「歌には人生を変える力がある」自身の経験から語るその重みーー富田美憂1stアルバム『Prologue』全曲インタビュー | 超!アニメディア

「歌には人生を変える力がある」自身の経験から語るその重みーー富田美憂1stアルバム『Prologue』全曲インタビュー

1stアルバム『Prologue』をリリースした富田美憂さんにインタビュー。

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 声優・アーティストとして活動する富田美憂が、1stアルバム『Prologue』を2021年6月30日(水)にリリース。デビューした10代から20代になった今を集約した一枚には、彼女の「歌」への想いが詰め込まれている。今回は、ファンや関係者から「ストイック」と言われる富田美憂さんに、アルバムの各楽曲のことに加えて、子供のころにやっておいたほうがよかったと思うこと、憧れの大人像についてインタビュー。自身の作詞曲のテーマともなった「手紙」への特別な想いについてもお話を聞いた。

歌の表現と役幅の広がり

――2019年11月にデビューしてから約1年半。1stアルバムがいよいよリリースとなりました。

 アルバムの話は2020年の夏ごろにいただき、3rdシングル「Broken Sky」のレコーディングと並行して制作を進めていました。アルバムが発売することを言いたいけど言えない期間が長かったので、今はとにかく発表できたことが嬉しいですね。マスタリング済みの音源をぜんぶ聞いたとき、現時点の富田美憂が出せる100%……いや、200%の力を注ぎ込めたアルバムになったと感じました。胸を張って「これが富田美憂だぞ」って打ち出せる作品になったので、とても満足しています。

――制作期間は約1年。じっくりとアルバムを作っていった。

 そうですね。1曲1曲、どういう歌がいいのかというリクエストを出させていただき、1カ月に1、2曲ぐらいのペースでレコーディングをしていきました。加えて今回は、曲をいただいてからレコーディングするまでの時間も結構いただけたんですよ。私、アフレコでもレコーディングでも本番前の準備期間がすごく好きなんです。その役、曲と向き合える時間を大切にしたくって。

――そういう意味では、アルバムの制作を通じて表現の幅がさらに広がった。

 広がりました。今回のアルバムには異なるタイプの楽曲が集まっているので、10通りの富田美憂を表現できたと思います。ここ一年は芝居の面でも役幅が広がったので、20歳になってから色々と変化を感じています。

――どのように役幅が広がったと感じていますか?

 今までは「未熟でこれからの成長が楽しみ」という主人公を演じることが多かった気がします。例えば、『アイカツスターズ!』や『メイドインアビス』とか。そういう現場のときって、先輩方に囲まれることが多かったんですよね。ただ成人してからは、自分が“先輩方”の側に立つことが増えたんです。作品によってはラスボスの立ち位置のキャラクターを演じることもありました。これって、数年前だと考えられないことだったので、そういう意味で役幅が広がったと感じています。

――前回のインタビューでは「この先輩に出会ってよかったと思ってもらえるような先輩でありたい」というお話をされていました。

 どんな仕事でもそうだと思いますが、先輩って後輩の人生設計にすごく関わると思うんです。現に私も『メイドインアビス』でご一緒している伊瀬茉莉也さんと出会ったことで、「命がけで役を演じる」ことをしっかり意識するようになりました。ありがたいことに「ストイックだね」と周りの方に言っていただけるようになったのは、伊瀬さんの存在が大きいです。それだけ先輩の影響力ってあると思うんですよ。だから、私もちゃんと後輩たちを支えられる存在にならなきゃいけないなと思って。前回のインタビューでお話した『アイドルマスター シンデレラガールズ』で辻野あかりちゃん役を演じる梅澤めぐちゃんに声をかけたっていうのも、そういう気持ちがあったからです。また、同世代だけどもキャリアは私より少し短いという子たちから、相談されることも増えていますね。役幅とは違いますが、気持ちの面でも変化した気がします。

――そうやって相談をしてもらうことで、自分も刺激を受けている。

 受けますね。いつも本気でオーディションに臨んでいますが、「死ぬ気で受けていますか?」と尋ねられたら、自信満々で首を縦に振れるほどではなかったかもしれません。ただ、後輩の子たちを見ていると、目が輝いていて。あの必死に食らいつく感じって、結局は何年経っても大事なことだと思うんです。相談してもらうことで、その気持ちを思い出すことができました。オーディションを受けられるのはありがたいこと。でも「ありがたい」っていう気持ちだけじゃなくて、「絶対に取るぞ」っていう気持ちも必要だと思うんです。今は、「オーディションを受けるまでの時間で私がいちばんキャラクターを理解して煮詰めてやるぞ」という気持ちでいます。前よりも丁寧に、ちゃんと考えてお仕事に向き合えるようになりました。

