VALSHE、アルバム『PRESENT』と10周年に寄せる想いを語る【インタビュー】 | 超!アニメディア

VALSHE、アルバム『PRESENT』と10周年に寄せる想いを語る【インタビュー】

9月にメジャーデビュー10周年を迎えるVALSHEが、4月1日に2年8カ月ぶりとなるアルバム『PRESENT』をリリース。楽曲に込めた思いなどを聞いたインタビューが、アニメディア5月号に掲載。超!アニメディアでは、本誌 …

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 9月にメジャーデビュー10周年を迎えるVALSHEが、4月1日に2年8カ月ぶりとなるアルバム『PRESENT』をリリース。楽曲に込めた思いなどを聞いたインタビューが、アニメディア5月号に掲載。超!アニメディアでは、本誌に掲載しきれなかったぶんを含めた特別版を公開。歌詞に込めた気持ちや10周年に寄せる想いなど、話を聞いた。


みんな海賊団の一員になって声を出してほしい

ーー今作『PRESENT』のタイトルは、「現在」を意味しますが、どういうことをテーマに制作したのですか?

 テーマはふたつあって、ひとつは現在の自分の考えや思いをできる限りタイムラグ無くみんなに届けることです。今までの作品は、前々から考えていたテーマを作品としてリリースするという流れが多かったので、最初にテーマなどを考えたときからみんなに届くまでの間には、当たり前だけどタイムラグがありました。できるだけ今の自分の感覚を聴いてくれた方にも共有したいと思って。リアルタイムの自分の考えや提示したいことが乗ったVALSHEの音楽作品を、ノータイムでお届けすることを大事にしました。

ーーもうひとつは?

 もうひとつは、「自分たちの歌」を作るということです。今までの作品は、自分視点の歌詞が多くて、「自分はこう思うけどみんなはどう思いますか?」という提案や、「あなたはこう思っているんじゃないかな?」という問いかけの楽曲が多かったんです。アコースティックライブツアーではファンとの距離をより縮めることができたし、インストアライブでは一人一人のダイレクトな言葉で相互の関係性に一層自信を持つことができて、そういった経験から、「自分たちの歌」と呼べる楽曲を意識して作りたいと思いました。

ーー「自分たちの歌」というテーマ性は、「海賊讃歌」がまさにそうですね。VALSHEさんと聴いてくれるみんなが、同じ船に乗っているクルーだと感じさせてくれます。

 VALSHEのオフィシャルファンクラブの名前が「OVER THE HORIZON」で、海や船をモチーフにすることが多いんです。海にVALSHEという船があることを想像すると、きっときれいな豪華客船ではないよなと思いました(笑)。みんなで仲良く楽しくというだけじゃなくて、それぞれが自分の人生を持っていてそこに誇りとプライドを持っている、あくまでも個が集まった集団なのではないか、と。ファンとアーティストという関係性はあるけれど、VALSHEを含むそれぞれが同じように個として成立していて、ひとつの場に集合したときに、それぞれが最大値をたたき出せるような関係なんじゃないか。それは昨年のツアーを通して感じたことで、そういう個があるからこそ成立する全の形は、どちらかといえば海賊が合っているよなと思って。

ーー有名な某海賊一味も、それぞれが違う夢と目的を持っていて、それを果たすために一致団結していますからね。

 仲間同士の助け合いや絆は、自分のなかでは個々が自立していて初めて成立するものだというイメージがあって、それは受け取ってくれる人もきっと同じじゃないかなと思っています。誰かが誰かの夢や目標にべったり付いていくのではなく、自分は自分で頑張って、何かがあったときは助け合える。そういう関係がいいなと思うし、メッセージとしても加えています。


ーーかけ声をかけるパートもあるので、ライブで盛り上がる。

 みんな海賊団の一員になって声を出してほしいです。

ーーそれに向けて海賊グッズを作ったほうがいいですよ。

 バンダナとボーダーのTシャツを作って、ライブでみんなが着てくれたら面白いかもしれないですね(笑)。

ーーVALSHE海賊団には鉄の掟とかあったり?

