坂本真綾が10枚目のアルバム「今日だけの音楽」をリリース!「自分の世界に没頭できる、没入感を味わえるアルバムになりました」【インタビュー】 | 超!アニメディア

坂本真綾が10枚目のアルバム「今日だけの音楽」をリリース!「自分の世界に没頭できる、没入感を味わえるアルバムになりました」【インタビュー】

坂本真綾が11月27日に10枚目となるアルバム「今日だけの音楽」をリリース。収録楽曲の制作過程について聞いたインタビューがアニメディア12月号に掲載されている。「超!アニメディア」では本誌に掲載できなかった分を含めたロ …

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 坂本真綾が11月27日に10枚目となるアルバム「今日だけの音楽」をリリース。収録楽曲の制作過程について聞いたインタビューがアニメディア12月号に掲載されている。「超!アニメディア」では本誌に掲載できなかった分を含めたロングインタビューを紹介。


■今の坂本真綾だから作れる「今日だけの音楽」をテーマにした1枚

――今回のアルバムは「今日聴くのと、明日聴くのとでは意味が変わってしまう、今日だけの音楽」というテーマだそうですね。

 シングルを入れずに全部新曲でやるということで、はっきりとしたテーマ、指針があったほうが作家の皆さんにもお願いしやすいだろうということで、ディレクターが先に「小説を書いてみませんか」と言ってきたんです。さすがに「小説は無理です」と言ったんですが、そこで「今日だけの音楽」というキーワードを提示してくれて。いつも聴いている音楽が、今日はいつもと違って聴こえるとか、歌詞の意味になんとなく新しい解釈が生まれることはあるよねという話題が出たんです。そこから急にイメージが膨らんで、自分の経験もベースにしつつ、ショートストーリーを書き、過ぎ去ったことにとらわれて今日を見つめないとか、まだ起きてもいない未来のことを心配して動き出せないとか、時間にとらわれるのではなくて、今ここにあるものに目を向けるという意味での「今日だけの音楽」というのが、私のなかでの定まったテーマになりました。

――作家の方にはショートストーリーを渡して、それぞれ曲なり詞なりを作っていただいたんですか?

 はい。ショートストーリーは、夢の中で女の子がいろんな人に出会って、いろんな人の作り出す音楽を聴いていくので、あなたにとっての「今日だけの音楽」って、それはどういうものだと思いますかと提示して、自由に発想してもらいました。

――初めてタッグを組まれる作家さんもいて。

 全部新曲ですから、よく知っている人にも頼みたいけど、やっぱり何人か冒険したいという思いがあったんです。私は川谷(絵音)さんとずっと一緒にやってみたくて、ついにお願いできるタイミングが来たという感じでした。大沢伸一さんは、ディレクターが「いつか真綾ちゃんの歌と大沢さんの曲のコラボレーションが見たい」という気持ちから、今回の機会にお願いしました。

――ご自身の作詞曲が5曲、作曲が1曲あります。

 今回はいつもより自分で作る曲は少なくしようと思っていました。自分にとっての「今日だけの音楽」を探しに行く物語なので、自分で書く曲は最後の1曲だけ。歌詞も、私からは生まれないような思いも寄らない発想がほしいというのと、夢の中で出会ったいろいろな人の「今日だけの音楽のあり方」を集めていきたかったので、いつもよりは少なめにしたつもりです。


――あえて、シングル曲を入れるのはやめたのでしょうか?

 過去にもコンセプトアルバムを何枚か発表していますが、世界観を統一して1からつくっていくやり方は、自分に合っているなと思っていたんです。普通はシングルが入っていたほうが手に取りやすいし、親切だろうとも思うんです。ただ、この4年間でシングルをかなりリリースさせていただいていて、それを集めただけでもアルバムの半分が埋まってしまう。そうなると、メッセージやカラーがある作品を作るのが難しいので、シングルのことは置いておくことにしました。結果、坂本真綾の今の気分だけで作るとこうなるという作品になりましたし、それをやらせていただける環境があって、ラッキーだったと思います。

――各曲についてもうかがえればと思います。1曲目の「はじまり」は、インストゥルメンタル。

 オーバーチュアがあって、そのもとになる曲をラストに配置するというのは、だいぶ早い段階で決めていました。

――2曲目は「Hideen Notes」。

 この曲は、別の機会に集めた曲で、私がすごく気に入って、アルバムでぜひ入れたいと思っていた曲です。曲自体は複雑ですが、意志の強い、1本筋の通った印象を受けて、メッセージを伝えたいときに、そういう歌詞を乗せて歌いたい曲だなと思って。本当に強いメッセージを乗せたいときにこの曲だったらすごく力を持って伝えてくれるのかなっていう気がして、今回のアルバムで一番テーマに近い歌詞を書きました。アルバムの世界観を示すいい曲になったと思います。

――歌詞のワードもひとつひとつ強いですよね。

 この曲だからこそという感じですね。非日常というか、壮大な印象の曲だから、歌詞も時間や場所を選ばず聞いてもらえるような、普遍的なテーマが似合うのかなと。

――3曲目は先ほどお話しにもあった大沢伸一さんの曲「ホーキングの空に」です。

 同じメロディーが何度も繰り返し出てくる曲なので、本業がコピーライターである一倉(宏)さんに詞をお願いするのがいいかなと考えました。短いフレーズの中に多くを表現することに長けている一倉さんだからこそ、聴く人の想像力を掻き立てるような世界観になるだろうと。実際に上がってきた歌詞は、非常に一倉さんらしいものでした。宇宙観と自分の内面を両方描き、サウンドとも相まって、無限の広がりを感じる。プラネタリウムみたいに、今、自分がどこにいるか忘れさせてくれるような、広がりのある曲になったなと感じています。

――4曲目は川谷さんの「ユーランゴブレット」。

 じつは、もともと作家の方にはそれぞれ1曲ずつお願いする予定でした。でも、打ち合わせのときに川谷さんから、曲を作るのがめちゃくちゃ早いというお話を聞いて。1曲目が締め切りよりかなり早くあがってきたこともあって、余力があれば別の曲もお聴かせいただけますか、と頼んでできあがってきたのがこの曲です。どちらも気に入ったので、1曲に絞る必要もないよね、ということで両方入れさせていただきました。

――9曲目の「細やかに蓋をして」もですが、かなり女性的な歌詞が印象に残ります。

 歌詞は、ご自身が書くことにこだわらないというお話でしたが、実際に上がってきたものを見たときは、お願いしてよかったなと思いました。メロディーを作った本人じゃないと乗せられない日本語のはめ方をされているんですよ。感覚的な部分で詞を入れているなと感じるところも多かったので、それは自分でも歌詞を書く際の勉強になりました。

――特に、歌詞のどの辺が印象的でしたか?

 まずタイトルの「ユーランゴブレット」って何、とか(笑)。最後の「私も頑張ります」も。独特の感性で切り取られる日常の風景がどれもハッとする表現でした。「今日だけの音楽」というテーマもすごくうまく盛り込んでくださっていて、「今日を脱皮します」のあたりはサウンドとも相まってドラマティック。やっぱり歌詞はテーマだけじゃなく、ノリというか、理屈抜きで語感に頼る部分も必要だなって。自分でもそう思うんですが、言いたいことを全部そのまま書くと重くなると思うんですよ。川谷さんはその辺のバランスを取るのがすごくお上手ですよね。

「細やかに蓋をして」もそうですが、川谷さんの歌詞は女の人の感覚をよく捉えている気がします。いろいろ頭で考えても結局勢いに任せてしまうところ、自分の中では筋が通っているけど客観的に見れば矛盾してしまう瞬間とか、衝動的な部分が描かれていて、そこがリアルなだなと感じました。

 この曲で面白かったのは、人によって刺さるポイントが全然違うところ。私の好きなポントとディレクターやエンジニアの好きなポイントが違うんです。「チケット2枚分」というところがすごく好きという人がいて、「男性はチケットを2枚分取って女性を誘い、断られた経験が誰しもあるからすごくわかる」みたいな話で。100人聴いたら、100通りの考えが浮かぶような曲になったんじゃないかなと。

――レコーディングはどうでしたか?

