豊永利行10周年記念アルバム「Charactanswer」インタビュー「演じたキャラクターたちに綴る“アンサー”」 | 超!アニメディア

豊永利行10周年記念アルバム「Charactanswer」インタビュー「演じたキャラクターたちに綴る“アンサー”」

豊永利行が最新アルバム『Charactanswer』を11月29日(水)にリリース。役者だからこそ、そしてシンガーソングライターだからこその視点で制作された楽曲は、比類なきものばかり。どんな思いで制作を行ったのか、話を聞いた。

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豊永利行が最新アルバム『Charactanswer』を11月29日(水)にリリース。自身のアーティストデビュー10周年を記念して制作したアルバムに収録されているのは、豊永がこれまでに演じてきたキャラクターたちへのアンサーソングだ。

役者だからこそ、そしてシンガーソングライターだからこその視点で制作された楽曲は、比類なきものばかり。どんな思いで制作を行ったのか、話を聞いた。なお、本インタビューのアナザーバージョンが12月8日発売の『声優アニメディア』に掲載されているので、そちらもチェックをしてほしい。



演じたキャラクターたちに綴る“アンサー”


――まずは、アルバムを制作することになった経緯について教えてください。

豊永:2021年に行った『表裏一体』というライブの辺りから、次にどんな曲を作ろう、自分にしかできないアルバムって何だろうといろいろ考えていました。そんなときに、いままでキャラクターソングは歌っていても、キャラクターに向けて曲を書いたことがないなということに辿り着いて。それなら、演じたからこそ書けるキャラクターのアンサーソングという形で、曲を作ってみようと思ったんです。制作で一番大事にしたのは、キャラクターソングにしないこと。キャラクターとしてではなく、あくまで豊永利行として思いを伝えるということは気をつけました。

――アルバムに収録されている7作品のキャラクターは、どのようにチョイスされたのでしょうか。

豊永:ファンクラブ内で密かにアンケートを取ったんです。何のアンケートなのかは明記せずに、僕が演じてきたキャラクターの中で好きなものを3つ選んでください、って。その結果を参考に、キャラクターと音楽性のバランスなどが偏らないように考慮しながらピックアップさせていただきました。

――キャラクターの曲を作ると伝えたときの各製作委員会のリアクションはどうだったのでしょうか。

豊永:キャラクターへのアンサーソングを作るというのは前代未聞なので、多くの委員会で『初めてのことなので各所に確認します』という感じでしたが、皆さんがすごく好意的に受け止めてくださったことは本当にありがたかったです。マネージャーが一生懸命各所に確認を取ってくれて。それは、本当に大変だったろうと思いますし、“また俺、大変なこと思いついちゃったな”と思いました(笑)。

――(笑)。では、表題曲『Charactanswer』について。制作はどのように進めていったのでしょうか。

豊永:この曲を始めて披露したのは、昨年行った9周年のライブのダブルアンコールのとき。その時点で自分の頭の中ではアルバム全体のテーマを決めていたんですけど、ライブを聞いた皆さんには“キャラクターへのアンサーソングを綴った歌“ということしか伝えていなくて。だから、まさかアルバム全曲がキャラクターへのアンサーソングになっているとは思いもよらなかったと思います。きっと、サプライズになったのではないでしょうか。

――アルバムの全容が決まっていない中で、表題曲を作るのは大変な作業だったのでは?

豊永:今回の収録曲のキャラクターに限らず、僕がいままでに演じてきたすべてのキャラクターのことを包括して書いた曲ですから、大変ではありませんでした。歌詞は自分だけでなく誰にでも当てはまる間口の広さを考えながら書いたので、誰が聞いても感じるものがあると思います。

――収録曲について、作品の簡単な内容と曲作りについてお話を聞かせてください。最初の『Introduction -Charactanswer-』はアレンジが効いていますね。

豊永:次のトラックに収録されている『氷上の翼』が現状では歌から始まる曲なんですが、初期の制作段階ではイントロがあったんです。スタッフ達の間でイントロがあったほうがいい派とイントロなしで歌から始まったほうがいい派に意見が分かれて、どうしようか考えた結果、どちらもやろうということでこの『Introduction』が生まれました。通して流せばイントロ込みの『氷上の翼』として聞けますし、『氷上の翼』のみを流せば歌始まりで聞けます。ただ、イントロだけで構成するととても短かったので、『Charactanswer』のフレーズを前部分に足して完成させました。

