前田佳織里アーティストデビューを飾る1st EP「未完成STAR」“歌がホームである、大切な芯である” | 超!アニメディア

前田佳織里アーティストデビューを飾る1st EP「未完成STAR」“歌がホームである、大切な芯である”

アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2023年4月号には1st EP『未完成STAR』でアーティストデビューを飾った前田佳織里が登場。

特集
注目記事
前田佳織里『未完成STAR』
  • 前田佳織里『未完成STAR』
  • 前田佳織里『未完成STAR』
  • 前田佳織里『未完成STAR』

アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2023年4月号には1st EP『未完成STAR』でアーティストデビューを飾った前田佳織里が登場。

前田佳織里『未完成STAR』

本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。

聞いてくださる人に寄り添いたいという思いを込めた全4曲


――まず、アーティストデビューおめでとうございます! 発表はサプライズでしたよね。

所属事務所アミューズのYouTubeチャンネル「AMUSE VOICE ACTORS CHANNEL」でのサプライズでしたね。マネジャーさんがスケッチブックに「オープニングテーマソングを担当することが決まりました!」と出してくれて。そのときは驚きと喜びはあったものの、じつは実感はわいていませんでした。

――いつごろ実感しましたか?

じわじわと時間をかけて、という感じでした。ただ、実感がわいてくると今度はちゃんと準備をしなきゃという気持ちが芽生えて、うれしさと責任の重大さを同時に感じていました。

――前田さんは学生時代にバンド活動をしていたそうですが、歌の活動もしてみたいという思いがありましたか?

そうですね。私は歌に何度も助けられたり支えてもらったりしてきたので、いつかはアーティストとして歌を届けられるようになれたらと思っていました。

――アーティスト活動をする声優も増えていますが、声優のアーティスト活動にはどんなイメージがありますか?

私は田村ゆかりさんを好きということもあり、かわいらしく、洗練された武器を持つ方たちというイメージが強かったです。それから、言葉の使い方が美しいイメージでした。

――そんななかで、自分はどんなアーティストになりたいと思って活動をスタートしたのでしょうか?

はじめに、スタッフの皆さんとめちゃめちゃ意見を交換しました。最初に「前田佳織里の歌とは何か」というところで、いろいろなキーワードを出していったんです。私にとって歌は原点だし、ステージに立つことも好き。人前でパフォーマンスをするのも楽しいし、その楽しさが役者としてのお仕事にもつながっている。そんな話し合いのなか、トータルとして歌がホームである、大切な芯であるということを伝えてのスタートでした。



――各曲について教えてください。まずは『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』のオープニング主題歌でもある「光ったコインが示す方」。

4曲のなかで最初に収録した曲です。初めての「前田佳織里の曲」なので、声の使い方などをいろいろ探りました。ずっとキャラクターとして歌うことに慣れていたので、言葉をきれいに歌わないといけないという意識があったんです。それから、自分の地声があまり好きではないということもあり、かわいく聞かせたいという思いもあって。でも、マネジャーさんから「気にしすぎずに素直に自分の気持ちを伝えることを優先してみては」とお話があって。そこからきれいに歌うだけでなく、ノイズ感があってもいいんだなと思えるようになりました。とくにロングトーンのパートでは自分の生き方をぶつけるような気持ちで声を出していきました。

――オープニングらしい前向きさと、力強さのある歌声ですよね。

ありがとうございます! 作品のPVなどで曲が発表されたとき、聞いてくれた皆さんが「前田の声ってこんなに力強いんだ」と言ってくれて、すごくうれしかったです。先日、皆さんの前で初披露する機会があったのですが、来てくださった方が喜んでいるのが伝わってきて。こうやって歌を届けて感動が返ってくることって、本当に幸せなことだなと感じました。

――アニメの映像と一緒に歌を聞いた感想はどうでしたか?

