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湯山邦彦&矢嶋哲生監督インタビュー!ポケモン映画「みんなの物語」は「新しいポケモン映画の一歩に!」

2018/8/22



 今年のポケモン映画は、サトシとピカチュウがフウラシティの危機を救う物語。本作のテーマや、人とポケモンとの描き方についての工夫を、矢嶋哲生監督とアニメーションスーパーバイザー・湯山邦彦のふたりに聞いたインタビューが、「アニメディア9月号」に掲載中。「超!アニメディア」では、掲載されなかった部分を含めたロング版を公開!

――矢嶋監督はポケモン映画の監督は、今回が初めてですね。
矢嶋 以前から湯山さんに「頼むね」という話はされていました。なので、任せていただけるならやってみよう、という気持ちで臨みました。

湯山 僕自身は、10年くらい前から跡継ぎを探していたんです。ただ、『ポケモン』はTVアニメシリーズも劇場版も同時に進んでいるタイトルなので、なかなかタイミングが合わなかったんです。『ポケットモンスターXY』が終わったら矢嶋くんにと思っていたんですが、『XY』がなかなか終わらなくて(笑)。それが無事に手を離れたようなので、やっとお任せできたんです。

――昨年の劇場版20作目『キミにきめた!』では、湯山さんは「ヒーローらしくないサトシを描きたい」とおっしゃっていました。本作のサトシはザ・ヒーローといった感じの活躍をしますね。
湯山 今回のサトシは、矢嶋くんの趣味が出ていると思います。

矢嶋 そうですね。登場シーンなどはかなり意識しました。「キター!」と思えるようなものがほしくて、かっこいい演出に傾いていっちゃうんです。

――その点については、湯山さんからは何か意見は出されたのですか?
湯山 僕的には、全部お任せでした。

矢嶋 最初に「好きに作っていいよ」って言われました。とはいっても、昨年の『キミにきめた!』はすごくいい映画だったこともあり、僕としても本作ではサトシとピカチュウの絆が完成されているところから始めようと思いました。そして、本作の新キャラクターたちがピカチュウに感化されていくところも描きたかったので、「ゲットレース」を盛り込んだんです。あの「ゲットレース」で、サトシが「ポケモンとなら、なんでもできる!」と言うのが、その後のピンチに各キャラクターを動かす大きな力になるんです。「ゲットレース」はフウラシティのあらゆるところで中継されていたので、ほかのキャラクターもみんな観ている。だからこそ、「サトシとピカチュウがやったのなら、私たちにもできるかも」と思えるようになる、という流れですね。

――本作のピカチュウは、なかなか挑戦的な表情を見せるのも印象的でした。
矢嶋 ゲットレース中、サトシがピカチュウに暴走したバンギラスを「連れてこれるか」と尋ねるシーンでは、ピカチュウの返事は「できないとでも思っているの?」というニュアンスを込めました。そこがふたりらしい関係性になっているかなと。

湯山 ゲットレースの表情は斬新だったね。あの表情は、今回の映画の中で一番ふたりの関係性がよく見えているなと思いました。

矢嶋 普段のピカチュウは、あんなに挑戦的な表情はしませんからね。

――監督としては、今回の物語でどういうポケモン像を描いていこうと思われたのでしょうか?
矢嶋 ポケモンの映画はスケールが大きいところに魅力があるなと思ってはいるのですが、今回はあえて世界が滅びるという危機とは少し遠い物語にしました。スペクタクルよりも、ポケモンと人間の関係について掘り下げたいと思ったんですね。僕はゲームボーイで初代のポケモンを遊んでいた世代なんです。それも、おばあちゃんと一緒に。おばあちゃんとゲームを通じてコミュニケーションを取れていたという実感もあって、今回はほかのスタッフとも相談しつつ、観てくれた人が最初にポケモンと触れあったときのことを思い出してもらえるような映画にできたら、魅力が伝わるんじゃないかと考えました。

湯山 ゲームをプレイしていたのは、何年生くらいのときだったの?

