物語はレヴェリー編へ!シリーズディレクター・深澤敏則が『ワンピース』ホールケーキアイランド編を振り返る「ルフィVSカタクリはまさに男と男の戦い!」【インタビュー】 | 超!アニメディア

物語はレヴェリー編へ!シリーズディレクター・深澤敏則が『ワンピース』ホールケーキアイランド編を振り返る「ルフィVSカタクリはまさに男と男の戦い!」【インタビュー】

ルフィたちのサンジ奪還作戦から始まり、ついに結末を迎えた『ワンピース』のホールケーキアイランド編。四皇ビッグ・マムの脅威や、その息子であるカタクリとの激しいバトルなど、ドラマチックな展開が満載だった内容について、シリー …

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 ルフィたちのサンジ奪還作戦から始まり、ついに結末を迎えた『ワンピース』のホールケーキアイランド編。四皇ビッグ・マムの脅威や、その息子であるカタクリとの激しいバトルなど、ドラマチックな展開が満載だった内容について、シリーズディレクターの深澤敏則に語ってもらったインタビューが、「アニメディア5月号」に掲載。超!アニメディアでは、本誌に入りきらなかった部分を含めたロング版をご紹介する。


――ホールケーキアイランド編を終えて、今の率直なお気持ちは?

 これまでの『ワンピース』は、悪いヤツを倒すところにカタルシスを感じる話が多かったんですけど、今回はサンジを連れ戻しに来て、ホールケーキアイランドから逃げるというのがメインでした。その逃走劇をいかに面白く、ワクワクできるように見せるか。そこに苦心したシリーズでしたね。

――ビッグ・マム海賊団の最高戦力とも言われるカタクリとルフィとのバトルでは、どういった点にこだわりましたか?

 とにかく長い戦いでした。カタクリは先を読む力があるんですけど、そこをわかりやすく見せるのが難しくて、アニメでは目を赤く光らせたときに先読みしているという描写を入れました。その力をフルに使われるとルフィは攻撃を一発も当てられず、とにかく序盤はつらい戦いでしたね。逆にルフィは予測不可能な動きと天性の格闘センスで、カタクリの攻撃をギリギリにかわしていくので、だんだんとカタクリもルフィに攻撃を当てら れずイライラしていくという流れを作りました。まさに男と男の戦いという感じで、戦いのなかでルフィが覚醒して成長していくというのは、少年マンガ的で熱いところだったと思います。カタクリも次第にルフィと互いを認め合って、兄弟たちを守るために装っていたクールな自分をかなぐり捨てて、素の自分としてルフィと拳をぶつけ合う。そこに戦いの面白さを見出せたので、いかに熱く盛り上げていくかを考えました。

――カタクリの強さを、どう見せるかもポイントでしたね。

 カタクリのほうが絶対的に強いですからね。話数によっては本編の半分から7割くらいが格闘シーンになるので、つい描画のしやすい対等に殴り合うアクションを入れそうになるんですけど、そうならないように注意し、カタクリとルフィの力の差を表現することを意識しました。ルフィが見聞色の覇気を覚醒させていくところを原作よりも膨らませて、丁寧に少しずつ描いていったので、結果あれだけの長い戦いになりました。

――また、カタクリの意外な素顔が明らかになるシーンもありました。

 原作でも一種の不気味さがあるシーンでしたけど、後半を踏まえて観ている人にカタクリにも感情移入してほしい気持ちがあったので、彼の意外なかわいさやギャップに心が動くように作りました。『ワンピース』って、キャラクターの素や弱みをちょっとだけ見せて惹きつけるシーンが多いですよね。カタクリは戦いを通してルフィを認め、素の自分をさらけ出し、最後には顔を隠していたマフラーも外して殴り合うという描写があったりました。個人的にも思い入れのあるキャラクターになりました。

――大軍団のビッグ・マム海賊団を描くうえで、大変だった点などはありましたか?

 とにかく数の多さですね。ファミリーが何百人もいて、事前に尾田(栄一郎)先生からキャラクターたちの解説付きスケッチをいただいたんです。原作だと小さなコマにしか出てこないキャラクターもいるんですけど、それを尾田先生のスケッチと照らし合わせて、1体1体設定画を作っていきました。ビッグ・マム海賊団は色づかいが赤とかピンクとか派手なので、それぞれの色にも海賊団のカラーが出るようにこだわりました。ただ、原作でもまだカラーで描かれたことがないキャラクターが多かったので、お茶会の回(830話)はキャラクターの色を指定する作業で気が遠くなりましたね。

