「週刊少年ジャンプ」で連載されていた麻生周一による人気マンガ『斉木楠雄のΨ難』。TVアニメは2016年7月に第1期、2018年1月に第2期、同年12月に完結編が放送。そして、2019年12月30日(月)より『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』がNetflixにて配信される。今回はシリーズを通してアニメの監督を務める桜井弘明にインタビュー。これまでのシリーズを振り返っていただきつつ、『Ψ始動編』の見どころについておうかがいした。
――今回、アニメ『斉木楠雄のΨ難』シリーズの最新作となる『Ψ始動編』がNetflixで配信されることとなりましたが、改めて監督が原作を読んだときに感じた率直な印象を教えてください。
とにかく麻生先生のセンスがすごい。この一言に尽きます。キャラクターもみんな濃くて魅力的だし、バカっぽい作品なのに、いい話も出てくる。それがいいんですよね。
――そんな原作をアニメ化するにあたって意識した点は?
まずは余計なことをしないように、という考えでした。媒体が紙から映像に変わることは意識しつつも、なるべく原作のまま、原作のセンスを壊さないようにということを気を付けていましたね。それから、雰囲気が掴めてきたところでアニメオリジナル要素もちょくちょく入れていったという感じです。
――原作のイメージが壊れないように意識した?
そうですね。特に原作を読んでいた方が「あーあ、こんなアニメにしちゃって。ぷぷ」っていう作品にしてはいけないというのは意識していました。
――アニメは早口……と言いますか、キャラクターの喋る尺が短いなかでセリフをギュッと押し込んでいたのが特徴的でした。
1話を4分にまとめるという方針だったので、そのフォーマットのまま、ここまできています。その尺に収まるようにセリフを入れていたら自然とギュッとなって早口になったという感じなのですが……やっていくうちに加速するんですよね(笑)。役者さんたちも一人で練習したときよりみんなで合わせたときのほうが相乗効果で早くなると言っていました。だから、やっていくうちに自然とみんなでスピードアップしていったんじゃないかなぁ。
日本の声優さんはすごいですよね。あのセリフの速さなのに、クリアに発音できて、しかも音を立てずにマイク前から入れ替わる。誰かがつっかえたら崩れる真剣勝負という感じさえしました。それが面白くもありましたが、役者さんにとっては苦行でもあったと思います(笑)。でも、毎回クリアしてくれるから「ここもできたか!」と楽しくなってきちゃって。
――それもセリフのスピードがアップしていった要因のひとつ?
そうですね(笑)。第1期・第2期と制作期間が空いちゃって、なおかつ別作品を間にやっちゃうと「あれ、どんなテンポでやっていたっけ」ってなっちゃうときがあるんです。なかでも、『斉木楠雄のΨ難』のテンポは明らかに早い。だから他の作品でも速くなっちゃわないよう気を付けないといけないんです。
それでも、『斉木楠雄のΨ難』をやった後の他作品のアフレコ現場で「これ、セリフ回しが速いですね」と言われちゃったことがありました。ゆっくりにしているつもりだったのですが、『斉木楠雄のΨ難』に慣れちゃっていたみたいです(笑)。そういえば、小野(大輔)君から「監督!他の作品で口パク余らせちゃったじゃないですか!『斉木楠雄のΨ難』のせいで!!」と言われたことがありました。他の方からも同じようなことを言われた記憶があります(笑)。
――なるほど(笑)。
第1期が終わったときに、麻生先生と「これ1本が5分だったら変わるかなー」という話をしていたんですけども、そうなったらそうなったでセリフ量が増えるだけだったと思います。だからといって第1期でセリフをギュッと押し込んでおきながら第2期はゆったりになったら「ひよった」と言われかねない。
――後に引けなくなった。
そうなんです。それに、みんなここまで頑張ってきたのにセリフ尺をゆるめるのは逆に失礼なんじゃないかと。そんな気にもなったんです。
――今回のシリーズでゆるめたら役者陣からは逆に「監督大丈夫ですか」と言われていたかもしれない。
そうかもしれません(笑)。でも、重要なセリフに関しては気持ちゆったりめに録っています。例えば小野君が演じる燃堂(力)がいいことを言うところとか。微々たるものですが、いつもと比べたらゆったりしています。
――若干のメリハリがある?
そうですね。普段が速いのでちょっと緩めたらゆったりに感じる。そんな耳の錯覚を利用しました。
――なるほど。アニメ化にあたっては麻生先生から何かリクエストがありましたか?