矢嶋 小学校5年生くらいです。

湯山 サトシと同い年くらいですね。

矢嶋 そうなんですよ。おばあちゃんも、学校から帰ってくるとレベルが10くらいあがるほどにやりこんでいたんです。そのときのワクワク感を、観る方にも感じてもらえたらなと思っていました。

――今回、劇場版オリジナルのキャラクターがたくさん出たのは、ポケモンとの触れ合い方も人それぞれあるから、という意図からなのですか?
矢嶋 そうですね。まず、シナリオを作る前段階で僕から、「こんなキャラクターがいい」というのを20体くらい提案しました。「こういうエピソードと絡めたらいい」とも意見を出して、そこからスタッフみんなで「あるある」と盛り上がったキャラクターやエピソードを残していった感じです。最初から、全年齢に見てほしいという意図があったので、キャラクターの年齢層も幅広くしました。

――これまでのポケモンの世界には、リサのようなギャルっぽい子は多くなかったので、とても驚きました。
矢嶋 ギャルとポケモンってあまり絡むイメージがないので、新しいですよね。


――これまで監督をしてきた湯山さんから見て、今回の物語には、どんな感想を持たれましたか?
湯山 やっていそうでやっていない物語だなと思いました。今までの映画は主役ポケモンがいて、TVアニメシリーズのレギュラーキャラクターが登場することも多いんですが、どうしてもそれぞれの掘り下げはあまりできなかったんです。でも、今回は『キミにきめた!』でサトシとピカチュウの物語は描いたから、サトシ以外のキャラクターとポケモンの関係性を掘り下げることができていたので、すごく新鮮に感じました。

――キャラクターと絡むポケモンが、ゼラオラを除くと、伝説や幻と言われるポケモンではありませんでしたね。
矢嶋 今回出すポケモンは、なるべく地味というか、日の目を見なかったような子にしたかったんです。

湯山 ウソッキーよかったよね。

矢嶋 ありがとうございます。ウソッキーも含めて、バトルで活躍するタイプではないんですけど、僕的には思い入れのあるポケモンばかりでした。

湯山 ちなみに、ゲットレースでカガチが使うポケモンを、ヒトデマンにしたのはなぜ?

矢嶋 無表情で何を考えているかわからないからですね。全体的に物語がシリアスになっても、くすっと笑えるようなポケモンがいたらいいなと思ったんです。

湯山 たしかに、いい味出していたね。

――そんななかでのキーとなるポケモンだったのがゼラオラです。
矢嶋 ゼラオラは湯山さんと話していても、とにかく魅力的に描かないといけないというポケモンでした。そこで、ラルゴと組み合わせることによって、人間嫌いだったポケモンが、人間っていいんじゃないかなと思えるようになっていくのがいいのではないかと思って配置しました。僕がTVアニメシリーズのときに考えていたテーマとして、人間とポケモンはお互いがいなければ成立しない、お互い支え合って暮らしているという形を描きたいと思っていたんですね。ゼラオラに関しては、拒絶していた人間に心を許していくことで物語にできるかなと思いました。

湯山 ゼラオラはそもそも、見た目からしても人間と仲よくする感じじゃないんだよね。だから、ある程度距離を置いていたほうがかっこよく見えるだろうなと思っていました。結果的に、ゼラオラのクールなかっこよさがすごくうまく出ていましたね。

――矢嶋監督は「ポケットモンスターXY&Z」の最終回でもカスミソウを描く演出をされていました。本作でも最後に花が描かれていましたが、どんな意図があったのですか?
矢嶋 ラストカットは絵的にさびしかったのと、メッセージ的にひと花添えたいというのがありました。今回は、キャラクターの名前を花から拾っていたりもするので、花は活かしたいと思ったんです。

――キャラクターの名前というと?
矢嶋 たとえば、トリトはトリカブトから取りました。トリカブトには「人嫌い」という花言葉があるんです。カガチはホオズキの異称で、ホオズキの花言葉は「偽り、ごまかし」なんですね。