 自分のことしか考えない人は即破門です!

ーー昨年リリースしたシングル『「SYM-BOLIC XXX」』と「紅蓮」も収録していて、『「SYM-BOLIC XXX」』は記念すべき通算100曲目の楽曲とのことで、奮い立たせるような強さがありますね。

『「SYM-BOLIC XXX」』は通算100曲目であることを意識して、アーティストとしていちばん大事にしていることを詰め込んだ曲なので、自分でも歌っていて奮い立つような気持ちになりますし、みんなが生きる上での大きな盾になればいいなと思って作りました。

ーーでも100曲ってすごいことですよね。

 数字にするとすごいことですけど、たくさん作ってきたという感慨もあれば、「もう100曲なんだ〜」という他人ごとのような感覚もあって、少し不思議な気持ちでした。

ーー100曲目って、1曲目とはどんな風に違いますか?

 デジタルロックというサウンドの軸は変わらずですけど、曲を経るごとにさまざまな音やアイデアが加わって、レベルアップしているなと思います。でも歌詞は、まったく変わっていないなと思いますね。ただ歌の面では、デビューシングルなどを聴き返すと、肩に力が入っていて、とくに初期のバラード曲は緊張して歌っていることが伝わってきます。今では力の入れどころもわかって、そういう経験を積んだことによるいい変化はたくさんあります。

基本的に楽しいだけの人生は無いと思っている

ーー収録曲の「PRIMARY RULE」はダークな雰囲気で、とてもシリアスな曲だと思いました。この曲を作るきっかけはありましたか?

 自分は子どものころから音楽が好きで、子どもなりに歌詞を一生懸命解釈しながら読んで音楽を楽しんでいたんですけど……あるとき、「この音楽は自分を受け入れていない」と感じたことがあって。「音楽にはじかれた」と言うか。そのときはちょうど自分が、いわゆる夢や希望といったものに対して向き合えずにいたときで。今まで楽しかったはずの音楽を聴いて、逆につらくなってしまって。それでそのころは、映画のサウンドトラックなどインスト曲を聴きながら、自分のなかで勝手に歌詞や言葉を想像して楽しんでいたんです。そういう経験もあったことから、聴く人を選ばない言葉を発信したいという思いで作った楽曲です。

ーーDメロの前にデジタル加工された声が入っていますが、これは何か意味のある言葉を言っているのですか?

 聴こえるかどうかギリギリのラインで入れているので、一度聴いただけではわからないと思いますが、イヤホンやヘッドフォンで何回も聴いているうちにわかってくるんじゃないかと思います。そういう宝探しのようなアイデアを楽しんでくれるファンも多いので、ぜひ何度も聴いてみてほしいですね。

ーーまた「箱庭シンドローム」はドラマチックな楽曲で、孤高のピアニストが出てきたり、歌詞を何度も読んで物語を想像する楽しみがありますね。

 そうですね。フィクションのシチュエーションを想像させるんですけど、その根底にあるのは囚われた価値観からの解放や、自分のなかにできあがってしまった常識の壁を壊すことの難しさなど、リアリティがあります。それこそ聴く人の状況によって、日によって見える色や景色が変わるんじゃないかって思います。その点ではすごく自由度が高い曲になりました。

ーーリード曲の「ACE of WING」ですが、このタイトルはどういう意味で付けたのでしょうか。

 タロットカードの種類に「ACE of WANDS」というカードがあって。タロットは正位置と逆位置で意味が変わるのですが、情熱や理想、前向きな希望といった意味を持っています。書きたいと思っていた歌詞ともマッチしたので、タイトルはそこから着想を得て「ACE of WING」と付けました。VALSHEサウンドの王道を踏襲するデジロックナンバーですけど、メタルの要素も加わって、新たな血の通った楽曲になったなと思います。

ーー歌詞に〈「今日のおまえの死を明日のおまえが必ず報え」〉というフレーズが出てきますが、ここにはどんな気持ちを込めていますか?