――『氷上の翼』(『ユーリ!!! on ICE』勝生勇利への楽曲)はどのように制作されたのでしょうか。

豊永:『ユーリ!!! on ICE』はフィギュアスケーターを題材にした物語。作品の中で勇利くんがパフォーマンスをする『Yuri on ICE』というプログラム曲のイントロに繋がるように、この曲を作っています。制作するうちに作品でディーン・フジオカさんが歌うオープニングテーマの『History Maker』とも繋がりを持たせたいという欲が出てきて、『History Maker』のある一部の歌詞に対して、“Could we have made history?(僕たちは歴史を変えることができましたか?)“というギミックを入れました。『ユーリ!!! on ICE』はすごい熱量を持って応援してくださる方がたくさんいらっしゃるので、作品を応援してくださっている皆さんにも届いたらいいなという思いも込めています。



――『Wind and Sunlight』(『風が強く吹いている』清瀬灰二への楽曲)は?

豊永:『風が強く吹いている』は、箱根駅伝を目指す大学生たちの話です。主人公の蔵原走(カケル)にとって僕が演じる清瀬灰二(ハイジ)は太陽のような存在で、ハイジにとっての向かい風がカケルにとっては追い風になっているというイメージを持って制作しました。そういった走者たちの思いや関係性が襷とともに繋がれていって一つの物語になっているという構成にしたくて、2コーラス目に1区から10区までの走者たちのことを書いています。それと、襷を繋ぐとともに走者の魂を背負っていくということを表現するために、Dメロではハモリを一声ずつ増やしているのも特徴です。



――『Hot location』(『Free!』椎名旭への楽曲)はジャズサウンドが印象的です。

豊永:僕が演じさせていただいた椎名旭くんは、初登場の『映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』では中学生で、その後TVアニメの第3期で大学生になって登場します。『映画ハイ☆スピード!』での彼は主人公の七瀬遙に出会って本当の天才を目の当たりにして一時期泳げなくなってしまうんですが、そこから見事に立ち直るんです。僕の中に一番強く残っているその印象を落とし込もうと、この曲を書きました。トラウマやネガティブなものを抱えて現代を生きる、誰かの背中を押せるような曲にもなっていると思います。



――4曲目『エンジョイ!!!』(『ツキノ芸能プロダクション(『ALIVE』)』大原空への楽曲)は疾走感溢れるバンドサウンドですね。

豊永:そうですね。アイドルユニットが多く登場する『ツキプロ』の中で大原空くんがリーダーを務めるSOARAはバンドユニットなので、バンドサウンドは外せません。空くんは表面上は明るいんですがある黒歴史を抱えていて、それを支えてくれたのが同じバンドのメンバーたち。彼がちょっとずつ前を向いていく機微を曲に乗せられればいいなと、曲を書き上げました。SOARAはすでにたくさんの曲をリリースしていることもあって、彼らのサウンドの構成に倣って曲の頭に“la la la”というコーラスを入れたり、アウトロにフェイクを入れたりしています。『ツキプロ』のキャラクターたちはリアルタイムで年を重ねていくので、歌詞にその感じを出すワードをチョイスしているのも聞きどころです。



――『Genius reading session』(『A3!』有栖川誉への楽曲)の曲にはたくさんの仕掛けがあって驚きました。

豊永:役者育成をするアプリゲーム『A3!』で、有栖川誉くんは天才と言われている詩人。彼はよく「詩の朗読会に来てくれたまえ」と言うんですけど、実際に詩の朗読会を見たことがないので、それなら僕が朗読会をしてあげようと思って書いた曲です。歌詞にゲーム内で誉くんが綴った詞を引用しているので原作会社さんに確認を取りつつ、新たに書いた歌詞もあります。ずっと同じ曲調を歌い続けるのは彼らしくないだろうと一つの曲の中にいろいろなワールドミュージックを盛り込んだんですが、これがめちゃくちゃ大変な作業でした。僕の中のあらゆるワールドミュージックを絞り出し、時には調べ、タンゴ、ポルカ……いろいろ織り交ぜています。