――ストイックですね。

 ありがとうございます(笑)。

歌うときには年齢感も意識

――続いて、アルバムのコンセプトについて教えてください。

 デビューシングル「Present Moment」をリリースしたときが19歳で、今回のアルバムに収録される新曲は、主に21歳になってからレコーディングをしました。そういう19歳から20歳、21歳という、子供から大人に切り替わる境目のタイミングでアルバムをリリースできることって貴重だと思うんです。ありがたいことに19歳でデビューさせていただけたからこそできる成長過程をこのアルバムに集約しました。なので、自分のなかでのコンセプトは「成長」「成長過程」ですね。

――アルバムに収録される各楽曲についてお話を聞かせてください。まずは、デビュー曲でもある「Present Moment」。

「Present Moment」(プレモメ)をデビュー当時に歌っていたときは、いま持っている希望や不安など、フレッシュな気持ちを全面に出して歌っていました。それも相まってか、今聞くと、「プレモメ」は私をアーティストの原点に戻してくれる曲だと感じるんです。何年経とうが、アーティストとしてまだ0歳だった私に戻してくれる原点の曲になりました。私のラジオに「プレモメ」の作詞をしてくださった金子麻友美さんにゲスト出演していただき、制作過程などをじっくり聞くことができたんです。金子さんは、「プレモメ」は私へのプレゼントであり、曲を書いているときは5年後の富田美憂が歌っている姿を想像したと、おっしゃられていました。

――そういう意味では、2、3年後に聞くと、また違った感想を抱くかもしれません。

 そうですね。大切な曲であることに変わりありませんが、私が成長していくにつれて、捉え方や感じ方が変化するかもしれないです。このデビュー曲は、私にとって宝物ですね。

――続いて2曲目「ジレンマ」について。

 いわゆるラブソングではありますが、報われてハッピーエンド、という曲ではないんですよね。「ビターな曲」というのが自分のなかではしっくりきています。ピュアな感情というよりかは、相手が好きなあまりいらだちを覚えたり嫉妬心が芽生えていたりという感情です。誰しもが持っているであろう、心の裏側や薄暗い感情がにじみ出ている曲だと思います。今までリリースした私のどの曲よりも「ジレンマ」は大人な曲。それだけに、事務所の上の方が「こんな大人な曲、富田さんできますか?」って心配していたらしいんですよ。その話をマネージャーさんから聞いたとき、「逆にこの曲で大人っぽい表情ができると思わせてやろう!」と気合が入りました。レコーディングでは、ちょっと背伸びをして、27歳の富田美憂をイメージしていました。大人の恋の駆け引きを表現できていたら嬉しいですね。

――年齢感もイメージしながら歌ったんですね。

 そうなんです。声もあえてちょっと太めにして、厚みや深みが出るように意識しました。

――3曲目は「Run Alone!」。

「ずば抜けてテンションが高くて、アドレナリンが常に出ているロックな曲が欲しいです」とリクエストしてあがってきた候補曲のなかから、満場一致で「これ!」と決まった曲です。ラップやセリフのようなパートなどテクニカルな部分が多く、今私が持っている力よりも少し高めを求められていると感じました。アルバムのなかで最も挑戦した曲だと思います。

――どのような楽曲に仕上がっていますか?

 タイトル通り、独走状態という言葉が似合う曲です。「プレモメ」は「これから一緒に頑張っていこうね」という曲なのですが、この曲は「私の後ろについて来いよ!」くらいのテンション。ちょっと強気な表情を出せる曲だと感じたので、いい意味で綺麗に歌うよりも荒々しく、勢いを優先して歌いました。息継ぎのタイミングから何まで、本当にこだわって、こだわって、もうこれ以上はこだわりようがありません!っていうくらいに頑張ってレコーディングした一曲なので、ぜひ聞いて欲しいです。

――年齢感はどれくらいを意識しましたか?

