「どんなに技術が進歩しても人と人との摩擦で人は悩む」声優の悠木碧が映画「ぼくらのよあけ」で感じたこと【インタビュー】 | 超!アニメディア

「どんなに技術が進歩しても人と人との摩擦で人は悩む」声優の悠木碧が映画「ぼくらのよあけ」で感じたこと【インタビュー】

劇場アニメ『ぼくらのよあけ』より、ナナコ役・悠木碧さんのインタビューをお届け。

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  • (C)今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会
「月刊アフタヌーン」で連載されていたSFジュブナイルマンガ『ぼくらのよあけ』が劇場アニメ化。2022年10月21日(金)より全国で公開される。

本作の舞台は、西暦2049年、人工知能を搭載したAIロボットが日常にいる世界。阿佐ヶ谷団地に住んでいる小学4年生の沢渡悠真は、間もなく地球に大接近する“SHIII・アールヴィル彗星”に夢中になっていた。そんな時、沢渡家の人工知能搭載型家庭用オートボット・ナナコが未知の存在にハッキングされる。「二月の黎明号」と名乗る宇宙から来たその存在から届いたメッセージは、「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」。子どもたちの極秘ミッションが始まった。

本作でナナコを演じるのは、声優の悠木碧さん。作品でロボット役を演じるとき、「どのくらい高度な文明で作られているか」を意識するという彼女は、人間のように会話ができるナナコをどのように表現したのか。作品への印象や、本作を通じて感じた「人間関係」についてなどを含めて、お話を聞いた。

[取材・文:M.TOKU 撮影:吉野庫之介]


ナナコ役・悠木碧【画像クリックでフォトギャラリーへ】

声優の仕事は絵と脚本を齟齬なく埋めること


――原作を読んだときの印象を教えてください。

 「未知の存在」が出てくるとなると戦いを想像してしまいがちなのですが、この作品は悪意を持って誰かを傷つけるようとする存在が出てこないんです。「未知の存在がいたらこうであって欲しい」という要素が詰まっている物語にときめきました。本作におけるSF要素は、人間の人間らしさを際立たせるための仕組みである気がしていて。ナナコや「二月の黎明号」は、人の人らしさを表現するための対比物として存在していると感じました。彼らがいることで、人間っぽい匂いがお話の中に残っているという印象を受けたんです。

――続けて、完成した作品を見た感想を教えてください。

 見たことがあるような風景と未来が混ざった「ありえるかもしれない未来」が広がっていて、ワクワクしました。映像表現では、水や夜空の絵も美しくて印象的でした。これは聞きかじった程度の話なのですが、アニメーションで水を表現するのって、すごく難しいらしいんです。だから私は、水が綺麗に描かれている作品は、描いている方々もより力を入れていると思っていて。この作品はまさに水の表現が美しくて、絵でも感動してもらおうという情熱を感じました。あとは音楽。グッと情緒を連れていってもらいました。アニメーションって総合芸術だと思うのですが、本作はバランスが絶妙です。





――本作に出演するにあたって寄せられたコメントで、「ロボット系の子を演じるときって、その子がどのくらい高度な文明で作られているかによって、ロボ度が変わる」とおっしゃられているのが印象的でした。今回はどのくらいのロボ度で演じましたか?

ナナコはハイテクノロジーではありますが、ロボ度は低めで演じました。実はオーディションのときは、もっとロボ度が高かったんです。ただ、実際にアフレコ現場で色々と試した結果、スタッフさんから「あんまりロボらしくしなくていいかも」というディレクションを受けたんです。ナナコは人間のように会話ができて、コミュニケーションを取る過程で人間と同じように自分が見えてくるオートボットなんですよね。だから、ロボらしくしなくてもいい、という方向性になったんだと思います。あとは、(沢渡悠真を演じる)杉咲花さんが引き算の生っぽいお芝居をされていたので、それなら声優の私が何をやってもわりとロボっぽく聞こえる気がして。他の出演キャストもナチュラルなお芝居も得意な方が揃っている印象を受けたので、そのバランスも考えて今回はロボ度を高くしませんでした。



――同じロボット役を演じる場合でも、文明度や、何のために作られたのか、存在しているのかによって演じ方も変わるんですね。

 アニメーションの場合は絵柄によって変わるときもあります。とはいえ、セオリーみたいなものも重要ではあって。例えばネズミに声をあてるとなったとき、体が小さいから高い声が出そうだし、心拍が早いから早口になりそうじゃないですか。象は大きいからその逆。そういう物理的なイメージに則ったほうがキャラっぽくはなると思うんですよね。現実には存在しないキャラクターを演じるなら、あるものに即した方がイメージもしやすくて違和感が生まれにくいとは思います。