――続く『non-Toxic』(『B-PROJECT』金城剛士への楽曲)についても教えてください。

豊永:アイドルプロジェクト『B-PROJECT』に登場する金城剛士くんは、THRIVEという3人組のグループを組んでいます。金城くんは音楽へのこだわりが非常に強く、THRIVEの曲はどれもアーティスティックな思考のものばかり。それで、グループではできない頭を振りまくれる曲を作ろうと思って、ゴリゴリのハードロックにしました。これはキャラソンがある他のキャラクターにも当てはまることなんですが、レコーディングではすごく歌いやすかったです。冒頭にお話ししたようにキャラクターを乗せて歌っているわけではないんですけど……。それがとても不思議でしたね。



――『碧の勇気』(『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ポップへの楽曲)は、スケールの大きさを感じます。

豊永:僕は演じたキャラクターに優劣をつけないこと、すべてを平等に大切にすることを大前提として持っているんですが、『ダイの大冒険』は子どもの頃熱狂的に好きだった作品なので、最初に歌詞を書いたときはいまの1.5倍くらいのボリュームになってしまってどうしようかと思いました(笑)。僕が演じるポップは、魔法使いの男の子。臆病者で何か起きるとすぐに逃げ出してしまうんですが、ダイくんと出会って冒険をしていくうちにパーティーのブレインを担うまでに成長するんです。歌詞にはそんな彼の姿を落とし込んでいます。タイトルの漢字の読み方は“みどり”。彼が身に着けている“アバンのしるし”が緑色に光ること、そしてダイくんのアバンのしるしが青く光るという意味を込めて、“みどり”とも“あお”とも読めるこの漢字にしました。

――物語の壮大さは曲からも伝わってきます。

豊永:1991年版のアニメでは劇伴をすぎやまこういち先生が、2020年版では林ゆうきさんが担当されていて、どちらもリスペクトしたいという思いから冒頭部分はすぎやまこういち先生の音楽の構成を意識しつつ、サビで林ゆうきさんの音楽に繋がるようにコード進行とスケールを考えて作りました。アレンジもこだわりたくて、収録曲の中で一番リテイクを重ねています。サビの後ろに流れているオペラ調のコーラス部分は、ぜひボリュームを上げて聞いていただきたいです。



――豊永利行オンラインストア限定販売(11月1日発売)の先行限定盤には、ボーナストラックとして『This 15 Host Song』(『Original Entertainment Paradise -おれパラ-』ホストをイメージした楽曲)が入っています。とてもインパクトのある曲ですね。

豊永:おれパラにはこれまでに5回ゲストとして呼んでいただいて、その都度、僕なりにいろいろな爪痕を残し、勝手に準レギュラーを名乗っています(笑)。昨年(2022年)おれパラが15周年を迎えたとき、ホストの鈴村健一さん、小野大輔さん、森久保祥太郎さん、寺島拓篤さんがライブ内でいろいろスペシャルな施策をされて。僕はゲストなので普通にしていればよかったんですけど、ホストの皆さまにはお世話になっていますし、せっかくなら15周年らしいセットリストにしたいと考えてこの曲を作って披露しました。ホストメンバー皆様に向けたアンサーソングなので、同じ“アンサーソング”繋がりで、『Charactanswer』の先行販売盤のボーナストラックとして収録することにしたんです。

――さて、豊永さんは今年でアーティストデビューをして10周年。この10年を振り返って率直にどのようなことを感じますか?

豊永:もう10年経ったのか、という感じです。10年経っている感じはまったくなくて、個人的な体感はまだ5年くらい。まだまだやりたいことがあるので、あっという間に時間が経ってしまうことを踏まえていろいろ考えないといけないなと思っています。

――この10年で、音楽との向き合い方や作り方で変わったものありますか?

豊永:僕は小学生の頃に趣味で友達とゲームを作っていた時期があって、ドット絵を打つのが好きだった友達はグラフィックを、音楽を作るのが好きだった僕は打ち込みでゲーム音楽を作っていました。ありがたいことにアーティストデビューをさせていただいて自分で曲を書くようになったとき、そういった背景があってか、最初の頃は作る曲がゲーム音楽っぽくてボーカルが乗りにくかったんですよ。それからこの10年間、いろいろな曲を制作したり、触れたりするうちに、ちょっとずつ自分の中の音楽の癖みたいなものが変わってきた感覚があります。ただ、いまも昔も変わっていないのは、自分の書いた曲が一番歌うのが難しいということです。ある意味、自分が書いた曲に鍛えてもらっているのかもしれませんね(笑)。




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