――なるほど、かなりしっかりとした理由でつけられているんですね。ちなみに、本編ラストの花は実在するのですか?
矢嶋 あの花はフジハタザオといって、花言葉は「共に生きる」。映画にふさわしいなぁと思ったので咲かせてみました。

――そういった細かな点もふくめて、何度もチェックしたくなりますね。
矢嶋 そうですね。今回群像劇ということもあり、各所の動きが別のシーンへの影響を与えることをかなり計算して作りました。そういうところを考えつつ、もう一度観てもらえると楽しいかなと思います。

湯山 今回はキャラクターが多いこともあって、いろいろな視点が描かれているんですね。僕としては、2、3回観てもらったほうがよりいっそう楽しめるのではないかなと思います。たとえば、誰かひとりだけに注目して観るのもいいですし、ヒスイのポケモンで何が増えたのかも気にしてみるといいんじゃないかな。

矢嶋 ヒスイのポケモンは、シーンが変わったら増えていると面白いかなと思って入れていきました。本当はもっと増やしたかったんですけど、作画の限界でしたね(笑)。

――完成してみて、湯山さんから見た、矢嶋監督が作ったからこその魅力とはどんなところだと思いましたか?
湯山 『キミにきめた!』では、アクションやバトルのシーンをお願いしたんですが、矢嶋くんはアクションシーンだけでなく人情ものもうまいんです。体に似合わず繊細で(笑)、それがすごくうまく出たんじゃないかなと思います。あれだけのキャラクターをていねいに、どんな立場の人でも誰かしらに感情移入できるように描けるのは、さすがだなと。

矢嶋 じつは、コンテを描いているうちに盛り上がっていったところもあるんです。ヒスイはあんなに目立つようなシナリオじゃなかったんですよね(笑)。

――各キャラクターのバックボーンが、自然とわかるのもすごいなと思いました。
湯山 芝居のちょっとしたリアクションやセリフで伝わってきているんですよね。本当に、今回の映画は新しいポケモン映画の第一歩になったと思っています。

――ちなみに、途中に現れたゼラオラを狙うポケモンハンターのその後は……?
矢嶋 逃げていったあとに、ほうしが浄化されるのを待って隠れています。一応、今のところ逃げ切っていますね(笑)。

――では、最後に読者にメッセージを。
湯山 『みんなの物語』という題名どおり、小さい子からおばあちゃんまで幅広い層の人たちがポケモンとどのように関わっているのかが伝わってくる物語になっています。いろんな世代の人に観てもらえる映画になりました。

矢嶋 みなさんが初めてポケモンに触れ合ったときのことを思い返してもらえたら大成功だと思っています。映画を通じてお孫さんや家族とコミュニケーションを取ってもらえたらうれしいです。

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

〈「劇場版 ポケットモンスター みんなの物語」情報〉
全国劇場で公開中

●「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」ストーリー
人々が風と共に暮らす街・フウラシティでは、1年に1度だけ開催される“風祭り”が行われていた。祭りの最終日には伝説のポケモン・ルギアが現れて、人々はそこで恵みの風をもらう約束を、昔から交わしていたという。
ポケモン初心者の女子高生、リサ。
嘘がやめられなくなってしまったホラ吹き男、カガチ。
自分に自信が持てない気弱な研究家、トリト。
ポケモンを毛嫌いする変わり者のおばあさん、ヒスイ。
森の中で一人佇む謎の少女、ラルゴ。
偶然、風祭りに参加していたサトシとピカチュウは、5人の仲間たちと出会う。それぞれが悩みを抱え、パートナーのポケモンと一歩を踏み出せない中、みんなが出会うことで、運命の歯車が動き出す……。ルギアとの約束は守られるのか? そして幻のポケモン・ゼラオラの正体とは??
今、人とポケモン、みんなの絆が奇跡を起こす――。

ポケモン映画公式サイト
http://www.pokemon-movie.jp/

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