鳥肌が立ちました。「歌 前田佳織里」の文字が出たことにも感動しましたし、主人公のミツハの「楽しく前向きに未来を切り開こう」というマインドにも曲がぴったりで。本当にうれしかったです。


TVアニメ『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』ノンクレジットOPムービー
――2曲目の「Fantasy」はちょっとワイルドな雰囲気があります。

攻めた曲ですよね。しっかりと刻む裏打ちのリズムと力強いメロディがすごく好きです。3曲目の「ポジティブガール」がパブリックイメージに近い前田だとしたら、この曲はあまり人には見せない、私のステージにかける執念や泥臭い気持ちが詰まっています。私はたまに、大勢の人が歩く交差点で、ぽつんと取り残されたような孤独感を覚えて、それを自分が俯瞰して見ているような感覚を持つんですが、それに寄り添ったような繊細な感覚を秘めた曲でもありますね。

Fantasy
¥250
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

――こちらは低音がよりぐっと響いてきます。

レコーディングでは、力強くまっすぐに伝えることをすごく意識して歌いました。ただ、リズムの取り方が難しくて。「グルーヴ感を大事に」とスタッフの方にも言われたのですが、まず「グルーヴ感」がわからない(笑)。ボイトレの先生に聞いたりして、いろいろな技術や知識を学んでいった曲でもあります。

――現時点での前田佳織里的グルーヴ感を言葉で示すとしたら?

主旋律だけじゃない音を聞くことで生まれるものしょうか。もちろん、曲によって違うんですが、この曲に関しては主旋律以外の音に注目することで、いろんなストーリーが見えてくるんです。聞こえなかった音がいっぱい聞こえるようにもなったので、それがグルーヴ感なのかな。まだ完璧に理解しているわけではないので、いつかちゃんと言葉で説明できるようになりたいです。

――続いての「ポジティブガール」は、確かに「明るくて元気な前田佳織里」が思い浮かびます。

非常に前田が表現された曲ですよね。タイトルにもある「ポジティブ」さはもちろんですが、明るいだけでなくまじめさが詰まっているところも私らしい。歌詞にあるように、私もメモを取るクセがあるんです。それは自分的にはあたりまえだけど、周りからしたらまじめに見えるみたいなんです。そんな自分らしい部分が歌詞に反映されているのが、すごくうれしかったです。

ポジティブガール
¥250
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

――歌声も、とてもポップです。

ありがとうございます。ただ、レコーディングは難しかったですね。リズムもですが言葉がかなりタイトに詰まっているので、最初は苦戦しました。でも、練習の甲斐あってスムーズにレコーディングができるようになりましたし、そこからさらには遊びも入れてみようということで、肩の力を抜いて踊るような感覚で歌ってみたりもできました。私の「楽しく歌うことが一番大切」という思いが詰まった歌になりました。

――ラストの「花香リ春薫ル」は、ゆったりとした曲調です。

リリースが春で、私も春の歌がすごく好きなこともあり、胸に染みるような歌があったらいいなと思って提案をさせてもらいました。ほかの3曲は疾走感があるので、ゆったり聞ける曲がほしかったのと、私が歩きながら曲を聞くのが好きなので、ゆったり自分の歩くテンポに合いそうなイメージで曲を作ってもらいました。元々のタイトルは「花香ル春薫ル」だったんです。でも、最初にタイトルを見たときに、私の名前の「かおり」とかけてくださっているんじゃないかと思ったんですね。作家の方に聞いたら、「そうです」と言っていただけたので、もう一歩踏み込んで「かおり」にするのはどうですかと相談をさせてもらって、「花香リ春薫ル」になりました。

花香リ春薫ル
¥250
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

――情景が浮かぶような歌詞が素敵ですよね。

最初に曲を聞いたとき、Aメロは帰り道に桜を見ながら歩いているようなイメージが浮かびました。それから、オンオフを切り替える瞬間のような感覚もあり、自分がオフになっていくような気持ちで歌っていきました。春のやさしい歌ではありますが、花が咲くときって冬を乗り越えるというプロセスがありますよね。そこで聞いてくれた人を勇気づけられたらいいなと、そんな思いで歌っていきました。

――歌詞には背中をそっと押してくれるようなワードが多いですよね。

私はマイペースなところがあるので、がんばるにしても全力なときと、ちょっとがんばるかくらいのゆるいときもあるんです。だから、前向きに一生懸命にがんばらなきゃと思うことはあってもいいけれど、いまの自分のがんばりまで否定しなくてもいいとも思うんですね。飛び越えられないなら、登ればいい、そんなエールを込めた歌になりました。

――この曲はレコーディングではどうこだわっていますか?