セリフカットについて編集部とやり取りしていたのですが、唯一、楠雄の過去にも関わってくる明智透真(CV:梶裕貴)の昔話エピソードは、アニメでやるならカットしないでくださいというリクエストがありました。それなら、4分の尺のなかでカットしないでやるとどうすればいいのかなと考えていたら、またセリフに厚みがでちゃって。明智のおかげで原作のセリフをカットしないでもう少し詰め込めるってことがわかっちゃいました。
――それも加速の要因のひとつとなった。
そうですね。セリフ量は初期の頃と比べてどんどん増えていると思いますよ。
――そんなセリフ回しも特徴のアニメ『斉木楠雄のΨ難』。2019年12月から『Ψ始動編』がNetflixで配信となります。約1年ぶりとなりますが、今回アニメ化するにあたって重視された点はありましたか?
基本的には今までのシリーズと同じにやってくださいというオーダーでしたので、その辺は安心して制作できました。ただ、新キャラクターとして登場する井口工(CV:鳥海浩輔)や鈴宮陽衣(CV:東山奈央)は出せるだけ出そう、ふたりのエピソードはできるだけ入れようという点は意識しましたね。
――新キャラクターの印象がしっかりと残るような構成にした?
そうですね。もちろん、他のレギュラーキャラクターたちも今までやっていなかったエピソードを拾い出して隙あれば出しています。特に照橋さん。照橋さんがいるといないとでは現場……というか、私と神谷{浩史}君のテンションが低めになるので、毎回出そうって話になりました(笑)。それが現場の雰囲気づくりにも繋がると思ったので。
――楽しい雰囲気づくりを心掛けた?
そうです。この作品はみんなで寄ってたかって、楽しんで作る、それがアニメにもいいように作用すればなと思っていました。
――今回は地上波での放送でも劇場公開でもなく、Netflixでの配信となりましたが、その点で意識されたことは?
世界中に発信されるということで、日本人なら分かるけれども言語的な意味合いで伝わりにくそうなエピソードは避けた方がいいかも、ということは制作前に話していました。ただ、面白いエピソードならそれを優先する、そうしてもいいということでしたので、縛られずに制作を進められましたね。
――世界で配信することは意識しつつも、引っ張られすぎなかった。
そうですね。そんなに引っ張られることもなく、今まで通りに制作できました。
――ちなみに監督はNetflixを利用されている?
家で利用していますが、実は個人としてはそこまで利用していなくて……。というのも、利用していたらどんどん観ちゃうから(笑)。でも、家族は色々と観ています。
――観るときはどんなジャンルを?
自分や知り合いのアニメ作品のほか、音楽番組や旅番組を観ています。
――監督のNetflix事情までお話いただきありがとうございました。最後に改めて本作の見どころを教えてください。
まずは先ほどもお伝えした、新キャラクターの井口先生と鈴宮ひーちゃんの登場。あと、なるべく原作に沿ってアニメを制作していますが、アニメオリジナル要素も随所に入れている点です。なぜ照橋さんが、なぜ目良さんが、とか……。言い切れないくらい細かいところにオリジナル要素があるので、そこに注目して欲しいですね。
『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』作品情報
【キャスト】
斉木楠雄:神谷浩史
燃堂 力:小野大輔
海藤 瞬:島﨑信長
灰呂杵志:日野 聡
鳥束零太:花江夏樹
照橋心美:茅野愛衣
窪谷須亜蓮:細谷佳正
井口工:鳥海浩輔
鈴宮陽衣:東山奈央 他
【原作】
麻生周一「斉木楠雄のΨ難」(集英社ジャンプ コミックス刊)
【スタッフ】
監督:桜井弘明
キャラクターデザイン:音地正行
音楽:斉木ックラバー
アニメーション制作:EGG FIRM×J.C.STAFF
制作:小学館集英社プロダクション
製作:PK学園R
【配信】2019年12月30日(月) 全世界独占配信
<Netflixとは>
Netflixは、190ヵ国以上で1億5800万人を超える有料メンバーが利用するエンターテインメントに特化した世界最大級の動画配信サービスです。各種受賞作を含む幅広いジャンルのシリーズやドキュメンタリー、長編映画などを多くの言語で配信しています。あらゆるインターネット接続デバイスで、好きな時に、好きな場所から、好きなだけ映画やシリーズを楽しんでいただけます。また、一人ひとりの好みに合わせた作品をおすすめする独自の機能により、観たい作品が簡単に見つかります。広告や契約期間の拘束は一切ありません。
『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』公式Ψ(サイ)ト
https://www.saikikusuo.com/
作品公式Twitter
@saikikusuo_PR
Netflix公式サイト
https://www.netflix.com
Netflix(アニメ)Twitter
@NetflixJP_Anime
©麻生周一/集英社・PK学園R