

木村 ぜひイタリアへ“聖地巡礼”に行ってみてください。アニメではちゃんとロケハンして、現実の風景に沿うように描いているので、実際に訪れたら新しい発見があるかもしれませんよ。

取材・文/福西輝明

TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』公式サイト
jojo-animation.com

TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』公式Twitter
@anime_jojo

©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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