1998年に公開されたポケモン映画シリーズ1作目『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』を、シリーズ初となる全編フル3DCGで蘇らせた『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』が、現在公開中。最強のポケモン・ミュウツー役に市村正親、波止場をしきるボイジャー役に小林幸子と、前作のゲスト声優たちが再び集結。さらに第1作目でも主題歌も担当した小林が、中川翔子とタッグを組み、名曲「風といっしょに」を担当している。そんな市村と小林の対談が、「アニメディア8月号」に掲載中。超!アニメディアでは、本誌に掲載しきれなかった部分を含めてロング版をご紹介する。
小林
――『ポケモン』映画シリーズの第1作目から、じつに21年ぶりに『ミュウツーの逆襲』が復活します。
市村 僕の後輩にも『ミュウツーの逆襲』を観ていた人たちが多いんですが、彼らは僕がミュウツーを演じていたことを知らないんですね。2年くらい前に「(ミュウツー役は)市村さんなんですか!?」と驚かれることもあったので、今回、改めてまたミュウツーにトライできるのはうれしかったですし、素敵な縁を感じました。今度は子どもに「パパがミュウツーなんだよ」と言っていますから。
小林 子どもたちは、すごく楽しみにしているんじゃないですか?
市村 していますね。学校参観なんかに行くと、子どもの同級生から「ミュウツーの声をやって」とせがまれるんですよ。
――お子さんは、どのタイミングで市村さんがミュウツーの声をやっていると気づいたのですか?
市村 以前の仕事のときに、ミュウツーのぬいぐるみをもらったんです。家にそれが置いてあるので子どもが疑問に思ったんですね。「お仕事でもらったんだよ」と言ったら驚いて。僕のことを見る目も変わりましたね。
小林 きっと尊敬しちゃうんでしょうね。私もテレビなどの歌の収録のときに、待ち時間ができることがあるんですが、若いスタッフの方から「幸子さんの歌で育ちました」って言われるんですよ。「演歌ではないだろうな」と思って尋ねたら、『ミュウツーの逆襲』の主題歌「風といっしょに」を聴いていたそうで。すごく熱く語ってくれるんです。それだけ影響力のある作品だったんだなと、改めて実感しました。
――今作のアフレコ前に、かつての作品はご覧になりましたか?
小林 観ました。観て、改めて今作の映像美に驚きました。市村さんは、まだ完成した今作を観てないんですよね?
市村 以前のものも観ていないですね。自分の幼い声を聴くのがイヤだったんですよ。影響されて以前に戻ってしまうのもイヤだし、今のミュウツーでいたいと思ったので、あえて観ませんでした。
小林 でも、ミュウツーは市村さん以外考えられませんよ。
市村 21年前は、不安もあってのアフレコだったんですよ。でも、みなさんが「よかった」と言ってくれたから、今作ではさらに極めたい。令和にふさわしいミュウツーでありたいんです。
小林 今作で『ミュウツーの逆襲』という作品を初めて知る子もいるでしょうから、きっといい思い出になるでしょうね。今回は、『ミュウツーの逆襲』の再演のような形になるけれど、改めて声優をするのは、どんな気持ちなんですか?
市村 僕のなかでは、ミュージカルもアニメも変わらないんですよね。僕はどの役も、自分が生み出した、自分のなかから生まれたものだと思っていて、それはミュウツーも同じなんです。だから、(今作も)感覚的には舞台に立つのと同じで、この21年間に僕が経験してきた深みやイマジネーションを加えるという気持ちですね。
――今回、市村さんが改めてミュウツーを演じてみた感想を教えてください。
市村 21年前は、アフレコの際に映像が出来上がっていて、ガラスのなかにいるミュウツーの思いに寄り添いながら演じたことを思い出しました。今回は絵が出来上がっていないなかで、スタッフの方のディレクションに合わせて演じたのが、ちょっと不思議な感覚でした。
――小林さんは、港育ちの女性・ボイジャーを演じられています。
小林 ミュウツーは進化させなければいけないけれど、私はそんなに深いものはありません(笑)。ただ、第1作目のころは声が若かったので、そのときの気持ちでアフレコをしたら、「今の声でいいです」と言われました(笑)。そういえば、以前は「波止場のカモメに聞いてみな」というセリフが、「波止場のキャモメ」になっていたんですね。21年の間にキャモメというポケモンが発見されたそうで、それはびっくりしました。
――21年経っても色あせない、本作の魅力とは?