 等身大くらいですね。今も何かに夢中になって周りが見えなくなるときがあるので。歌詞の内容や情景はイメージしやすかったです。

――4曲目は「片思いはじめました」。

 少女マンガに登場する男女の恋模様を表現したかのような曲です。この曲の主人公は、今まで恋をしたことがなくて、恋する楽しさを分かっていなかったんです。でも、初めて「片思いのドキドキ」を知った。最終的には片思いが実らない歌ではありますが、片思いしているときの楽しさが詰まった曲にはなったんじゃないかな。女子特有かもしれませんが、片思いをしているときがいちばん楽しいというか、不思議な気持ちになるんですよね。普段着ないような可愛い服を着てみようとか考えちゃって。

――両想いになるまでのランディング期間が楽しい、みたいな。

 まさに、そんな感じです! 現在進行形で好きな人がいる女の子にはきっと刺さる曲だと思います。大人の方でも自分の初恋を思い出せるんじゃないかな。

――そういう意味では、年齢感は10代を意識して歌った?

 高校生くらいですね。レコーディング前日は少女マンガを読んでいました(笑)。

――ふだんから少女マンガはよく読む?

 大好きなんですよ。さまざまな少女マンガを読破しています。アーティスト・富田美憂が歌う曲って「爽やか」「クール」というものが多かったと思いますが、この曲はTHEかわいらしいサウンド。「Run Alone!」を聞いた後に、この曲を聞いてキュンってなってもらえればと思います。また、男性の方は「恋をしている女の子はこんな感じ!」ってことを、この曲で学んでいただければ(笑)!

――(笑)。片思いが楽しいという話でしたが、別に両想いになりたくないというわけじゃないですよね?

 そういう訳ではないんですよ。不思議なもんで(笑)。ちなみに、私の初恋は幼稚園のころでした。職業体験で来ていた中高生くらいのお兄さん。

――その当時だと、憧れに近い感じかもしれません。

 そうですね!

――とにかく、男子諸君は片思いよりも両想いになってからのほうが楽しいと思ってもらえるようにしないといけないということですね。

 はい(笑)。

表のキラキラだけでなく裏側の感情も表現したい

――「翼と告白」は2ndシングルとしてリリースされた楽曲です。

 タイトルに告白と入っていますが、恋だけではなく、夢を追いかけている過程とも捉えられる曲です。「翼と告白」の歌詞は、ちょっと陰な部分も書いてほしいとリクエストして出来上がった曲でした。「ジレンマ」でもドロドロとした人間の感情を出したという話をしましたが、人ってキラキラした表の気持ちだけじゃなくて、裏側の陰の感情を持っている生き物だと思うんです。そういったことも私は歌で表現していきたくって。色々な感情を歌っていきたいです。

――年齢的には「ジレンマ」ほど大人過ぎない。

 そうですね。この曲を歌った時は、今ほど余裕がなかったと思います。レコーディング当時は、自分のことで精いっぱいで、大人になり切れていない感がありました。その感覚が曲ともマッチしていた気がします。その気持ちを忘れずに歌っていきたいですね。

――続いては「Some day, Sumer day」。

 この曲は、「ライブで盛り上がる曲が欲しいです」とお願いして作っていただきました。括弧に書かれた歌詞の部分を皆さんに歌ってもらったり、サビでタオルを振り回したりできるサウンドになっていると思います。レコーディングしているときも野外の夏フェスをイメージしていました。

――ライブ感を意識していた。

 そうですね。聞いている人とひとつになれるグルーヴ感を意識しました。ここ1年以上はほとんど有観客でのイベントができなかったことも相まって、この曲を歌うことで、改めてお客さんと一緒に楽しい時間を共有できていたことの尊さを実感しました。早くライブで、皆さんと盛り上がりたいですね。

――続く「Broken Sky」は、3枚目シングルとしてリリースされた曲です。

 今までリリースしたシングルのなかで、ずば抜けてダーク。黒色が似合う楽曲です。ただカッコいいだけではこの曲はもったいないと思ったので、歌詞の端々から感じる孤独感、聞いている皆さんがこの曲の主人公に手を差し伸べてあげたくなるような切なさ、寂しさを出せればと思いながらレコーディングした記憶がありますね。

ーーこの曲の年齢感は?

