アニメを通して世界を健康に!?TVアニメ『はたらく細胞』の高橋祐馬プロデューサーが目指した作品作り【インタビュー】 | 超!アニメディア

アニメを通して世界を健康に!?TVアニメ『はたらく細胞』の高橋祐馬プロデューサーが目指した作品作り【インタビュー】

「アニメディア2月号」では、「読者が選ぶアニメキャラ大賞2018」を掲載。TVアニメ『はたらく細胞』からは、赤血球が“明るかったで賞”、血小板が“かわいかったで賞”を受賞。このW受賞を受けて、高橋祐馬プロデューサーのコ …

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 「アニメディア2月号」では、「読者が選ぶアニメキャラ大賞2018」を掲載。TVアニメ『はたらく細胞』からは、赤血球が“明るかったで賞”、血小板が“かわいかったで賞”を受賞。このW受賞を受けて、高橋祐馬プロデューサーのコメントをご紹介。超!アニメディアは掲載しきれなかった部分を含めたロング版をご紹介する。


――ふたりはどんな受賞の挨拶をしてくれそうですか? 

 赤血球は「私なんてそんな……。でも、うれしいので、今日も元気に働きます!」ですかね。血小板は「やったー! 白血球のお兄さん、こんな賞もらったよ」なんて言いそうです(笑)。

――ふたりの受賞について感想をお聞かせください。

 素直にうれしいです。血小板は、本当にかわいかったですね。単なる「かわいい」ではなく「一生懸命に働いていて、かわいい」ところをフォーカスされたと思うので、本人も喜ぶのではないでしょうか。赤血球の「明るかった」も、彼女の頑張りの評価として、美しい形容詞だと思います。

――改めて、作品の魅力について伺えますか?

 本作は、人間の体のなかの話を取り上げたものです。観た人は「自分の体のなかで細胞たちがこんなに一生懸命に働いてくれているのか」と驚かれると思います。すべての人の体内での話なので、老若男女の違いを越えて楽しんでらえたのではと思っています。世界各国のアニメイベントでいろいろな細胞のコスプレをするファンが続出して、さまざまな国の言葉でリアクションをいただきました。国籍や文化の壁を飛び越えて伝わったのは、うれしかったですね。

――自分の体が愛おしくなりますね。

 僕は原作マンガを読んだときにそれを感じました。作品のキャッチコピー「一番身近だけど一番知らなかった物語」のとおり、新鮮な驚きでしたね。しかも、キャラクターたちがすごく生き生きとしていて、エンタメのドラマになっている。そうした原作マンガの魅力を損なうことなく、スタッフが面白いアニメにしてくださいました。アニメらしいアニメで、素敵だなと思える作品だったと思います。


――舞台裏の思い出深いエピソードを教えてください。

 アフレコスタジオのロビーには、いつもお昼ご飯が用意されていました。僕には、キャストのみなさんがそろって食事をする様子が、さまざまな細胞が同じ空間に集まっている本作の映像を観ているように感じられました。普段あまり絡まない細胞役の声優さん同士がしゃべっている。または、倒す側と倒される側である、白血球(好中球)役の前野智昭さんと細菌役の福島潤さんが一緒に食べているとか。そこに鈴木健一監督や僕らも混ざって、和気あいあいとした空気が流れる現場でした。作品自体も温かい空気が流れていましたが、みんなでお昼ご飯を食べている時間の空気は、まさに『はたらく細胞』っぽいほがらかさ。すごくいい現場だったなぁと思います。

 また、音楽を担当された末廣健一郎さんとMAYUKO(ゆうまお)さんがアフレコ現場へ見学にいらしたり、前野智昭さんが舞台『体内活劇「はたらく細胞」』の見学に行かれたりしています。体のなかにいろんな役割の細胞がいるように、作品も多くのスタッフやキャストがいます。それぞれ普段は顔を合わせることは少ないのですが、実際に顔を合わせてコミュニケーションを取っている様子は、まるで体のなかで細胞同士がやりとりをしているような感じ。「いろんなプロが集まって力を合わせている」といった空気があり、それも『はたらく細胞』らしいなぁと思いましたね。

――作品の視聴者を想定する際に、性別は重要な項目です。本作は男女子別に対象ユーザーを絞ることを考えましたか?

