土曜夕方にお引越しでさらにパワーアップ!『クレヨンしんちゃん』のTVアニメシリーズを手がけるムトウユージ監督に迫る【インタビュー】。「劇場とは違う見せ方というのができると思うんですよね」 | 超!アニメディア

土曜夕方にお引越しでさらにパワーアップ!『クレヨンしんちゃん』のTVアニメシリーズを手がけるムトウユージ監督に迫る【インタビュー】。「劇場とは違う見せ方というのができると思うんですよね」

昨年10月より土曜午後4:30の放送枠に移動した『クレヨンしんちゃん』。今回の改編を機に、2004年よりTVアニメシリーズの監督を務めるムトウユージ監督へのインタビューが実現した。作品作りに向かう現在の心境やこだわりにつ …

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昨年10月より土曜午後4:30の放送枠に移動した『クレヨンしんちゃん』。今回の改編を機に、2004年よりTVアニメシリーズの監督を務めるムトウユージ監督へのインタビューが実現した。作品作りに向かう現在の心境やこだわりについてお話を聞くなかで、テレビ朝日『マツコ&有吉の怒り新党』でも取り上げられて話題になった「なぐられうさぎ」についても言及。様々な裏話も交えつつフランクに語ってもらったインタビューからは、長きにわたりストイックに面白さを追求し続けるムトウ監督の“しんちゃん愛”があふれていた。


■劇場とは違う見せ方というのができると思うんですよね。

――昨年10月から『クレヨンしんちゃん』の放送枠が土曜の夕方に移動しましたが、それによって作品への意識は変わりましたか?

ムトウ監督 基本的には変わりませんが、当社比30%おバカ度を増そう! という感じですね(笑)。「こんなこと他の番組ではできないだろ!?」っていう部分をちょっとだけパワーアップさせてみたりしています。先日の放送(2020年1月11日)では鉄棒でお尻の大回転をやったり、おならをしたらパンツが破れちゃったりとか。まあ……他の番組では、こんなことしませんけど……(笑)。

――時代と共にコンプライアンスも厳しくなってきているなかで、「ここまでは攻めよう」といったことも考えていますか?

ムトウ監督 そんなことばかり考えています。 “ゾウさん”が出せなくなっちゃったけど、そこを逆手に取ってアングル的にわざとマサオくんの手でしんのすけの股間を隠したりして(笑)。だけど、わざわざそれを画像加工してTwitterにゾウさんを出している画を上げた人がいて、思わずオイオイ! とツッコミたくなりました(笑)。

――よくTwitterで視聴者の反応を見られているんですか?

ムトウ監督 検索はあまりしませんが、たまに今回(の放送)はどうだったんだろうと気になったときはします。元々、あまり興味はなかったんですよ。全部読んでいると時間を取られちゃうし、人目を気にするのは嫌だなと思っていて。そんなときに、もえP役の声優・野川さくらさんが「監督もTwitterをやりましょうよ!」と言って、勝手にアプリを入れてくれたんです(笑)。

――野川さくらさんに勧められて始めたんですね(笑)。Twitter関連で何か印象に残っている出来事はありますか?

ムトウ監督 ぶりぶりざえもんの復活のときに、神谷(浩史※現在のぶりぶりざえもん役)くんがぶりぶりざえもんの被り物をして撮った写真をあげたら、1万くらい“いいね”がついちゃってびっくりしました。ぶりぶりざえもん復活のときは、いろいろあったんですよ。塩沢(兼人※ぶりぶりざえもんの声を担当していたが、2000年に急逝)さんのファンの方たちがいるので、「認めたくない」という声もあって賛否両論だったと思います。「なんでもかんでも手放しで喜んでくれるわけじゃないんだ」って思ったし、復活させるならばもう一度ちゃんと活躍させないといけないと思いました。

――やはり長い歴史のある作品ですからね。これまで『クレヨンしんちゃん』を作ってきたなかで、どんなところにこだわってきましたか?