 TVアニメ『無能なナナ』のオープニング曲ということもあって、作品の主人公であるナナちゃんを意識しながら歌いました。なので、年齢感も彼女くらいです。ナナちゃんは周りの生徒と境遇が違うこともあり、孤独感があったと思います。この曲はナナちゃんの心情を歌った曲でもあるかな。

――絵を見たときと作品を見始めてから感じる切なさのギャップが何とも言えませんでした。

 本当にそうなんですよね。ナナちゃんは冷酷なんですけども、その境遇からか、助けてあげたい、救ってあげたいと思うような子でもあるんです。この曲はナナちゃんや私が演じた(佐々木)ユウカたちの顔を思い浮かべながら歌いました。

――それは、アニメタイアップ曲ならではかもしれません。

 そうですね。こういう想像の仕方はタイアップ曲ならではだと思います。

――続いては、「かりそめ」。

 大人です。この曲の主人公は、好きな人がいるけどもまだ友達以上恋人未満という、それこそ歌詞にもある“名もない関係”に悩んでいるんですよ。モヤッとした気持ちが書かれている曲だと思いました。レコーディングのときは、全身の力を抜いて、気だるさや無力感を意識して色っぽくなるよう表現しました。また、アルバムに収録されている曲のなかで、いちばん女性らしさを出した曲でもありますね。声も線を細くしました。

――「女の子らしさ」ではなく、「女性らしさ」がポイントになっていそうです。

「片思いはじめました」は女の子ですが、「かりそめ」は女性って感じです。年齢感も「ジレンマ」くらいを意識しました。あと……自分で言うのも何ですが、Dメロは「よくやった富田!」と、言ってあげたい(笑)。

――おぉ!その心は?

 全体的に力を抜いて淡々と歌っている曲ではありますが、Dメロではちょっと眉間に力を入れたと言いますか、刹那の表情を分かりやすく出したんです。ちょっとした変化に注目していただけると嬉しいですね。

――9曲目は「足跡」。

 この曲は「ジレンマ」の後日談です。「ジレンマ」と同じくこの曲にも時計の「カチカチ」という音が入っているなど、色々な点でリンクしているんですよ。「ジレンマ」は現在進行形で恋をしてモヤッとしていましたが、この曲はそこから数年が経ち、お互いに大人になっていて「ああいうこともあったよね」と言い合えるくらいの関係になっているんです。「ジレンマ」のモヤモヤとは異なり、一回りして包容力や温かさみたいなものを感じられる曲になれば、と思いながら歌いました。

歌には誰かの人生を変える力がある

――アルバムを締める10曲目「Letter」は富田さんが作詞を担当された曲です。

「手紙」というのが私なかでちょっと特別なもので。というのも、母が、私が0歳の頃から毎年1通ずつ誕生日に手紙を書いてくれていたんですよ。それを私が20歳の誕生日を迎えたときにまとめて渡してくれました。それに、初めて「Present Moment」をリリースしてアーティストとして皆さんの前に立った時も、サプライズで私の母とマネージャーさんと日本コロムビア担当の井上さんからお手紙をいただきました。翌年は手紙をくださった方々へ私からお手紙を渡しました。私の人生のなかで「手紙」はすごく特別なものなんです。

――素敵なお話です。

「手紙」って、ふだん素直に言えないことも自然と書けるじゃないですか。だから、頭のなかで日々考えていることを、飾らずストレートな気持ちで書けるんです。

――そんな「手紙」をテーマにした楽曲。詞にはどういう思いが込められていますか?

 いつもお世話になっている方々へのありがとうの気持ちを込めました。マネージャーさん、スタッフさん、こうやって今日インタビューに来てくださる皆さん、そして、素晴らしい先輩方や後輩たち、ファンの方々。そういう人がいなかったら、今の富田美憂という人間は完成していないんです。皆さんがいなかったら、私はいません。だから、皆さんに「ありがとう」と言いたいんです。その気持ちを詞につづりました。

――自分に対して歌っているようにも捉えられる曲だと思いました。

 それもあります。1番の歌詞は自分のことを歌っていますが、2番には誰かの物語の一部や君のためという言葉を使っているんです。「昔は自分のことで精いっぱいだったけども、今は皆さんのために歌っています」という気持ちになれたという、私の心の流れを曲に表しました。