もっと息を出していいですと言ってもらったので、息の成分を多めにすることを大切にしました。あと、サビの明るさと憂い、暗さと明るさのバランスが難しい繊細な曲なのですが、それをうまく表現したくてたくさんのパターンをとりました。最終的に、青春感たっぷりの明るめの歌声が採用されたのですが、1番、2番、3番で温度感が違うので、聞き比べてもらえたらと思います。

――「光ったコインが示す方」はミュージックビデオも制作されていますね。

これはスタッフの皆さんが考えてくださったものに、大船に乗った気持ちで乗りました。等身大の前田が持っているコミカルさ、生配信やラジオでフリートークをしている素の前田と、アーティストとしての前田の対比がうまく描かれていてすごく素敵なMVになりました。エキストラの方やスタッフの方に助けていただき、撮影が終わるころにはみんな家族みたいな感じになりました。


前田佳織里「光ったコインが示す方」Music Video
――ビジュアルイメージは、クールな雰囲気ですね。

自分のなかにはない世界観だったので、最初はどうなるのか想像もつかなかったのですが、できあがってみると、本当に素敵だと思いました。初回限定盤は意思が感じられる正面のショットがあり、通常盤は舞台のステージと次の一歩を踏み出すステージがかかった写真を撮ってもらって。私だからこその写真になっていると思います。初回限定盤にイヌがいるのも、遊び心が出ていておもしろいんじゃないかなと感じています。初回限定盤のフォトブックには、ジャケットやアー写以外のいろんな衣装が見られるので、ぜひチェックしてほしいです。

――タイトルの『未完成STAR』にはどんな意味が込められていますか?

「ポジティブガール」のなかに、同様のワードが入っているのですが、アーティストデビューをしたときって、まだ何も先が見えていないんですよね。でも、制作をするうちにだんだんと「未完成かもしれないけどそこがよかったりもする」と思えるようになって。いまのスターだっていろんなことを乗り越えてきたはずだし、私も「いつか完成したスターになる」という思いも込めてこのタイトルに決めました。


前田佳織里 1st EP「未完成STAR」Trailer
――レコーディングを終えての発見や、思い出を教えてください。

まず、私の声は力が強くてエッジが効いているということを教えてもらいました。それから、声優として活動するようになって、バンド時代の歌のクセを一度捨てたのですが、それをもう一度拾うことができました。あのころのがんばりは無駄じゃなかったんだと思えたことが、すごくうれしいです。

――今後、どんなアーティストになっていきたいですか?

夢は大きく「ジャンル:前田佳織里」を確立したいです。私はずっと歌で背中を押したいし、応援したい。聞いてくださる人に寄り添いたいと思っているので、それが届くアーティストになりたいですね。それから、自分の好きな作品がアニメ化されるときは、その主題歌を歌いたいという野望もあります。将来的には、このタイプの作品なら前田の歌が合うとか、前田ならこの作品に合うと思いついてもらえるようなアーティストになりたいです。

――では、最後に読者にメッセージをお願いします。

アーティストデビューを発表してから、たくさんのうれしい反応もらって私も励まされています。これから応援したいと思ってもらえるアーティストを目指していきたいです。今回の1st EPのひとつひとつにいまの自分の思いをたっぷりと込めましたので、多くの方に届いたらうれしいです。

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

■Profile
前田佳織里(まえだ・かおり)/4月25日生まれ。福岡県出身。アミューズ所属。本CDでアーティストデビュー。声優としての主な出演作は、『アイカツスターズ!』双葉アリア役、『ウマ娘 プリティーダービー』ナイスネイチャ役、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』桜坂しずく役など。

■『未完成STAR』
発売中
DMM music / Astro Voice

初回限定盤3850円(税込)
通常盤1980円(税込)

自身が異世界の王女・サビーネ役で出演中のテレビアニメ『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』のオープニング主題歌「光ったコインが示す方」を含む、全4曲収録。初回限定盤には、同曲のミュージックビデオやメイキング映像を収録したDVD、40Pのスペシャルフォトブックレットを同梱。通常盤には、トレーディングカード(全5種から1種類がランダム)を封入。

《アニメディア編集部》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集