現在、TVアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』では、初のポケモンリーグが進行中。そんな『ポケモン』の見どころを、冨安大貴監督に聞いたインタビューが、「アニメディア8月号」に掲載されている。超!アニメディアでは、本誌に入らなかった部分を含めたロング版をお届けする。
――『サン&ムーン』では初のポケモンリーグがスタートしました。今作でポケモンリーグの模様を描くにあたっての意気込みをお聞かせください。
『サン&ムーン』でバトルを描いてこなかったわけではないのですが、何週もバトルをメインにすることにはありませんでした。ですから、これまで描いてきたキャラクターのバックボーンや日常をちゃんと背負ったリーグを描いていこうと思っています。これまで観てきてくれた人が、「ずっと観ていてよかったな」と思えるものを見せられたらと。もちろん、リーグ戦で興味を持った方にも楽しんでいただけるようなストーリーになってますので、ぜひ観ていただきたいです。
――今回のポケモンリーグとこれまでのリーグ戦とは、とくにどんなところが違っているのでしょうか?
今回のリーグを作ったのは、サトシたちが通うポケモンスクールの担任の先生であるククイ博士です。アローラの多くの人に参加してほしいというコンセプトから、これまでのシリーズのポケモンリーグよりは間口が広いものになり、サトシがアローラで過ごすなかで出会った人たちも、かなり参加しているんです。ですから、顔見知りが多いことが、これまでと大きく違うところですね。
――サトシにとって知った顔が多いということは、これまでとは戦い方も違ってきそうですね。
手の内を知っていて、人間関係もポケモン同士の関係性もできていますからね。これまでは、大規模な大会で途中経過の描写を省くこともあったのですが、今回はそれはせず一戦一戦をていねいに描いています。
――これまでリーグ戦で優勝したことのないサトシですが、今回の優勝確率はどのくらいでしょうか?
うーん、数字にするのはなかなか難しいですね(笑)。決勝トーナメントへの出場を決めた16人を並べると、優勝候補の筆頭はイリマですかね。ポケモンスクールの卒業生でもあり、優秀なトレーナーでもあり、カロス地方でのリーグ戦経験もある。しかもストイックなので、強いトレーナーだと思うんです。今回は、いきなり正体不明のすごいトレーナーが現れて優勝をかっさらうみたいな展開はほぼないので、サトシの前に立ちはだかるのは、イリマ以外だと、一緒に切磋琢磨してきたカキ、グラジオ、それからハウかなと。彼らは誰が勝ってもおかしくないくらいの実力を持っていると思うので、100%を5人で割って、勝率はそれぞれ20%というところでしょうか。
――ちょっと気になるロケット団のムサシとコジロウの活躍はどうですか?
彼らの勝負はなかなか面白いと思います。ふたりがどんな戦い方をするのかは、楽しみにしていただいていいと思いますよ。
――しかし、リーグ戦である以上、負けるトレーナーも出てしまいますよね。
はい。ただ、ククイがリーグ戦を開催して自分の教え子を参加させたのは、「アローラで一番強い者を決める」と言いつつも、勝ち負けではなく、本気でやることで何かを学んでほしいという思いがあるからなんですよね。ですから、負けたとしても何か得るものがあるように描くことを心がけています。極端な話をすると、優勝者以外は全員負けですし、負け方を学んでほしいという気持ちで制作している部分もあります。
――では、決勝トーナメントに出場したポケモンのなかで、注目してほしいのは?
これもまた難しい質問ですが、デコジロウのパートナーのヒドイデです。ヒドイデのデコジロウ愛はひたむきでいじらしくぜひ観ていただきたいです。
――ピカチュウは、どんな活躍をしそうですか?
ピカチュウの戦い方は、これまでのシリーズと変わらず、サトシとともにゼンリョクでバトルします。ただ、戦っていないときもサトシの足もとで一生懸命応援をしていたりするので、いつも本気の姿を観ていただきたいです。
――『サン&ムーン』で、サトシはどんな成長をしたと考えられていますか?
サトシはこれまでのシリーズで、トレーナーとしても立派に成長してきていると思うんです。そんなサトシが『サン&ムーン』で何か学ぶことがあるとしたら、ポケモンマスターとは何なのかということではないかと考えました。アローラの暮らしで、人とポケモンの距離の近さを肌で感じ、ポケモンマスターがリーグで優勝することだけではないということは、きちんと学んできていると思います。それから、これまでサトシのお父さんは、本編では描き切れていなかったんですね。それがアローラではククイ博士とバーネットという“お父さん”と“お母さん”と暮らしていた。サトシもお父さんがそばにいることの意味を感じたはずなので、お父さんがいるなかで得たものを見せる集大成が、今回のリーグなのかなとも考えています。バーネットから「家に帰ってきたら手を洗いなさい」と叱られるなど、リアルな母性も感じることができて、人としてもひとつ成長をしたと思っています。
――冨安監督が考える『ポケモン』の魅力とは?
人と不思議な生き物がコミュニケーションを取ろうとするところが興味深いですし、ポケモンの個性を含めて、もともとのゲームのデザインからよくできている。原作がしっかりしているからこそ、長く愛され続けていると感じています。
――ちなみに、今、冨安監督が気になるポケモンは?
監督をやっていると、みんな好きになりすぎちゃうんですよね(笑)。いろいろいますが、バクガメスはいかついビジュアルのわりに、気がやさしいし、カキと一緒で頑張りやさんなので、かわいいなと思います。
――では最後に、アニメディア読者へメッセージを。
この先の試合には、ひとつひとつにドラマがつまっています。勝った人にも負けた人にもドラマがあるので観ていただけたら、『サン&ムーン』のみんなのことを、より好きになってもらえると思います。
取材・文/野下奈生
〈TVアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』情報〉
毎週日曜日夕方6時よりテレビ東京系で放送
総監督:湯山邦彦
監督:冨安大貴
シリーズ構成:松井亜弥
キャラクターデザイン:中野悟史,安田周平
美術監督:武藤正敏
サトシ:松本梨香
ピカチュウ:大谷育江
ロトム図鑑:浪川大輔
リーリエ:真堂圭
カキ:石川界人
マオ:上田麗奈
スイレン:菊地瞳
マーマネ:武隈史子
ククイ博士:中川慶一
オーキド校長:堀内賢雄
ムサシ:林原めぐみ
コジロウ:三木眞一郎
ニャース:犬山イヌコ
ソーナンス:うえだゆうじ
グラジオ:岡本信彦
ルザミーネ:木下紗華
ビッケ:藤村知可
ザオボー:真殿光昭
バーネット:國立幸
TVアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』公式サイト
https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/pokemon_sunmoon/
©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon