TVアニメ『火ノ丸相撲』宇田鋼之介総監督&阿部敦が語る“潮火ノ丸”の魅力「火ノ丸が熱さの最高点を上げていく意識でいないと」【インタビュー】 | 超!アニメディア

TVアニメ『火ノ丸相撲』宇田鋼之介総監督&阿部敦が語る“潮火ノ丸”の魅力「火ノ丸が熱さの最高点を上げていく意識でいないと」【インタビュー】

高校生力士たちがしのぎを削るTVアニメ『火ノ丸相撲』。いよいよ最終話を迎える熱い展開のアニメから、宇田鋼之介総監督と潮火ノ丸役の阿部敦のインタビューを、「アニメディア4月号」にてご紹介。超!アニメディアでは、掲載しきれ …

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  • TVアニメ『火ノ丸相撲』宇田鋼之介総監督&阿部敦が語る“潮火ノ丸”の魅力「火ノ丸が熱さの最高点を上げていく意識でいないと」【インタビュー】

 高校生力士たちがしのぎを削るTVアニメ『火ノ丸相撲』。いよいよ最終話を迎える熱い展開のアニメから、宇田鋼之介総監督と潮火ノ丸役の阿部敦のインタビューを、「アニメディア4月号」にてご紹介。超!アニメディアでは、掲載しきれなかった部分を含めたロング版をお届けする。


――まず、作品の感想をお願いします。

宇田 非常に『少年ジャンプ』作品らしいけど、最近は少ないタイプという感じ。僕のなかでは、血湧き肉躍るところがすごく面白い。なにより「相撲」という題材がそれを引き立てていました。相撲は基本的に一対一の戦いなので、燃えるシチュエーションになりやすい。とにかく熱い作品というのが第一印象で、実際にそのとおりでした。

阿部 いい意味で泥臭い作品でした。泥だらけで、汗だくで、歯を食いしばって戦うという作品が個人的には大好きなので、そんな作品にメインという形で関われたことはすごくうれしいです。

――印象的なエピソードといえば?

宇田 それぞれ印象深いので、ひとつに絞りきれません。デーモン閣下に演じていただいた蟹江医師のエピソード(第16番)も非常に印象深いですし、各キャラクターのエピソードも好きです。第15番の火ノ丸対天王寺獅童の取組は、作画も演出もいつも以上に頑張ってくれましたので、非常に盛り上がったと思います。

阿部 石神高校の沙田美月との戦い(第9番)は記憶に残っているかな。劣勢の火ノ丸が「やりつくしたのか、何もできずこのまま」と、悲しげな表情を見せるシーンがあるんです。それが印象的。それまですごく力を入れて演じるシーンが多かったなかで、ふっと力を抜き、本当にダメかと思ったところから、「ふざけるな!」と思いっきり土俵を踏みしめて、また向かっていく。火ノ丸自身の力だけでなく、見守ってくれるダチ高の仲間とともに勝ったことが印象に残りました。そこが前半の山場だったと思います。

――宇田総監督が演出でこだわった点は?

宇田 作画の実務は山本靖貴監督に任せています。ただ、画面の熱が下がらないように注意しました。僕は音響監督も担当したので、アフレコでは「そこはテンション高く、振り幅強く、メリハリください」といった指示をして、役者の方に熱い演技をしてもらいました。あえて音楽を入れたり入れなかったりと、メリハリや強弱をつけています。そういうところも含めて、とにかく熱さにこだわりました。

阿部 僕は命を削っていました(笑)。声優は、ほかの仕事に備えるなど、プロとして体をケアしなくてはいけないところもあります。でも、それを考えていてはできない仕事もあって、その最たるもののひとつがこの作品でした。火ノ丸は、気を抜いてはダメなんです。ほかのキャラクターは火ノ丸に感化されてついていくので、火ノ丸役の僕が熱さの最高点を上げていく意識でいないと、全体の熱は上がりません。

宇田 阿部くんが座長でよかったです。

――火ノ丸がみんなを引っ張っていくのは、ストーリーと同じような関係ですね。

宇田 箱(録音ブース)のなかは、ストーリーとシンクロするところがあります。画を作る場合も、作品に対する目に見えない熱量や気構えのようなものが絶対にフィルムに乗り移るんです。ですから、熱量が低くならないようにするのが我々の役目。役者もそれに乗ってくれれば、より熱さが伝わると思っています。


――「熱くして」と指示する以外にこだわった点はありますか?

宇田 自分も暑苦しいほうがいいだろうと思ったので、アフレコを始める前に「朝礼」をしていました。普通はあまりやらないことですが「今日はこういう話です」とか「誰々が登場する回です」など、一言二言、声をかけるようにしていたんです。

阿部 そうした何気ないコミュニケーションは、結果的に作品の出来に表れていると思います。みんなでちゃんこを食べに行ったこともありますが、それが現場の結束力になり、空気感として芝居に出ると思うので、スタッフと役者陣のコミュニケーションは必要じゃないかな。

――おふたりは潮火ノ丸というキャラクターをどのようにとらえているのですしょうか?