 むしろ、男女どちらか向けに作る発想をやめました。作品のテーマが普遍的なものですし、擬人化という設定のなかでの男女キャラであって、男女の性差はありません。みんなが自分の仕事をまっとうするプロフェッショナルたち。極端に言えば、この作品は、頑張っている人を掘り下げるドキュメンタリー番組のイメージ。一生懸命に頑張っている人を応援したくなる作品です。つまり、誰か向けではなく、みんな向け。それが最適解というか、それを目指す感じでした。だから、白血球とキラーT細胞にフォーカスして女性向けにとか、赤血球と血小板をメインにして男性向けにとか、そんなことは思ったことがありません。なぜなら、すべての人の体内で起こっている物語なので、観た人が「自分の物語ではない」と感じたら、この作品は失敗だからです。

 そんな「誰が観ても面白い」を目指した本作も、免疫細胞が細菌を倒す表現として血しぶきを上げるのは「女性や小さなお子さんが観たときに、どうなのか?」という議論はありました。でも、免疫細胞が細菌を処理する「貪食」という体の作用をエンターテイメントとして表現するものとして、ある程度は必要です。そこで「血みどろだけど爽やか」な表現を目指しました。とはいうものの、原作マンガをそのまま真摯に映像化した、というのがすべてですけどね(笑)。だから、宣伝プロモーション展開やグッズ製作でも、誰かに向けということはとくに考えなかったです。

――OPテーマやEDテーマに舞台裏の逸話はありますか?

 OPテーマは、最初から4人で歌うと決めていました。「細胞たちが頑張る歌」という漠然としたコンセプトと、鈴木健一監督から「元気な感じのスカ(テンポが速いジャマイカの音楽)がいい」というオーダーがありました。それを音楽担当のMAYUKOさんに伝えたところ、最初に上がってきたOPテーマ「ミッション! 健・康・第・イチ」は、ほぼそのままで完成。少しだけ歌詞の相談をしたくらいでした。「今日も元気に頑張ろう」というポジティブさをイメージした感じです。ちなみに「出てこいや」の歌詞は、MAYUKOさんのアイデアです(笑)。また、ClariSさんに歌っていただくことを熱望したEDは「今日も一日お疲れさま」という歌で、OPテーマと対比させました。

 鈴木監督は「マンガをそのまま魅力的に動かす」など、イメージが明確でした。音楽に関しても、一番最初に作ったBGMのテーマに「運動会」というコンセプトを打ち出してくれました。多人数が同じ空間でワチャワチャしているイメージです。また、くしゃみがミサイル、涙がダムの決壊のように「小さなことを大仰に」がこの作品の特徴なので、地球滅亡を描くハリウッド映画のような壮大な曲など、音楽のイメージも明確でした。

――献血とのコラボや熱中症エピソードの無料配信などが話題になりましたが、どんな狙いがあったのですか?

 この作品で目指したのは、ひとつはもちろん「面白いアニメを作る」こと。それと同じくらい大事に思っていたのは「作品を通して世界を健康にしよう」ということでした。本作を観て体に関する知識が増えた人が「細胞のためにも栄養価の高いものを食べよう」「ちゃんと休息を取ろう」なんて考えてくれればいいな、と。また、13話の輸血のエピソードを通じて、実際に献血をしていただく。あるいは、熱中症のエピソードの無料配信で熱中症について知り、熱中症を予防していただく。そうした形で世界を健康にする手伝いをしたかったし、それが作品を知ってもらうことに繋がればベストですし、少しでも世界が健康になることに役立てたならば幸せです。

――人間ドックを受けたというキャストの方もいましたね。

 エンタメの使命は誰かを楽しませるとか、ちょっとでも世界をいい方向にするとか、感動させることだと思います。そういう意味では、誰かの背中を押して笑顔にするお手伝いができたのであれば、とても光栄なことですし、頑張ったスタッフやキャストはみんなすごいなと思います。

取材・文/草刈勤

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(C)清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction

《超!アニメディア編集部》
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