 この曲も「細やかに蓋をして」も、どの曲よりもレコーディングが早かったですね。不思議なくらいフィット感がありました。楽曲の提供をお願いしたいなと思ったのは私ですが、どういう化学反応が起きるのかはやってみなくちゃわからないので、冒険ではありました。でも歌ってみると、難しい曲なんだけど、その複雑さをあまり感じさせない、ひけらかさないノーブルな感じがあるというか。歌詞とメロディの関係が歌っていて心地いいので、楽しくレコーディングできました。

――5曲目の「お望み通り」は「逆光」を手がけられた伊澤一葉さんの曲です。こちらはかなりジャジーですね。

「逆光」はアッパーで元気な曲ですが、伊澤さんには「逆光」とはガラッと変わったパターンで私に曲を書いてみたいという思いがあったそうで、全然違う方向性になりました。演劇的というかドラマを感じる曲で、舞台に立っているときの延長線上にある気持ちでレコーディングをしました。この曲の主人公を演じている気分で歌えるので、すごく入り込みやすかったです。明るさと軽さを感じる曲だったので、歌詞はシニカルに皮肉っぽいことを書いても中和されるかなと思って、韻を踏んだり、言葉遊びみたいにはめていったりしました。

 シングルでタイアップがあるとつねにまっすぐであったり前向きさを求められたりしますが、アルバムはそういうところから離れて、ずるさや皮肉も出せるので、今、言いたいことをかなりぶつけて言っているかもしれません。

――6曲目の「オールドファッション」は、ポップなメロディーですね。

 アレンジのときに、懐かしい80年代のシティポップ風にしようという話が出ました。歌詞のちょっとしたフレーズやモチーフもちょっとだけ、シティ感を散りばめて。景気のいい時代の女性が言いそうな言葉を入れていくのは楽しかったです。若い人が聴くと新鮮と思うかもしれないけど、多分その親が聴くと懐かしいと感じるような曲になったんじゃないかなと。それから、この主人公となるふたりのカップルは今まさに別れようとしているところですが、不意にかかった音楽が想い出の楽しい曲で、この曲のここがよかったよねとか、かっこいいよねと遠くに行ってしまった時代をいいねと言っている。でもふたりは2019年にいるという、時代が交差する感じが書いていて面白かったです。

――7曲目の「火曜日」はバラードです。

 堀込泰行さんは、同じフェスに出たり、ライブでご一緒したりしたことが何回かあります。こちらからこの文章と共に「お願いしたいのはバラードのイメージです」とお話ししました。できあがったものがイメージ通り過ぎて感動しました。私が書いたショートストーリーのなかの「火曜日」というワードを拾って歌詞に入れてくださったのもうれしかったですし、オーダーされたことに忠実に答えながら、ご自身のカラーを出す姿が素晴らしいなと。別れを回顧するセンチメンタルな曲でありながら、弦のアレンジも豪華で広がりがある。切ないけれど、温かい気持ちになれる、繊細な曲だなと感じています。

――8曲目は「トロイメライ」。

 渡邊忍さんも以前からオファーをしていてやっと実現しました。曲はライブで盛り上がりそうな明るい曲でしたが、これこそ歌詞が難しかったです。もともとASPARAGUSは英語で歌詞を書くので、日本語を乗せるのが難しくて。でも、できあがってみたらいつもの私の感じでした。すぐ宇宙に行っちゃう感じ(笑)。

――10曲目は「ディーゼル」。作詞はお付き合いの長い岩里祐穂さんですね。作曲の古川さんとはこれが初めてで。

 古川さんの曲は、メロディーもアレンジも人をハッピーにするものでした。レコーディングしていても、その場にいるミュージシャンやスタッフがみんな自然と身体が動いてニコニコしちゃうような力を持っていて。人を素直な気持ちにさせてくれるんです。口笛やコーラス、クラップも入って「音を楽しむ」というレコーディングでした。