宇田 最初から最強で余裕のある主人公と違い、火ノ丸はいっぱいいっぱい。小学生時代は2年連続で横綱になったけど、体格に恵まれなかった中学生時代は、相撲に勝てなくなったと同時にお母さんが亡くなり、モチベーションがなくなっていたんじゃないかと思います。でも、大和国親方の「3年先の稽古をしなさい」という助言が彼を支え、頑張ってきた。「万能じゃないところが好きだなぁ」と絵コンテを描きながら思っていました。

阿部 最初、火ノ丸の声は、わりと低めでがっしりした感じにしていました。でも、宇田総監督に「日常のほがらかで人なつっこい感じと、土俵の上での覚悟や殺気のギャップを出したい」と言われたことから、現在の声にシフトしました。火ノ丸が発揮する闘争心は、殺気寄りなんですよね。苦労してきたし、気を張っているところもあるので、陽の存在に見えて、闇寄りの属性を持っています。でも、ダチ高のメンバーと一緒に戦うなかで火ノ丸は変わっていきました。闇が、いつの間にか別の力に変わった感じ。今までは全方位に気を張ってひとりで戦っていたのが、背中を預けられる仲間ができた。それがすごくいいですね。

――ダチ高のメンバーは、火ノ丸にとって、どんな存在だと思いますか?

宇田 ひと言で言うと「救い」。救いができると余裕ができて、火ノ丸の力はそれまで以上のものになる。中学生時代は勝てなかった火ノ丸が連戦連勝するというミラクルに信憑性を与えてくれるのが、ダチ高のメンバーだと思います。

阿部 僕は、基本的にこれまでの火ノ丸はひとりだったと思います。早くに両親を亡くして、孤独な戦いを続けてきた。だから、ダチ高のメンバーは「家族」に近いものだった気がします。「家族寄りの仲間」かな。

――火ノ丸も含めたダチ高相撲部メンバーは物語のなかで変わっていきましたね。

阿部 インターハイの個人戦で天王寺獅童に敗れるまで、火ノ丸は「俺が勝たなきゃいけない」と気を張って戦い、相撲部のみんなも火ノ丸を信頼するがゆえに、彼に寄りかかっていました。でも、個人戦で腕を負傷した火ノ丸に対して、みんなは「団体戦の初戦は俺たちだけで勝って次につなげるから、試合を休んで腕を治療してこい」と言ってくれました。いつの間にか、お互いに寄りかかるに値する存在になっていたんです。火ノ丸が「みんなは勝ってくれる」と信じられたのも、みんながそれに応えて勝ち進んだのも、大きな変化ではないでしょうか。

宇田 そこは、ダチ高のメンバーに対する火ノ丸の想いの大きなターニングポイントです。物語初期、アニメでは割愛した原作のセリフに「自分と千比路がポイントゲッターで、あとひとつの星を誰が拾うのかが勝利の鍵」という意味のものがありました。そのときの火ノ丸は、ほかのメンバーを、まだそれほど信頼していなかったと思うんですよ。それが、蟹江医師の治療を受けているときは「ほかのメンバーが負けるとは思っていなかった」と話しています。いつの間にか仲間を信頼していて、まるで不安を感じていません。さらりと描いていますが、じつは火ノ丸の想いの転換点でした。

「持っている人」久世と戦う火ノ丸の表情に注目

――決勝で当たりそうな久世草介は火ノ丸にとって、どんな存在なのでしょう?

宇田 彼は、体格や両親といった、火ノ丸が持っていないものを全部持っている人間。そういう対象として描いています。火ノ丸の好敵手として天王寺獅童という絶対的な王者もいるのですが、「火ノ丸が戦う最後の相手を誰にするのか?」という構成上の問題を考えたとき、やはり久世だろうということになりました。力士としての実績で言えば、天王寺のほうがはるかに上です。しかし、この作品の隠れたテーマとして「持つ者と持たざる者の対比」というものがあります。久世自身は、全部持っていることが重荷になっています。そんな久世にとって、重荷がない火ノ丸はうらやましい存在です。ただ、無意識の部分なので、久世自身は気づいていません。その一方で火ノ丸には、そういったものが欠けているわけです。もっとも、火ノ丸はそういう目で久世を見てはいませんけどね。久世が持っていないのは「負ける経験」。勝ちしか知らない彼は、全力を出して負けることが憧れなのかもしれません。火ノ丸にしてみれば「何言っとんじゃコラー!」みたいな感じですよね(笑)。

阿部 僕は、久世は自分の意志で相撲を取っていないキャラクターだと思います。「大和国の息子として、父の名に恥じぬように」というところで相撲を取っているキャラクターなので、淡々と相撲をこなしているように感じました。そこが火ノ丸との一番の違いなのかな。

――火ノ丸と久世に天王寺も含めた3人のキャラクターの対比が面白いですね。

宇田 天王寺は、いわば火ノ丸が持ち得なかった体格的な面での未来の姿。そういう意味では、天王寺は火ノ丸にとって手が届く存在。手が届かないというのは格の違いではなくて、感覚の違いです。

――久世を演出するにあたってこだわった点は?

