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映画『響-HIBIKI-』監督・月川翔が語る女優・平手友梨奈のおそるべき才能「平手さんが辞めたら一生できない映画です」【インタビュー】

2018/10/9


 「ビッグコミックスペリオール」(小学館)にて連載中で、2017年に「マンガ大賞」を受賞した「響〜小説家になる方法〜」が実写映画化。その監督を務めた月川翔のインタビューが、「アニメディア10月号」に掲載中。超!アニメディアでは、掲載仕切れなかった部分を含めたロング版をご紹介。

――ますは、本作の監督を務めることになった経緯を教えてください。
 プロデューサーの方から「『響』というマンガを実写化しませんか」というお話をいただきました。「どんなお話なんですか?」と尋ねると「15歳の少女の作品が芥川賞と直木賞にノミネートされる話」だと。内心「それ面白いのかな?」と思いつつ読んでみたら、とても面白くて。説明が難しいお話なのですが、映画にしたら楽しんでもらえると思い「ぜひやりたい」と返事をさせていただきました。ただ、この面白さをどう伝えればいいのか分からない、というのが最初の印象でした。

――実写化するにあたり、監督が大切にした点を教えてください。
 原作は、響と出会った人がどんどん変わっていく話だと思うんです。それを一本の映画にするときに、響の暴力的なシーンばかりをピックアップすると、響がとんでもないモンスターになってしまうんです。では、なぜ原作ではそうなっていないかを考えると、「よいものはよい」と認めたり、尊敬する作家には素直に接したり、普通の15歳の女の子である姿が描かれているんですね。そういう瞬間を逃さないようにしようと思いました。

――その意味では動物園のシーンでの響のやわらかい表情が印象的でした。
 まさにあのシーンは、平手(友梨奈)さんが提案された場面で、当初は台本から外れていました。リハーサルに入る前に僕と話がしたいとのことで、台本のしっくりこない箇所を頭から確認して。平手さんが「私、高校生ですよね? でも、ずっと大人と戦ってますよね。これでいいんでしょうか?」と言ったんです。「賞を獲るか獲らないかを中心に物語が進んでいくけど、響は興味ないと思うんです」って。確かに原作はそうだったんです。でも脚本だと、その要素は描かれていなかった。それで彼女が原作の動物園のシーンを入れた方がいいんじゃないかと提案してきて、僕はすごく納得できたんです。きっと、平手さんが原作を読んだときにいいと感じたものが、映画にしたときに欠けてるという感覚があったんじゃなないかと思います。それをどう表現したらいいか解決策を一緒に考えていきました。

――演者側からそういうアイディアが出てくることは多々あるのでしょうか?
 平手さんは言葉数は少ないけど、出てくるものは芯を捉えているんです。でも僕は悩むこともけっこうあって。たとえば記者会見のあと、コートを北川さん演じる花井ふみに「これありがとう」と返すシーンがあるんですが、「これありがとう」でいいのかなって僕が悩んじゃったんですよ。そしたら平手さんが「だったら、『今日はありがとう』」にしますと言ったんです。「それくらいの改変か」と思われるかもしれないけど、僕にとってはだいぶ違っていて。「これありがとう」だとひとつの意味にしかならないことが、「今日はありがとう」にすると、自分を守ろうとしてくれたこととか、全部ひっくるめて「ありがとう」になるんです。言葉を紡ぐ天才と呼ばれている響を演じる彼女が、最小限の言葉で深い意味に変えちゃう案をパッと出してくれて、この人ほんと天才だな…とめちゃくちゃ感動したんです。