 歌詞は古川さんの曲を聴いてから、岩里さんが合うんじゃないかと思ってお願いしました。今までは割と明確にこうしてほしいというオーダーをすることが多かったんですが、今回はショートストーリーを読んでもらいつつ、具体的にこうしてほしいと言わなかったんです。上がってきた詞は、まさに私が思う岩里さんの「らしさ」が炸裂した歌詞だなと思って、とても嬉しかったですね。その後レコーディングの段階で、「今日だけの音楽」というテーマから、最近日本でも災害が多くて、故郷から離れなきゃいけない人や、ずっと家に帰れない人がたくさんいるということに思いを馳せ、たった1日だけ自分の故郷に帰れるとしたら、その「今日だけの音楽」をテーマにしたとおっしゃっていて。それを知ってからこの曲を聴くと、言葉に深みが増し、かわいらしさだけじゃない、ブレない軸の重みが感じられて、一層好きになりました。

――そして、ラストは「今日だけの音楽」。

 物語の結末にあたるラストの曲は自分で書くと決めていたのですが、皆さんがどんどん素晴らしい曲上げてくださるので、締めにふさわしい曲が私に書けるだろうかと不安な気持ちにもなったんです。でも、みんながすごい曲を書いてくれるからこそ、私がすごい曲を書く必要はないって考えるようになって。この物語は、もっと素晴らしい何かがあるはずとか、何か特別なものが欲しいと思って旅をしてきて、最後にたどり着くのは素朴で何の装飾もない自分の手の中にあったものというお話。だからそういう曲であればいいんじゃないかなと思い、すごく素直に書いたつもりです。お芝居の最後の曲、主人公がポツリポツリと歌いだして、クライマックスのエンディングに向かうという絵になればいいかなと。ふと出てきた「歌え、今日だけの音楽を」というフレーズをひたすら展開していくことで、派手ではないかもしれないけど、夢からだんだん現実に戻っていくような雰囲気が出せたらいいかなと思いました。

――初回限定盤には、ショートムービーが収録されたBlu-rayがつきますね。

 せっかくストーリーもあるし、ストーリーに沿って映像作品を作るというのはコンセプトを定めたアルバムでしかできないことなので。それにシングル曲がないので、1曲だけのMVを作るよりも、何曲か聴いてもらえたほうが作品全体の雰囲気がわかってもらえるかなという私の希望もありました。

――できあがった感想は?

 たっぷり時間をかけて、本当にただやりたいことをやらせてもらえたので、自分の世界に没頭できる、没入感を味わえるアルバムになり、すごく満足しています。ひとりでも多くの方に聴いてもらいたいし、これが私の思う私らしい自分なんですというのを、皆さんに知っていただきたいです。

――12月にはライブツアーもあります。

 アルバムタイトルを冠したツアーなので、アルバムをより好きになってもらい、より聞き込みたくなるライブにしたいというのが大前提です。せっかくコンセプトを決めて曲や映像を作ったので、ライブもその延長線上で、この世界観をじっくり体験してもらえるようにしたい。プラス年末ですし、ここ最近シングルもいっぱい出ていますのでそういった盛り上がる曲も聞いていただけるライブにしたいと思います。

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

PROFILE
坂本真綾【さかもと・まあや】3月31日生まれ。東京都出身。フォーチュレスト所属。8歳から子役として活躍し、1996年にシングル「約束はいらない」でCDデビュー。2019年7月には椎名林檎プロデュースによる30枚目のシングル「宇宙の記憶」をリリース。声優、エッセイ執筆、ラジオパーソナリティーなど、多岐に渡って活動中。

商品情報
「今日だけの音楽」
フライングドッグより発売中
初回限定盤:3,800円(税別)


通常盤:2,800円(税別)


 前作からおよそ4年ぶりとなる坂本真綾の10枚目のアルバム。全11曲の収録曲はすべて新曲で、川谷絵音(ゲスの極み乙女。)、大沢伸一(MONDO GROSSO)、堀込泰行(ex.キリンジ)らそうそうたるメンバーが揃った珠玉の1枚。初回限定盤には、ショートムービー「今日だけの音楽」を収録したBlu-rayが付く。

公式サイト
https://newbem.jp/  

公式Twitter 
@newbem2019

オフィシャルサイト「I.D.」 
www.jvcmusic.co.jp/maaya/

《超!アニメディア編集部》
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