宇田 阿部くんが言ったように、久世は淡々としています。彼は本気で相撲を楽しんでいるかというと、楽しんでいないというか、わからない。義務になっているから、淡々とやるしかない。だから役者(武内駿輔)には、言動や相撲の取組が淡々としたものになるようにお願いしていたし、画作りもそのようになっていると思います。山本監督もわかってくれているので、絵コンテ段階からそのようになっています。個人戦準決勝(第17番)で久世と天王寺が戦って、どちらも新たな怪物として強さの段階は上がりましたが、久世のモチベーションは変わっていません。変わるときは、火ノ丸との戦いという気がします。

――では、最終話の注目ポイントは?

宇田 全体としか言いようがないですね。要素を詰め込みすぎて「あと20分欲しいなぁ」と思いながら絵コンテを描いていました。ぜひ、楽しみにしてください!

阿部 火ノ丸は、初めての取り組み方や表情を見せるかな。これまで彼は死にものぐるいで歯を食いしばり、死地に赴くような気持ちで取組をして、経験を積みました。久世草介という強敵と取り組むにあたり、これまでのいろいろなことを経たうえで出てくる表情はそれなんだ、というところに注目してほしいです。

宇田 火ノ丸の表情に着目していたのが天王寺。彼にも背が低かったなどの“暗黒時代”があり、それを乗り越えてきた。だから火ノ丸に「そんな表情をしているうちは勝てない」と言っていたものね。

――土俵へ上がる時に見せる火ノ丸の表情に注目ですね。最後に部活選びに迷っている読者にメッセージをお願いします。

阿部 中学時代も高校時代も3年ずつしかありません。3年はあっという間です。まず仮入部で自分に合っているのか試すのもいいのでは。大切なのは、好奇心とフットワークの軽さ。そのふたつがあれば、楽しい部活を見つけられるでしょう。

宇田 「とりあえずやってみたら」かな。迷っているのなら、まずやってみる。悩むのはそこからでいいじゃないですか。僕は、悩んだあげく部活に入りませんでした。バレーボールのセッターに憧れていたのですが、当時は列の先頭になるくらい背が低くかったので、無理だと思って諦めました。でも、諦めずにやるほうがいいですよ。僕は、中学の3年間で現在の172cmと同じくらいまで身長が伸びましたから。やっていればよかった!

取材・文/草刈勤

〈TVアニメ『火ノ丸相撲』情報〉
TOKYO MX 毎週金曜22:00~
AbemaTV 毎週金曜22:00~
BS11 毎週金曜23:30~
サンテレビ 毎週金曜23:30~
テレビ愛知 毎週土曜26:50~
TVQ九州放送 毎週金曜25:58~
とちぎテレビ 毎週水曜日23:00~
ANIMAX 11月4日から毎週日曜日19:30~(ほかリピート放送あり)
※放送日時が変更になる可能性がございます。

■スタッフ
原作:川田「火ノ丸相撲」(週刊少年ジャンプ連載)
総監督:宇田鋼之介
監督:山本靖貴
キャラクターデザイン:田中紀衣
メインアクション作監:楡木哲郎
美術監督:市倉敬
色彩設計:長尾朱美
編集:渡邉千波
撮影監督:武原健二
音楽:ジェイムス下地
アニメーション制作:GONZO
制作:NAS

■キャスト
潮 火ノ丸:阿部 敦
小関信也:落合福嗣
五條佑真:熊谷健太郎
國崎千比路:佐藤拓也
三ツ橋 蛍:村瀬 歩
辻 桐仁:寺島拓篤
五條礼奈:小松未可子
堀 千鶴子:田辺留依
久世草介:武内駿輔
狩谷 俊:吉永拓斗
四方田 尽:杉山紀彰
澤井理音:八代 拓
ダニエル・ステファノフ:冨森ジャスティン
沙田美月:石川界人
金盛 剛:木村 昴
荒木源之助:浪川大輔
真田勇気:嘉人
間宮圭一:松川裕輝

TVアニメ『火ノ丸相撲』公式サイト
https://hinomaru-zumou.com/

漫画「火ノ丸相撲」公式 Twitter 
@hinomaru_zumou

(C) 川田/集英社・「火ノ丸相撲」製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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