アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらうインタビュー企画「Megami’sVoice」。2021年4月号には、EP「フィクション」をリリースした逢田梨香子が登場。本webサイト「超!アニメディア」では、本誌で紹介できなかった部分も含めた、ロングインタビューをお届けする。※逢田さんの「逢」は2点しんにょうが正式表記。ブラウザによって、正しく表示されていない場合がございます。――「Principal」に続く2枚目のEPですが、真っ赤なビジュアルが目を引きますね。 赤は私からの希望でした。タイトルが「フィクション」なので、ジャケットも現実味のない雰囲気を出したくて、普段の私が絶対にしない少し毒のある真っ赤なスタイルにしていただきました。――1曲目の「Dream hopper」は『装甲娘戦機』のオープニングテーマです。 曲をいただいたときは、本当に歌いきれるのかという心配もあったくらい、1曲のなかでころころと表情を変えるので、振り落とされないように必死でした。でも、おしゃれでかわいく、かっこよさもある曲でしたし、何より勢いがあって。その勢いで、最後まで歌いきることができました。かっこよく歌いたい、存在感のある曲にしたいというビジョンがはっきりしていたので、歌うのは大変ではありましたが、迷いはなかったです。 私は、リコ役として作品に出演させていただいていたので、世界観も把握した上で歌うことができました。ただ、リコではなく逢田梨香子として歌わなければいけないので、ちゃんとキャラクターと差別化ができるような歌い方を心がけていました。――リコについては、どんな気持ちで演じていましたか? リコは、私と考え方がかなり違っていたので、スタッフの方からは「空気は読まないで」とか「わからないままでいいから」と言っていただくことが多くて、それを飲み込むのが大変でした。でも、新しい役柄に挑戦できてすごく勉強になりました。――アニメのオープニングで流れたときの感想は?「アニメのオープニングだ!」と(笑)。オープニング用の映像とキャラクターの動きに合わせて曲が流れているのを聞いて、やっぱりオープニングって番組の顔なんだと思いましたし、すごく感動しました。――ミュージックビデオ(MV)は、大きな団地で撮っているんですね。 MVの監督さんが「団地はどうですか」と提案してくださったんです。日常のなかに潜むシュールさを出したいと聞いて、これはおもしろそうだと。風景は日常なのに、私やダンサーの方はポップでカラフルな衣装を着てメイクをしている。そのギャップや違和感に注目していただけたらと思います。同梱されるDVDは、曲の始まりにちょっとしたネタというか遊び要素が入っているんですが、効果音もついて、すごくコミカルな映像になっていて、そこもチェックしてほしいです。――MVで何か希望は出しましたか? 踊りたいです、ということくらいですね。でも、いままでにあまり踊ったことがないタイプのダンスだったので大変でした。振り入れをしてから3日後に撮影だったのですが、なぜかものすごく緊張して、家で練習をしまくりましたね。でも、新しい挑戦だったので楽しかったです。――ほかの3曲は、どのように決まったのですか?「Dream hopper」が途中で曲調が変わる不思議な曲ですから、この曲が入っていても違和感のない1枚にしたい、いい意味でまとまりのないものにしたいなと思ったんです。そこで、4つのフィクションというテーマにしたらおもしろいのではないかとリクエストをさせていただきました。――具体的に、どんなリクエストを? 作詞をさせていただいた「フィクション」は、ブラスが印象的なビックバンドの楽曲をお願いしました。いままで歌ったことのない、かっこいい大人の雰囲気を出したかったんです。同じく作詞をした「花筵」は、映画のエンドロールになるようなバラードで、和の雰囲気も感じられるものを。「退屈が大好き」は、「いままでになかったタイプのかわいい曲で、ウィスパーっぽい歌い方をしたいです」くらいのざっくりとしたオーダーでした。――それぞれの曲の印象を教えてください。まず2曲目の「フィクション」。 アーティストデビューが決まったとき、自分のアーティスト像がイメージできなかったんです。でも、歌とお芝居ってそれほど大きく違わないと気づいて、その「演じる」感じをテーマにしたら、アーティスト活動がより身近に感じられるんじゃないかとずっと思っていたんですね。それもあって、夢か現実かわからない世界に足を踏み入れて、抜け出せなくなっている主人公をイメージして作詞をしていきました。 レコーディングでは、大人っぽさとかっこよさを両立させて歌うのが難しかったです。最後にこの曲をレコーディングしたんですが、とくに歌詞についてOKが出るまではレコーディングスタジオ以外でもずっとこの曲のことばかり考えていて、終わってホッとした曲でした。これまでにリリースした「Principal」も「Curtain raise」も、演じるというワードが根底にあったのですが、自然とその続きになった感じというか。偶然ではありますが、三部作みたいな感じになりました。――歌詞のなかの「殺していく」というワードはインパクトがあります。 じつは、過去に何度か歌詞で死というワードを入れたことがあるんですが、いままではNGが出ていたんです。今回もダメかなと思ったらOKが出ました。“フィクション”ですしね。ちょっと静かになったときに現実に戻るような、そのダークさを表現できているかなと思います。――「退屈が大好き」は、どこか無機質な感じが印象的です。 この曲は、どう歌ったら正解かが自分でもなかなかつかめなかったんです。感情を入れてかわいくしすぎるのも違うと思い、なるべく気持ちを押し殺すようにして。かわいさのなかに毒っけがある歌詞がすごく好きなので、それをなるべく表現できるように歌いました。「ダーリン」というワードも出てきますが、じつは主人公が飼っているイヌのことなんです。そう知って聞くと、また印象が変わるかもしれません。――そしてラストの「花筵」。 情景や季語を集めた辞書でこのワードを知りました。「花が散ったことでできる道」という意味で、それがすごく素敵だと思い、その道を大切な誰かに贈るような歌詞を書きたいと思いました。歌詞を書く前から、人って誰か、家族や恋人などの大切な人と一緒に歩いていたとしても、永遠に一緒にはいられない、離れてしまうことはいつでも起こりうるんだと感じていたんです。その思いを花が散る儚さにシンクロさせて書いていきました。 レコーディングでは、どうしても冒頭からのキーが低い部分を歌い上げたくなってしまって、そこをグッと押さえるのが大変でした。押さえに押さえて、最後には壮大に景色が広がるようなイメージで歌ったので、ぜひ、いろいろな景色を思い浮かべながら聞いていただきたいです。――最後にメッセージをお願いします。 4曲入りとは思えないくらいボリューミーな1枚になりました。まったく違った世界観を4曲で表現して、それぞれシングルカットできるんじゃないかというくらい、インパクトの強い曲ばかりです。満足度の高い1枚になっていると思うので、何回も聞いていただき、「フィクション」の世界に迷い込んでいただけたらうれしいです。取材・文/野下奈生(アイプランニング)プロフィール逢田梨香子【あいだ・りかこ】8月8日生まれ。賢プロダクション所属。2019年6月にEP「Principal」でアーティストデビュー。これまでにシングル1枚、アルバム1枚、EP1枚をリリース。声優としての主な出演作は、『装甲娘戦機』リコ役、『川柳少女』大月琴役など。「フィクション」リリース情報発売日:発売中レーベル:DMM music / Astro Voice概要:自身が主人公・リコを務めるテレビアニメ『装甲娘戦機』のオープニングテーマ「Dream hopper」を含む全4曲収録。ポップチューンからバラードまで、4曲それぞれで自身が考える「フィクション」を表現。初回限定盤には、「Dream hopper」のミュージックビデオやメイキング映像を収録したDVDを同梱する。価格:初回限定盤3,850円(税込)通常盤1,980円(税込)
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