 ビッグ・マムの描写も難しかったです。四皇のひとりとして相当強い力を持っていますけど、ドレスローザ編のドフラミンゴがかなりクセ者で魅力的な悪役だったので、あの七武海の上を行く四皇としてのすごさは、どうしたら出せるだろうと思いました。七武海のメンバーはスマートで知的な印象がある一方で、四皇は本能のままに動いて、子どもみたいな面があるんですよ。その純粋ゆえの怖さが四皇の強さで、ビッグ・マムも「お菓子が 大好き」「甘い物を食べたい」という気持ちだけで島を滅ぼして、いろんなものを破壊しまくる。だから演じる小山茉美さんにも、怖いところは怖くやりつつ、基本的にはビッグ・マムのかわいらしさも意識していただきましたね。小山さんのお芝居に助けられながら、いかに四皇としての“格”を出していくか……という感じでした。


――シリーズの前半では、サンジを巡るさまざまなドラマもくり広げられました。

 ホールケーキアイランド編では、作画の面でサンジの表情やアクションをカッコよく描くことを意識しました。そこで市川(慶一)さんに総作画監督として入っていただき、全編にわたって手を入れてもらいました。とくに前半は、家族や過去のことでサンジの心情を描く部分が多かったので、観ている人が彼のドラマに入り込めるようにしたかったんです。あと、ルフィとのバトルは心苦しいところがありましたね。仲間とは絶対に戦いたくないルフィと、ルフィを守るために帰らせたいサンジ。あそこは作っていてもつらかったです。

――サンジの家族であるジェルマ66も登場しましたが、印象に残ったシーンはありますか?

 後半のルフィとサンジの父親・ジャッジが別れる場面では、ジャッジがサンジをけなすようなことを言いますが、それは全部ルフィにとって「サンジのいいところ」で、サンジという人間の受けとめ方がまったく違う、対比の面白さがありましたね。ジャッジの言葉を「あいつ、なんでお前のいいところばかり言うんだ?」って、あっさり流しちゃうのがルフィらしい反応じゃないですか。あれをアニメオリジナルで作るとしたら、もっとルフィに反論させて、重いシーンになったと思うんですよ。でも試写のときに声と音楽が入った映像を観たら、むしろあっさりしているからこそ心にスッと入ってくるものを感じました。そして、ジャッジが最後までクソ親で、情にほだされないというのもさすがでした。

――キャスト陣の芝居によって、シーンに深みが増すということはありそうですね。

 声が入って芝居がつくと、やっぱり印象が変わりますね。絵コンテの段階で、ある程度は頭のなかで芝居の声を流しながらプランを立てていくんですけど、『ワンピース』の役者陣ってみなさんすごくて、僕らが想定した一歩も二歩も上の芝居を返してくるんですよ。もちろん前後の流れ的に合わない箇所は修正してもらいますけど、声の説得力によってキャラクターの心情が「そういうことなのか」とスッと入ってきて、納得できるようになる部分はたしかにあります。

――サンジの婚約者として登場したプリンも、これまでの本作にいないヒロインだったかと思います。

 プリンも本当に健気でいい子でしたね。彼女は本当の自分にフタをして、「みんな私のことを醜くて気持ち悪いって言うんだ。私はそういう存在なんだ」という気持ちを持ち続け、偽の自分を演じてきた。だけど、結婚式でのサンジの「なんて美しい瞳だ」っていうセリフで心を押さえつけていたフタがちょっと開いて、無意識にポロポロッと涙を流す。ラスト(877話)でも振り返ったところですけど、サンジに別れを告げるプリンのシーンには一番力を入れましたね。涙を流してサンジにキスをするところとか、そのサンジの記憶を抜いてしまうところとか、もう悲しすぎて……。僕としては、ピークがキスシーンに来るような意識で構成しました。

――ホールケーキアイランド編ではビッグ・マム登場時のミュージカルや、ジェルマ66の変身シーンなど、話題になった演出も多かったですね。

 原作で最初にビッグ・マムの登場シーンを読んだとき、フキダシに音符が書いてあって ビッグ・マムが踊るように動いていたから、「これはミュージカルだな」と考えました。そこで音楽の田中公平先生に、曲を作っていただきました。ホールケーキアイランド編では各ポイントにいくつかミュージカル曲を作っているんですけど、基本的に歌詞は原作のセリフをそのまま使い、そこに公平先生が曲をつけていくという感じでした。全体的に色づかいもキャラクターたちもにぎやかなシリーズだったので、遊びのひとつとしてミュージカルやジェルマ66の変身シーンがありました。ジェルマ66のところも原作を読んだときに「変身シーン来たか〜」と思いました。東映アニメーションは変身シーンをこれまでいっぱい作っているので(笑)我が社のノウハウを最大限に活かしましたけど、アイキャッチもジェルマ66にしたのはプロデューサーのアイディアですね。公平先生にアイキャッチ用の短い曲も作ってもらいました。力を入れて作った変身シーンなので本編だけで終わらせるのはもったいないと思い、新しいOPにも入れました。