――一般的なイメージと逸脱し過ぎると、それが違和感になってしまう。

 見てくださるみなさんに、いかに違和感なく絵と文章を届けるのかが、アニメーションは大切だと思います。声優って、キャラクターに寄せることも重要ですが、絵と脚本を齟齬なく埋めることも仕事のひとつだと最近は感じていて。作品によっては、クールなキャラクターがツインテールな場合もあるし、ボーイッシュなルックスだけどかわいい語尾の子もいますよね。そういう絵と脚本・設定の齟齬をシームレスにして違和感を出来るだけなくすのが、我々の役割のような気がします。



どんなに技術が進歩しても、人と人との摩擦で人は悩む


――演じるナナコの印象について教えてください。

 生真面目でちょっとおせっかいで、悠真さんが大好き。世話焼きな妹みたいな感じで家族として溶け込んでいるところが好きです。そこがこの子を読み解くポイントかなとも思いました。Google HomeやAlexaがもっと生活に馴染むと、ナナコのように家族みたいな存在になるんでしょうね。もしかしたら、それが、人がAIに望んでいることなのかも。

――もし悠木さんが子供の頃にナナコみたいなロボットと生活できていたとしたら、どんなことを一緒にやりたかったですか?

 子供のころから博物館や美術館が好きなので、そういうところに一緒に行きたかったです。ナナコがいれば色々と教えてもらえるだろうし、絵や展示物を見た感想も言ってくれるだろうし、きっと楽しかっただろうなぁ。ナナコと私だけで遠方まで旅行することもできたかも。やりたいことは、本当にたくさんありますね。

――もしかしたら、人格形成にも影響があったかもしれないですね。

 絶対にあったと思います。私は一人っ子なので、兄弟のような存在に近いナナコがいたら、だいぶ違った性格になっていたかも。これは聞いた話なのですが、ある家族が旅行に行くとき、お子さんが「Google Homeのお姉さんも連れて行きたい」と泣いたらしいんです。Google Homeには読み聞かせ機能なども付いているから、きっと毎晩一緒にいるんでしょうね。その子からしたら「Google Homeのお姉さん」は家族なんですよ。オートボットはいわばそれの進化系みたいなものだから、本当に人格形成に関わってくると思います。





――ここ数十年でいえば、コミュニケーションツールの発達も人格形成に影響しているかもしれません。それゆえの悩みも出てくるんだろうなと、この作品を見ながら思いました。

 そうですよね。この作品でいえば、(岸)わこちゃんがSNSのことで苦しんでいます。どんなに技術が進歩しても、人と人との摩擦で人は悩むんですよね。

――確かに。そして、人間関係で悩むのは思春期や大人だけじゃない。

 そうですね。子供がいることによって生まれる摩擦もあれば、大人になったから抱える摩擦もあります。関わる人数が増えれば増えるほど、相手の立場やステータスがどんなものであれ、摩擦は起きるんです。それが好転するかどうかは本人とタイミング次第。この作品は、どんなに技術が発達しても、人間は良くも悪くも変わらない部分もあるということを、もう一度深く考えさせられるきっかけにもなる気がしました。





――悠真は“SHIII・アールヴィル彗星”に夢中になっている少年ですが、悠木さんが幼少期に熱中していたことは?

 お絵描きかなぁ。あとは、子供のころはわりと外に出て遊ぶ人だったので、秘密基地とか作っていました。友だちのおじいちゃんが山を持っていて、「使っていいよ」と言われた木で秘密基地を作っていましたね。冬場は滑れる氷を探しに出かけていました。

――子役としても活躍されていましたが、その傍らで。

 外に出て遊ぶと日に焼けてしまうので、当時の事務所からは「また外で遊んできて!」と怒られていました(笑)。懐かしいなぁ。

――貴重な思い出話ありがとうございます!最後に、改めて本作の注目ポイントを教えてください。

 多方面から「未来が楽しみだね」と語りかけてくれるような作品です。大人が見ても、子供が見てもグッとくるポイントがあると思うので、ぜひ見に来ていただけると嬉しいです。



『ぼくらのよあけ』作品情報
2022年10月21日(金)公開
【STAFF】
原作:今井哲也 「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
監督:黒川智之
脚本:佐藤 大
アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザイン:pomodorosa
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦
虹の根デザイン:みっちぇ
音楽:横山 克
アニメーション制作:ゼロジー
配給:ギャガ/エイベックス・ピクチャーズ

【CAST】
杉咲 花(沢渡悠真役)
悠木 碧(ナナコ役)
藤原夏海(岸真悟役)
岡本信彦(田所銀之介役)
水瀬いのり(河合花香役)
戸松 遥(岸わこ役)
花澤香菜(沢渡はるか役)
細谷佳正(沢渡遼役)
津田健次郎(河合義達役)
横澤夏子(岸みふゆ)
朴 璐美(二月の黎明号役)

主題歌:三浦大知「いつしか」


(c) 今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会
《M.TOKU》
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