ムトウ監督 シナリオライターさんにも言っているのですが、「日常の8分間を切り取る感じで書いてほしい」とお願いしています。しんちゃんの1日のなかから8分間を切り取って、1話にするという考え方はずっと変わっていないんです。シーンが変わるときにもできる限りワイプ移動を使わないで、そのままの感じで見せていくのが面白いと思っていて。「そういうところがしんちゃんなんだよ」と言って、絵コンテも描いてもらっています。


――日常のあるあるネタや共感できるお話も多いですが、ホラーを感じるときもあります。

ムトウ監督 ギャグアニメですが、お話を作っていると闇の部分が出てくるんですよ。オチをつけるからギャグになるのですが、オチをつけないとホラーになると気づいたのが「なぐられうさぎ」(ネネちゃんや、ネネちゃんママの八つ当たりに使用されるぬいぐるみ)」シリーズなんです。最後に「なーんちゃって」と言うとギャグになるけど、言わないとホラーになるんです。最初の1話はシナリオでは夢オチだったのですが、絵コンテを描いていて夢オチをやめたら、自分でもすごく怖くなるホラーになったんです。

――ホラー要素を取り入れるきっかけは何かあったのでしょうか?

ムトウ監督 「なぐられうさぎ」を描いていたときに怖いカットを思いついて1コマ描いてみたのですが、自分でも怖くなって……。僕はホラーが大嫌いなんです(笑)。でもそのあとも夜中にひとりで1コマ描いては怖くなって10分休んで……というのを繰り返していくうちに、ホラーを描く面白さに目覚めました。
 ホラー映画で有名な鶴田(法男)監督とお話させていただく機会があって、「この人はホラーが好きでよく勉強している方なんだな」と感じたんです。逆に僕はホラーが怖い分、何を描いたら怖いかわかったので、鶴田さんとは違う自分なりのホラーを作れるのかな、とか話しました。

――お話を伺っていると、監督ご自身も楽しみながら作られていることが伝わってきます。それがいつまでも飽きることがない理由なんでしょうね。

ムトウ監督 そうそう。自分が投げかけたものに対してアニメーターなり演出家なり役者が、どんな反応を示すのか。それが思っていたとおりのときもあれば、「あ、こう来たか!」とまだ僕自身もわかっていなかった部分が見つかって、さらに面白くなるときもある。アニメは自分だけじゃできない部分があるから、(誰かの反応に対して)「こういうふうに持ってきたんだな」と受け入れることで自分の許容範囲が広がったり。その部分を突き詰めた上でスタッフが仕上げてきたり、役者がアフレコしたりしてくるようになると信頼関係が生まれて、より楽しめるようになるというか。そこがないと、作品作りとしてはダメだろうと思っています。

――長きにわたって監督と一緒にTVアニメシリーズを作ってきたスタッフ陣だからこそ、生み出せる作品になっているのかなと思います。

ムトウ監督 (シナリオライターには)ストーリーを書いてもらうのはもちろん、コントっぽいシナリオを書いていただくことがTVアニメシリーズでは多いんです。いつもの実生活のなかで見せるコントというか。たとえば、ひとつのお話として成立していなくてもコントとして面白ければ、そっちを活かして作っちゃったりもして。劇場とは違う見せ方というのができると思うんですよね。劇場版で普段とは別の世界に行っちゃったとしても、キャラクターの人となりはすでに成立しているのでそこはちゃんと守られる。その下地の部分を作ることは、TVアニメシリーズならでは、と思っています。

取材・文/超!アニメディア編集部

〈TVアニメ『クレヨンしんちゃん』情報〉
テレビ朝日系 毎週(土) 午後4:30~午後5:00

原作/臼井儀人(らくだ社)
監督/ムトウユージ

出演
野原しんのすけ 小林由美子
野原みさえ ならはしみき
野原ひろし 森川智之
野原ひまわり こおろぎさとみ

TVアニメ『クレヨンしんちゃん』公式サイト
https://www.tv-asahi.co.jp/shinchan/

(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

《超!アニメディア編集部》
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