――自分のことを歌っている曲でも、それが誰かのためになっていることがあります。歌はそれが本当に素敵だと思いますし、それだけ影響力もあると個人的には思っています。

 そうなんですよ! 3、4分くらいの曲ひとつで。考え方が変わったり人生が変わったりするんです。私も宮野真守さんや水樹奈々さんなどの先輩方がステージに立って歌っている姿を見たり、演じたりしている姿を見て、声優・アーティストになりたいと思うようになりました。先輩方の曲で私の人生が変わったんです。その姿を見ていなかったら今ごろは別の仕事をしていたかもしれない、ふつうの大学生だったかもしれない。逆に、それこそ手紙で「富田さんのおかげで将来の夢を見つけました」「富田さんの歌のおかげで頑張る気持ちになって大学受かりました」という言葉をいただいたこともあります。歌って、人生を変える力があるんですよね。皆さんから、本当にありがたい言葉をいただくことがありますが、むしろ人生を変えてもらったのは私のほうなんです。

――「Letter」を聞いて、人生が変わる人もいるかもしれません。

「Letter」は私の曲でもあり、皆さんの曲でもあるなって思っています。この曲には「あの日」っていう言葉が何度か出てきますが、「あの日」は私にとっては、初めてオーディションを受けた日であり、初めて受かった日であり、夢を見つけた日でもあります。ただ、もしかしたら皆さんにとっての「あの日」は私と初めて会った日なのかもしれない、初めて私のライブに来た日なのかもしれない、もっと違う情景が思い浮かんでいる方もいらっしゃるかもしれません。そういう色々な想いを巡らせて欲しかったので、明確に「この日」っていう書き方をするのではなく、フワッとした言葉を使いました。

――色々な人が共感できるけど、共感する内容が人によって異なる。

 違って欲しいなと思いながらレコーディングしていました。事務所に所属したときから私の面倒を見てくださっているマネージャーさんがこの曲を聞いたとき、ボロボロ泣いてくれたんです。マネージャーさんにとってはもしかしたら「あの日」が富田美憂という人間を見つけた日だったのかもしれない。それだけで、この曲を作った意味があるなと思いました。是非皆さんの「あの日」も教えて欲しいですね。

――自分が作った曲を歌ってみていかがでしたか?

 今までは作家さんが提供してくださった言葉に、私がどう味付けをしていくのかという作業でした。ただ、私が作詞した曲に関しては正解がもう「私」なんですよね。言葉だけ聞くと簡単そうに思えますが、実はすごく難しいんです。だって、私が出したどれもが「正解」だから。それだけに、レコーディングも迷いました。歌詞の譜割を変えるなど、今までにない作業を交えながら手探りで進めていったんです。私は自分が演じたキャラクターは自分の分身だと思っているのですが、その感覚に近かったですね。作詞した曲が我が子のように思えました。

――なるほど。

 同時に、作曲家・作曲家さんが、自分が生み出した曲を誰かに預けることの不安や期待って大きいんだなと思ったんです。これまで提供いただいた曲は作家さんたちから私へのプレゼントだと思ってはいましたが、作詞したことを経て、より楽曲に向き合って大事にしていくと決意しました。

――本日お話を聞いていて、富田さんは自分の経験を相手だとどう思うのかと考えられる方なんだと思いました。

 それは親のおかげかもしれません。うち、すごく厳しくって(笑)。当たり前のことなんですけども、自分がしたことを相手がどう思うのか、相手の気持ちを考えなさいと言われて育ったんです。だから、親のおかげですね。「Letter」はそんな親に向けた曲でもあります。

――今後も作詞には挑戦していきたい?

 やりたいです。歌って、1曲を作るために莫大な想いと時間がかかっていて、作る人の人生経験や感情が相まって生まれるものだとも思います。だから、誰ひとりとして同じものは作れない。作る人の人生が詰まっていると言っても、過言じゃないかもしれません。こういう歌を作り上げる過程がめちゃくちゃ綺麗に描かれている作品が、私の音楽のバイブルである『うたの☆プリンスさまっ♪』(以下、『うたプリ』)です。いま音楽を歌う、制作に携わる立場になって、『うたプリ』で描かれていたことは、フィクションじゃないということが改めて分かりました。これからも私は自分の人生観を歌にしたいですし、作詞にも挑戦していきたいです。そして、音楽が好きな人は絶対に『うたプリ』を見てください。

――アニメやゲームが好きじゃなくても。

 はい。ほんとうに私の教科書です。歌は技術も大事だけれど、気持ちに勝る技術はないこと、歌は気持ちで歌うものであることを、私は『うたプリ』から学びました。

現場にいると安心してもらえる大人になりたい

――今回は10代から大人になった富田さんが詰まったアルバムとなりましたが、富田さんが子供のころにやっておいた方がよかったなと思うことはありますか?