――ジェルマ66は戦隊ヒーローをイメージしたカラーリングが非常にアニメ映えしていました。

 ジェルマ66は空を飛べるし攻撃力も多彩だったので、もっとアクションシーンをやりたかった部分はあります。最初のころは具体的な攻撃方法がよくわからなくて、原作で描 かれているシーンをちょっと膨らませるくらいでしたけど、後半のカカオ島ではやっと技が出せました。サンジとの別れのシーンもありましたが、兄弟たちは最後まで馴れ合わず、反発しあっているなかでの別れで、兄弟たちの距離感はかなり意識しながら描きましたね。サンジのために戦うんだけど「とっとと行けよ」みたいな。

――また、ホールケーキアイランド編のラストとなる877話では、海での戦いに流れる荘厳な音楽が印象的でしたね。

 原作でも全編に渡って歌詞が書かれていたので、公平先生と曲について相談をしました。ビッグ・マムの曲はミュージカル仕立てでしたけど、あそこは具体的な誰かが歌っているような感じではなく、第三者目線というか“神の目”視点の歌詞だったんですよね。だから、キャラクターに歌わせるわけにはいかないなと思いました。僕が最初に原作から感じたイメージは鎮魂歌でした。そこで歌は公平先生のお知り合いのソプラノ女性歌手にお願いし、男性パートは本編でシュトロイゼンを演じている壤晴彦さんに歌ってもらい、「アメイジング・グレイス」みたいな綺麗な曲に仕上げてもらったんです。ペドロなど死んで しまったキャラクターたちだけでなく、戦いに敗れたカタクリとか、サンジと別れたプリンとか、傷ついた者たちを全て労るような、そういう意味合いで曲を作ったシーンでした。

――さらに終盤では、ジンベエとタイヨウの海賊団が、ビッグ・マム海賊団と熱い海上バ トルを展開しました。

 シリーズの終盤でサウザンド・サニー号に乗り込んだジンベエは操舵士として活躍しました。あそこまで敵と海上でやり合う描写って、じつは今まであまりなかったんです。それが今回、ビッグ・マム海賊団の大船団に囲まれ、巨大な波や砲撃のなかを小さいサニー号が逃げていく展開となり、そこを操舵技術でうまく切り抜けていくジンベエの存在は大きかったと思います。ジンベエが加わったサニー号の面白さというのも描けましたね。そして、ジンベエがルフィから仲間に誘われたことで、ビッグ・マムに盃を返し、麦わらの一味に入りたいと意思表示するシーンもありました。あそこもシリーズの見せ場だったと思います。

――では、今後のレヴェリー(世界会議)編の見どころをお聞かせください。

 レヴェリー編は久々に登場するキャラクターがいっぱいいて、すごくにぎやかで楽しいと思います。じつは世界会議の開催中もルフィの存在感は大きいんですよ。新聞に記事がバーンと出て、四皇に牙をむいたとか、5000人を越える麦わら大船団を従えているとか、「5番目の『海の皇帝』現る!」みたいに話が盛られていて。ルフィが持つ“人を惹きつけていく力”を海軍も脅威に感じ始め、いろんなものを巻き込んでいくルフィを中心とした渦が徐々に大きくなっていく……という描写もあります。また、会議の場ではビビ、レベッカ、しらほしと、ルフィに助けてもらったお姫様たちが出会い、ルフィの話題で盛り上がったりもします。それ以外にもルフィとつながりのあるキャラクターたちが続々と出てきて、そういう部分でもルフィの存在感が際立つというのが、今回の見どころではないでしょうか。レヴェリー編は『ワンピース』という作品自体の核心に迫る部分が多く、今後の展開につながる伏線もたくさん散りばめられているので、あとから観返したくなるエピソードになると思います。ぜひとも観ていただきたいですね。

取材・文/株田馨

〈アニメ『ワンピース』〉
毎週日曜日朝9時30分よりフジテレビ系列で放送中

■キャスト
モンキー・D・ルフィ:田中真弓 
ロロノア・ゾロ:中井和哉 
ナミ:岡村明美 
ウソップ:山口勝平 
サンジ:平田広明  ほか

■スタッフ 
原作: 尾田栄一郎 「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載 
企画: 狩野雄太(フジテレビ) 櫻田博之(東映アニメーション) 
制作:フジテレビ・東映アニメーション

<尾田栄一郎公認ポータルサイト> 
https://one-piece.com/

<ONE PIECE.com 公式ツイッター> 
https://twitter.com/opcom_info

<劇場版『ONE PIECE STANPEDE』>
http://www.onepiece-movie.jp

(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

《超!アニメディア編集部》
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