小林 21年前にクローンという題材を取り上げていたのが、画期的だったと思います。
市村 ポケモン同士が争って、傷ついたりもしていたし、ドラマとしてもすごくよく出来ていましたね。
――小林さんは、今作において中川翔子さんと一緒に、主題歌の「風といっしょに」を歌われています。この曲の魅力は?
小林 今回は、亀田誠治さんにアレンジをしていただいて、まったく新しい「風といっしょに」になりました。この歌はコンサートで歌うと、ケミカルライトを振ってくださる方もいるくらい大事にしてもらえている曲なので、しょこたん(中川)と歌えることが本当に幸せでした。母親のような気持ちで一緒に歌わせていただいています。
――これだけ長くに渡って『ポケモン』が愛される理由は、どんなところにあると感じますか?
市村 原始と未来が、現代で混ざっている感じがいいのかなと思います。人間もいろいろいるけど、ポケモンもいろいろいて、子どもたちが憧れる強いものも描いていく。だからこそ、子どもたちに今でもなお人気なのでしょうね。
小林 未来も今も過去も、一番大事なものは変わらないということをテーマにしていると思うんです。そしてポケモンは多種多様だけど、みんな違っていてもみんながいいというスタンス。多くの人の「好き」を受け入れてくれていることが、人気の秘訣なのではないでしょうか。
――この21年で、何か進化したことはありますか?
市村 僕は2児の父親になったことかな。21年前は49歳でしたし、それが今では70になって“古希古希”だから(笑)。
小林 古希ですか、信じられない。
市村 進化したのか、老化したのか。ポケモンになったのか、ボケモンになったのか……。
小林 こんなことばっかり言うんですよ(笑)。
市村 こんなことしか言っていないから、幸子さんには悪いなと思っていますよ(笑)。でも、職場に笑いをというのがテーマですからね。
小林 最高ですよ。その求心力が、今でもみんなの心をつかむんでしょうね。
――では、新たに進化させたいことは?
市村 足腰の強化かな?
小林 一緒です、長くやっていくためには必要です。健康第一!無茶はしないのがいいですよね。私はそうやっていろんなことに挑戦していく市村さんが大好きなんです。
市村 舞台のときに、幸子さんは差し入れをしてくれるんですよ。ただ、楽屋には来ないよね。
小林 楽屋は行かないですね。
市村 でも、差し入れで来てくれているのがわかるから、いつもうれしいなって思っていますよ。今回、こうやって話せるのも楽しくて仕方がないんです。
小林 21年前は、アフレコも別で、試写会のときもミュージカルの初日で来られなかったんですよね。他のお仕事ではお会いしていましたが、『ポケモン』のお仕事でようやく会うことができました。
――では、最後にアニメディア読者へメッセージをお願いします。
市村 伝説となっているミュウツーの声をもう1回やれるということで、21年前に子どもだった人たちにも観ていただけると思っています。ミュウツーと同じように僕も進化してきたので、ぜひ“令和のミュウツー”を劇場で観てください。
小林 「風といっしょに」は(第1作目劇場 公開)当時、子どもたちが合唱をしてくれた思い出深い曲でもあります。すごく幸せな思い出が詰まった曲ですから、今作を観てくれたちびっ子たちが、この歌をみんなで歌ってくれることを期待しています。
(プロフィール)
【いちむら・まさちか】1月28日生まれ。埼玉県出身。ホリプロ所属。
【こばやし・さちこ】12月5日生まれ。新潟県出身。幸子プロモーション所属。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
〈『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』作品情報〉
全国公開中
【イントロダクション】
全世界に次ぐ--。原点にして、最高峰。
「清らかな心と、会いたいと強く願う気持ち」その二つをもつ冒険者の前にだけ姿を現すという幻のポケモン・ミュウ。全てのポケモンの“はじまり”と言われ、世界中のポケモン研究者が行方を追うなか、ついに一人の科学者がミュウの化石を発見し、それをもとに神をも恐れぬ禁断の行為に手を染めてしまう。「ここはどこだ…。わたしは誰だ…。」最強のポケモンをつくりたいという人間のエゴによって、この世に生み出された伝説のポケモン。その名もミュウツー。存在する理由もわからないまま、最強の兵器としての実験を繰り返されるミュウツーは、その心の中に、自分を生み出した人間に対する憎悪の念を宿していく--。「これは、わたしを生み出した人類への、逆襲だ!」ついに、あの完全不朽の名作がフル3DCG映像で、2019年夏、世界中にSTRIKES BACKS!!
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