――平手さんは映画初出演初主演とお聞きしましたが、響役に平手さんを抜擢した理由は?
 最初の打ち合わせで既に平手さんの名前が挙がっていたんです。僕は女優さんしか候補に考えていなかったけど、彼女の予定調和じゃない感じに惹かれて、賭けに出る気持ちでオファーさせていただきました。正直、クランクインするまでは本当に不安で。リハーサルでも「ふたりで話したいです」と言われて、なかなかリハーサルにたどり着かない時期があったんです。平手さんが演じる響を誰も一回も観たことがないけど、このままクランクインして大丈夫かな、という不安があって。でも始まってみると響でいるのが当たり前という感じになって、すごくやりやすかったですね。平手さんが「辞めます」と言ったら一生映画化されないと思った。そのくらい、他にできる人はいないと思います。


――監督はこれまで多くのマンガ原作の実写映画を手がけていますが、マンガやアニメはふだんからご覧になりますか?
 最近、1歳10か月の娘が『となりのトトロ』をリピート再生するのですが、何度観ても面白いですね! すべての映像文法に納得でき、毎回感動します。『トトロ』も、面白さを説明しづらい作品だと思っていて、きっとセリフだけおこしても面白くないと思うんです。でも、アニメになると面白い。これが豊かな表現ということなんだなと。昔、宮崎駿さんのドキュメンタリー番組で「わかっていることを伝えるだけだと伝達になってしまう。わからないことを伝えようとするから表現になるんだ」というようなことをおっしゃっていて。いつかそんな作品を作ることができたらと思いながら観ています。家で観ているときも、奥さんと「わざとつまらなくなるセリフを足してみよう」と言って、あえて説明的なセリフを追加するゲームをやっているんです。そしたら、「脚本打ち合わせのときって、こうなってない?」ってことに気が付いたんです。つい、これじゃ伝わらないかもしれないから全部説明しようと、モノローグやセリフを足しちゃうんだけど、それってお客さんを舐めてしまっていることに繋がらないかなって。『トトロ』は全然説明的じゃないのに、こんなちっちゃい子にも伝わってるよねって。だから今、僕は『となりのトトロ』をすごく指針にしているんです。アニメから学ばせてもらっています。アニメって、「つい撮れちゃった」ものじゃないじゃないですか。すべてちゃんと考えられて作られている。だからすごいなと思う。そういうのを観ると、僕はまだ負けてるなと思うんです。

――読者へメッセージをお願いします。
 原作を好きな方が観ても決してがっかりしない作品になっていると思います。主演の平手友梨奈と真摯に向き合いましたので、ぜひ観に来てください!

▲「北村有起哉さん演じる鬼嶋仁とのシーンでも平手さんがしっくりきていない様子で。“無邪気に接したら鬼嶋を怒らせてしまった”ことをなんとか伝えたいという彼女の提案でアドリブを入れることになりました」

▲「花井ふみ役の北川景子さんは現場を引っ張ってくれました。自分の撮影が終わっても『現場の様子を教えてください』と連絡があり、現場で、祖父江凛夏役のアヤカ・ウィルソンさんに芝居のアドバイスをしていました」

▲「なるべく演者の方と話すようにしています。言った通りにやられるより、想像を越えてきてくれたほうがうれしいので。皆さんが役になりきり考えを話してくれて、なるほどと思うことがある現場でした」

▲「田中康平役の柳楽優弥さんは、『俺は心が震えたよ!』というセリフのとき、台本上で“!”がついているから勢いよく言うかと思ったら、やさしく言ったんです。すると、優越感に浸っているような広がりのあるお芝居になって、すごいと思いました」


【つきかわ・しょう】1982年8月5日生まれ。主な監督作品は映画『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016年)、『君の膵臓をたべたい』(2017年)、『センセイ君主』(2018年)他。数々のマンガ・小説原作の映画を手がけており、いずれも高い評価を得ている。

構成/鈴木幸

〈『響-HIBIKI-』情報〉
全国公開中

原作/柳本光晴 監督/月川翔 脚本/西田征史
出演/平手友梨奈、アヤカ・ウィルソン、柳楽優弥、小栗旬、北川景子 他
配給/東宝

(C)2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会
(C)柳本光晴/小学館

 



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