 私、アルバイト経験がなくって。お仕事をこの職のことしか知らないんですよ。だから、もっと色々な経験をしておけばよかったなとは思います。お仕事に夢中だったので、文化祭や体育祭に出られない、行事に参加しても途中で帰るということも多くて。高校生の青春を私はあまり経験できていないかもしれません。逆にいえば、お仕事に夢中になっていたことが、私にとっての青春でもありますが。とにかく色々なことを経験した方がいいと思います。

――やりたいことがあれば、とにかく挑戦する。

 10代のうちは何でも挑戦してみればいいと思います!

――では、これから大人として歩んでいくうえで、どういう人になりたいですか?

 現場にいると安心してもらえる大人になりたいです。「この人がここにいれば大丈夫だよね」「富田さんがいれば大丈夫だよね」と思ってもらえるような大人になりたい。実際に私の周りには、そういう先輩方がいます。大人って、子供に大きく影響を与えると思うんです。その分責任も大きい。だからこそ、私がいれば後輩の子たちが安心できる、頼られる大人になりたいな。

――9月にライブが開催されることも発表されました。最後に、ライブへの意気込みをお願いします。

 いま絶賛セットリストや演出を考えている最中なのですが、それが楽しくて仕方ありません。9月26日のライブまでにどれだけ準備ができるのかが勝負だと思っているので、頑張っていきたいです。ただ、ライブは私ひとりが作るものではないので、スタッフさんを頼らせていただきたいと思っています。スタッフさんも私を頼ってくださる環境になればより嬉しいな。もっと言えば、お客さんが見てくれて初めて富田美憂のファーストライブが出来上がるので、その準備を怠らないようにしたいです。準備でいえば、最近は筋トレを頑張っています。柔軟を1日2、30分お風呂上りにやっていますし、プランクでお腹を鍛えています。プランクは10秒もできなかったのが、2カ月くらいで1分くらいできるようになりました。2か月頑張ればちゃんと目に見えて数字が延びるんです。練習って楽しい!

――準備は着々と進んでいるので、とにかく楽しみにしていて欲しい。

 そうですね。ライブって歌う本人が楽しくないと、見てくれるみんなも楽しくないと思うんです。でも、楽しいと思えるには心の余裕が必要。余裕を持つためには準備が必要なので、9月26日を楽しいと思えるために、日々練習ですね。ただ、年始の『アイドルマスターシンデレラガールズ』のライブで練習し過ぎて肩を壊してしまって……。病院の先生に「野球か何かやっています?」と聞かれてしまいました(笑)。だから、体を壊さない程度に頑張りたいと思います。練習するのが正義と思っていましたけども、ケガをしてしまえばその時点で負けと私は思っているので。体調管理も仕事のうちだと思って、全力で準備を進めていきます!

プロフィール
富田美憂【とみた・みゆ】11月15日生まれ。埼玉県出身。アミューズ所属。主な出演作は『俺だけ入れる隠しダンジョン』エマ・ブライトネス役、『裏世界ピクニック』瀬戸茜理役、『戦闘員、派遣します!』キサラギ=アリス役など。

富田美憂 1stアルバム『Prologue』リリース情報
発売日:2021年6月30日(水)発売
初回限定盤(CD+Blu-ray)
通常盤(CD only)
【CD収録内容】
1:Present Moment 作詞:金子麻友美 作曲・編曲:睦月周平
2:ジレンマ 作詞:NIYA 作曲:GRP、NIYA 編曲:GRP
3:Run Alone! 作詞:坂井竜二 作曲・編曲:山崎真吾
4:片思いはじめました 作詞:宮嶋淳子 作曲・編曲:トミタカズキ
5:翼と告白 作詞:只野菜摘 作曲・編曲:睦月周平
6:Some day, Sumer day 作詞:hotaru 作曲・編曲:eba
7:Broken Sky 作詞:大西洋平 作曲・編曲:VaChee、Ryo Yamazaki
8:かりそめ 作詞:鶴﨑輝一 作曲・編曲:高橋修平
9:足跡 作詞:NIYA 作曲・編曲:Justin Moretz & Kotaro Egami
10:Letter 作詞:富田美憂 作曲:金子麻友美 編曲:佐藤清喜

【Blu-ray収録内容】
「ジレンマ」Music Video
「ジレンマ」Music Video Making Movie
「Present Moment」Music Video
「翼と告白」Music Video
「Broken Sky」Music Video

《M.TOKU》
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