 自分の意思や感情を閉じ込めることをよく「自分を殺して生きている」なんて言いますが、自分自身も「今日は自分を何人殺したかな?」って考えることがあって。なぜ自分を殺すのか? それは、そうすることでなんとか今日を生きながらえているとも言えるし、ともすれば明日に繋がると思っているからだし、明日を生きたいと思っているから。「明日を生きるために今日の自分を殺す」ということは、とても矛盾に満ちているのですが、そんな矛盾を押してまで、明日を諦めてはいないし、ヘイトをため込みながらも、どこかで明日に期待をしながら必死に生きているということ。
 だからこそ今日殺した自分に報いたいし、それができるのはやっぱりきっと自分だけ。同じように思いながら、努力している人や負けないように頑張っている人はたくさんいるんじゃないかなって思います。幸せの在り方は千差万別だけど、形のないものに対して情熱を注げるのが人間です。歌っている自分もそうでありたいと思っているし、聴いてくれる人にとっても、「自分たちの歌だな」って思ってもらえるようにと願って作っています。

ーー『PRESENT』は、とても格好いいアルバムになりましたね。ロックとデジタルが融合したサウンド、海賊が出てきたりピアニストが出てきたりといった物語性のある歌詞、早口でまくしたてるようなメロディなど、いわゆるJ-POPの楽曲とは一線を画した楽曲が満載で、ネット界隈のユーザーにはとても親和性が高い要素が詰まっています。そして根底には、背中を押してくれるメッセージもあって。歌詞のワードや曲のテーマは、普段読んでいる本などから影響を受けているのですか?

 本や映画が好きなので、そういうところから影響を受けることも多いです。作詞のときに映画のサウンドトラックなどインスト曲を聴いて、音に触発されて言葉が浮かんだりもします。気になる言葉に出会ったらそのつど調べてメモしておいたり、あとは歌詞を書きながら調べたりといった感じですね。いろんな情報をインプットしながら、しっかり自分のフィルターを通したものにしたいので、語彙を増やしたいと常日頃から意識しています。

ーー映画は、どういうジャンルが好きなんですか?

 ホラーは怖がれないのであまり興味がなくて、サスペンスものか、すごく心あたたまる動物映画です(笑)。たとえばサスペンスの王道で『セブン』とか、『ショーシャンクの空に』はヒューマンものの王道で好きです。それに『シャッターアイランド』のような、何度も観ないとわからないような映画が好きで、映画に限らず小説でも漫画でも、伏線が何重にも張られたような作品を見つけたら絶対観ちゃいます。何かオススメがあったら教えてください。

ーー9月にVALSHEとしてのメジャーデビュー10周年を迎えるとのことで、何か思うことはありますか?

 この10年はすごく大変で、それと同じくらいすごく楽しかったです。基本的に楽しいだけの人生は無いと思っているので、大変さも含めて楽しかったな、と。10周年までまだ期間もありますが、「10周年だ、わーい! やったー!」みたいなテンション感ではないですね(笑)。でも10周年イヤーだからこそできることや、応援してくれる人に返せるものがたくさんあると思っています。
 その一環として、先日“VALSHE POP UP SHOP「PRESENT BOX」”が立ち上がっていて、それもアニバーサリーイヤーだからできたことなので、この機会にいろいろなことをやりたいと思っています。と言っても、10周年イヤーだからと何でもかんでもやるのは違うと思うので、あくまでも今後につながることができればと思っています。そんな10周年イヤーの第一歩として、こういうアルバムが作れたことに、自分はとても満足しています。これからまだまだいろんな企画を発表していくので、楽しみにしていてください。

取材・文=榑林史章

アルバム『PRESENT』情報 
【発売日】発売中
【価格】
初回限定盤:4,290円(税込)
通常盤:3,300円(税込)

『PRESENT』初回限定盤

『PRESENT』通常盤

《超!アニメディア編集部》
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